出会い
「あなたのことが好きです。付き合ってください」
そう言ってきたのは、俺と20は歳が離れているであろう女性だった。
告白された男は、あまりの驚きで声が出ない。状況把握に励もうとする。しかし、女性を見れば見るほど頭の中がぐちゃぐちゃになっていった。目の前にいるのは若く、若々しい女性。服装が個性的で自分を持っていそうな女性が、なぜ、人に流され仕事をするようなサラリーマンに告白などしているのだろうか。
季節は冬。時刻は8時過ぎの公園前。近くにある街灯だけが2人を温かく照らしていた。辺りは暗く、何があるのかさえ分からない。分かるのは、女性が男を長時間待っていたということだけ。
マフラーと手袋をしている女性は、頬を赤く染めて肩を震わせていた。頭には少し粉雪が積もっている。茶色くパーマのかかった女性の髪に柔らかく、街灯の光を受け、白く光っていた。男は今日の天気予報を思い出す。今日は今年最大の寒波だとか。
名前も性格も何も知らない。女性の方はどれだけ自分のことを知っているのだろう。そういった不安が、男の心に降り積もっていく。
「ここは寒い。近くの店にでも入らないか・・・」
出会って5分。それが男の第一声だった。男はまず安心を求めた。2人だけの空間を拒んだ。女性は黙って頷くと、男性の隣へ足を進めた。甘い香りが男の鼻をかすめる。
2人は無言のまま、通りを歩いていった。