私の当たり前
「家に帰ったらレベルアップ頑張らないとな」
私はトイレの鏡に決心した顔を映す。
「おっと」
トイレの前に落ちてあったゴミを拾って手にする。
私は廊下を歩きながら窓の外に見える車のナンバーを素因数分解する。
もう条件は揃っているに等しい。
「やっとこの時が来た」
私はゴミを片手に教室の入り口に立ち、自分の席を見つめる。
そこには陽キャという言葉に似合わない陰湿なことばかりを私にしてくる女子が座って談笑していた。わざわざ私の席でだ。
教室のゴミ箱にゴミを捨て、そして私は逆にあの陰湿女子の席に着く。
12時55分、予鈴がなる。
昼休みの終わりを予期する音に、教室中の生徒全員が自席へと移動する。
「ねぇそこ私の席なんだけどっ」
陰湿女子は私の席の前に立って小首をかしげて言う。
「はい?」
私は疑問を浮かべる。
「だからっ、私の席だからどいてくれるっ、ほらっあっちのみすぼらしい席があんたの居場所でしょ」
教室中の生徒は皆、静かに私と陰湿女子の会話を聞いている。
「いや、ここが私の席ですけど」
私は平然と答える。
「はっ?な、」
「もう授業始まるぞ、自分の席に早く着けよ」
先生が教室へと入ってきて、陰湿女子に向かって言う。
先生は陰湿女子の席を指差している。その指の先は、さっき陰湿女子が「みすぼらしい席」と言った席なのである。
「えっ?」
陰湿女子は困惑している。
そして私は小声で耳打ちする。
『今、自分自身がみんなの前で言った「みすぼらしい席」があなたの席だよ、恥ずかしいね』
陰湿女子は私の顔を見て怯える。そして周りの生徒を見回して顔を赤くしながらみすぼらしい自分の席に帰る。
みんなの顔は変なものを見るような顔。私の顔は、不気味な笑顔をしていた。
私は調整していたのだ。
全ては事が始まる前から決まっていた。
私はこの時のために今までがんばってきた。
私は自分の席と陰湿女子の席が12時55分にみんなの記憶から入れ替わるようにがんばってきた。
私は毎日mbti診断を異常な速度で繰り返した。
私は毎日ゴミを拾っては捨ててを繰り返した。
私は毎日目にした数字の素因数分解を繰り返した。
私はそう、乱数調整に成功した。
私は俯く陰湿女子を見て、『ざまぁ』




