表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/7

勇者と王様

「大魔王が来たぞ!」

「総員! 抜剣!」


そんな号令と共に、俺は腰につけている剣を抜いた。

まだ二週間足らずしか使用していないので、全然馴染みのないその剣は、ひどく重かった。


というよりもどうしてこんな事に?


勇者が魔王を討伐に旅立った。

しかもそれは俺は同い年ぐらいの人間だったという。

だから俺も少しはこの国のために役に立ちたいと思って兵士に志願した。

だというのに、勇者が魔王を討伐してすぐに大魔王となって攻めてきているという。

だから魔王攻略のために集められた僕ら兵士は、何故か元勇者を倒すことになった。

最初はそれに違和感があった。

だけど、勇者が魔王になったというなら……


俺は戦う!




と、思っていた……




勇者と対峙するまでは。




国の前にある草原で俺たちボーデンの兵士は、勇者と対峙して……絶句した。




ズゥォォォオォォォオオン




なんというか……そんな重厚な音がすごく似合う勇者がいたのだ。

しかも手には……なんかドス黒い霧のような者を纏っている武器をもっていて……。


こ……怖い……


もうそれしか思い浮かばない。

他の兵士達も同じような者だった。

でも……俺たちは兵士だ。

だから戦う!


と思った直後だった。




「うん……のけ♪」




それはもうニヤリという笑みで……勇者が笑いながら俺たちにどけと言ってきた。

それを聞いた瞬間に戦意など完全にくじけていて……。




ザザアァァァ




一瞬にして勇者と国を結んだ線をから離れるように……兵士達は道を開けた。

綺麗な一本道を、勇者は……




「ふっふっふ~ん♪」




と、鼻歌歌いながら通っていった。

その手にした黒い何かから放たれた黒い霧を……全身に纏いながら







後日談


兵士A「いや、だってさ。いくら戦えって言ったって……。あれはねぇ?」

兵士B「ものすごい黒い固まりがどけって朗らかに言ったんだぜ? というか、あれはもう人間が戦って言い存在じゃないだろ?」

兵士C「あれはどくでしょ? だって大魔王だし?」


兵士A、B、C「「「そらどくだろ~(笑笑笑)」」」


兵士D「俺の中の本能が言ったんだ。あれと戦ってはいけないと……」






コッ コッ コッ


それはゆっくりと、足を運んでくる。

だがしかし……大きくなくとも確かな足取りと音、そして近づいてくるにつれて増してくる、圧倒的な威圧感がそれの存在の否定できなくさせていた。

そして相手が持つひのきの棒(?)にまとわりついた黒い影が逃がさないでいた。


バターン!


勢いよく王の広間へと続く両開きのドアが開かれた。

それと同時に凄まじいほどの黒いもやのようなものが、広間を覆い尽くした。


その中心に……勇者は立っていた。


その威圧感と、周りのもやのせいで逃げることもしゃべることも叶わず、臣下達はただ黙ってその場にたたずむしかなかった。

しかし……そんななかで


「よ……よくぞ帰った勇者よ!!!!」


震えていながらも声を発することが出来た王様というのは、やはり王たり得たのかも知れない。

しかし、それも直ぐに終わる。


いろんな意味で


「の、望み通りの報酬をやろう! だから……だから帰って! お願いだから!」


懇願。

その一言に尽きた。

しかしそれを聞いているのかいないのか……勇者は構わずに王様へと歩み寄っていく。

他の人間が止めようと思うには思うのだが、足が動かないらしく、止めることは出来なかった。

そして王の眼前へとやってきた勇者は……ただ一言……




「……えいっ!」




というかけ声と共に、王を吹き飛ばした。

壁を突き抜け、吹き飛んでいく王様。







あ~あ……。吹っ飛んでいっちゃったよ。わかりきってたけどね!




勇者が勝つというのはわかりきっていたことなのだが……それにしたってこの結末は少々以外だった。

てっきりひのきの棒(?)で吹っ飛ばすと思っていたのだが。

と、思っていたらとんでもない行為へと走った。


「あ~。すっきりした。あ、これお返ししますね~♪」


といって、今は亡き王が座っていた王座へとそのひのきの棒(?)を突き刺してそのまま鼻歌歌いながら去っていく。

他にも大臣なんかがいたのだが目にもくれていない。


え? あのひのきの棒(?)捨ててくの?


ある意味で貴重な存在となっているはずなのだが……そのひのきの棒(?)を、勇者は全く未練がないというのがわかるほどにあっさりと捨てていった。

残された臣下達がどうにかしようと思うには思うのだが……物が物なだけに、何も手出しが出せずにいた。


……さてどうするか?


と一瞬だけ考えるがすでに私の考えは決まっていた。

王は……どう考えてもおだぶつだし、そこまでこの国に執着があるわけでもない。

というよりも仮にあったとしても勇者の存在が強烈すぎてまだ見てみたいと思ってしまったのだ。

幸いなことに勇者が住んでいる場所は知っているので、私はそこに向かって歩いていった。







ちなみに一ヶ月も経たないうちにボーデンは滅びた。

ちょっとした魔界のような状況になってしまって誰も住めなくなったらしい。


なんでも、廃城になってしまった王城の中心部には、真っ黒ですごく大きな樹が鎮座しているとかいないとか……







……絶対にあのひのきの棒(?)が原因だよな。それを無意識にやってるんだから質が悪いなぁ~~





飛んで飛んで飛んで飛んで飛んで~♪


って感じかね?


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ