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ビザも取れた。準備もほぼ万端整った。後は出発を待つだけだ。
出発は3日後に迫っていた。
期待半分、不安半分といったところか。
だが、3日後に出発という事は、3日後からはしばらく愛美と離れ離れになるということでもある。
ここしばらく渡米準備で愛美とはどこにも遊びに行っていなかった。
今日は遊園地に行くことにした。
しばらくは一緒に遊べないからな。丸一日遊園地で過ごして、どこかでディナーを食べて帰ってこよう。
ここ何日かゆっくり起きていた俺が早起きしたので愛美は怪訝な顔をしていたが、「遊園地に行こう」の一言で急に明るい顔になり、そそくさと支度を始めた。
俺がコーヒーを飲んでいると、準備が出来てしまったのか、子犬のようにそばで待っていた。
「分かった。すぐ支度する。」
急いでコーヒーを飲み終えた俺は軽くシャワーを浴びて支度を整えた。
今日は寒い。2人とも厚手の皮ジャンを着て出かけた。
簡単に遊園地と言うが、どこも結構遠い。
東京の中心部の道は熟知していたが郊外の道を知らないし、渋滞にはまると嫌なので電車で行くことにした。
東横線で渋谷まで出て山手線に乗り換える。新宿から京王線に乗った。
東京の遊園地は三ヵ所しか知らなかったが、愛美は一番遠い○○ランドには行ったことがなかった。
新宿に行くまでは混んでいたが、朝なのでそこから郊外に向かう電車はガラガラだった。
「へへ。実はお弁当作ってきちゃった。」
東京の電車の中でお弁当・・・田舎の電車じゃないんだから。
おにぎりが美味しかった。
電車の中で昨日会いに行った人の話をした。
「学生時代に、俺は直接教わったことないんだけど他の科を教えていた人がいて、今東京に居るんだ。昨日その人に会ってきたんだけど、ロサンゼルスに行くって言ったら大反対された。」
「普通は反対するわよね。」
「そうじゃないんだ。アメリカに行くのはいいけど、どうせ行くならニューヨークに行けって。ギリギリ譲ってもアトランタとかその辺に行かなきゃダメだって。ロサンゼルスとかその辺は馬鹿しかいないから、お前も馬鹿になるぞって言われた。」
「そうなの?」
「そうなのかも知れん。」
多分それが正しいのかもしれない。何しろ俺がロサンゼルスを選んだのは、天気が良いという理由と、遊園地が多いからという理由なのだ。さすがにこれはその人には言えなかった。
でもニューヨークに行くなら東京に居た方がいい。
バリバリのビジネスマンをやる気はないのだ。
俺のイメージするアメリカは、カリフォルニア、ロサンゼルスだったのだ。