幕間・カイルの冤罪
「汚職なんて、どこにでもある話だとわかってはいたんだ」
商館の警備につくカイルは、夜の闇を見つめながらそう独りごちた。 あれは半年前のことだった。
カイルが所属していた辺境警備隊の斥候部隊長バルカスは、部隊員の人数を水増しすることで軍需物資を必要な数以上手に入れ、余剰分を横流しすることで私腹を肥やしていた。
バルカスが物資を受領する場面に偶然出くわしたことで、初めてカイルは横領に気が付いた。 告発すべきか否かその日の夜まで悩んだカイルだったが、せめてもの情けとして自首を促すべくバルカスの天幕へ向かったのだった。
「隊長、明らかな軍規違反です。これは見過ごすことはできません。明日、監察官へ報告します」
そう告げたとき、バルカスはいつもと変わらぬ部隊長の顔をしていた。
「いや、それには及ばない。こうして自首を促しに来てくれたのだろう? ならば私も答えなければならない。見苦しいことはせん。明日の朝、自ら出頭しよう」
サトシの言うように、カイルの「誠実さ」は欠陥でもあった。
翌朝、バルカスは冷たく笑い、カイルを逆賊として捕縛した。
「貴様が部隊の物資を横流しした。……そういうことになっている。もう誰も貴様の証言など信じはすまい。ここで処刑してしまってもよいが、奴隷として私の小遣いになってもらおう」
そう耳元で告げたバルカスのあざ笑う顔。 そして仲間に取り押さえられ、泥水を舐めさせられた屈辱。 忘れようとしても忘れられない、あの時の目の前が真っ暗になる感覚。
気づけばカイルは拳を強く握りしめていた。
サトシが自分を買ったのは、奴が笑ったあの「誠実さ」を価値として認めてくれたからだ。 今は、少しだけこの自分の気質を誇れるような気がする。
きっといつか、バルカスのような腐った権力者たちをたたき伏せることのできる力を手に入れてやる――。
カイルの腰に帯びた真新しい長剣には、その決意が鋭く宿っていた。
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