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歳の恋  作者: 新庄
8/13

希望の光1


 立見は一人で立ち尽くしていた。目の前には誰も座っていないベンチ。ここは、立見が純香に告白をされた公園前だ。立見はため息をつき、腕時計を見る。針は6時過ぎを指していた。


 「何してんだろ……」


 立見は風船の空気が抜けるように、力をなくした。ベンチに腰を落とす。立見がここに足を止めた理由は、あの女性、つまり純香がまた待っているのではないかと心配したからだ。けして、期待していたわけではない。それに、取り越し苦労だったようだ。

 立見は、女性にもてあそばれているのではないかと考え始めた。そもそも、若い女性がこんな中年を好きになること自体がおかしい。自分は暇つぶしにされているのではと、不安になってきた。

 それが本当なら、自分はなんと愚かなのだろう。立見は落胆し、そして期待した。これが茶番なら救われる。何も知らない女性に対し、頭を悩ますのは終わりだ。立見は空を見上げる。近くにある街灯のあかりが、希望の光に見えた。

 しばらく黒い空を眺めてから、腰を上げる。電車の時間を確かめようと、ケータイを取り出した。画面の眩しい光が、立見の目を刺激する。

 その時だった。立見の後ろから足音と荒い息が聞こえてきた。


 「立見さん!?」


 立見は聞き覚えのある声に振り向く。そこにいたのは、あの女性だった。マフラーがほどけているのも気にせず、真っ赤な顔で走ってくる。

 

 「…立見さん……」


 目の前の女性は、今にも泣きそうな顔をしている。立見の期待は大外れだった。嬉しさで泣き出しそうな女性が、自分のことをもてあそんでいるわけがない。女性の本気に、今更ながら心が痛くなった。

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