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宗狂の教え  作者: 真水
プロローグ
4/19

兄から見たセドリック

弟は、昔からどこかおかしかった。


買い与えた玩具よりも、ネブラ教の教典を喜んで読む三歳児なんて、この世に他にいるだろうか?

俺にはその光景が、どうにも不可解で、不気味で仕方なかった。


物心ついた頃には、すでにセドリックは隣にいた。

俺の方が二つ年上で、当然ながら、あいつは弟だった。

普通の兄弟ってやつは、もっと仲良く遊ぶものらしい。

実際、貴族の子弟たちの家を挨拶回りで訪れると、兄弟姉妹が笑いながら庭を駆け回っていたのを覚えている。


だけど俺は、セドリックと仲良くしたいと思ったことがない。

気味が悪かった。あまりにも異質だったんだ。

だから自然と距離を取ったし、たぶん向こうも俺を遠ざけていたんだと思う。


……けれど、ある時ふと、こんな考えが頭をよぎった。


――もしかして俺の勝手な思い込みで、本当はセドリックは俺と遊びたかったんじゃないか?


いつからそんな考えが湧いたのかはわからない。

ただ、そう思ってからというもの、妙にあいつが可哀想に思えてきたんだ。

玩具も使わず、ひたすら教典を読んでるだけの“変な子供”が、少しだけ愛おしく思えた。


それからは、時間があればセドリックを外に連れ出すようになった。

もちろん、すぐに気づいたよ――やっぱりこいつはおかしい。

一緒にいると、こっちまで頭がおかしくなりそうな感覚に陥るくらいには、異質だった。


でも、それでも俺にとっては弟だった。


俺なりに、やれることはやったつもりだ。

おかしな思想を持てば正そうとしたし、教典を曲解しないよう、俺自身も読んで、一緒に音読したこともある。

誤解のないよう、できる限り丁寧に、根気強く。


……だけど駄目だった。


あいつは生まれついての異常者だった。

異常な信仰心と、理屈の通じない偏執さを併せ持った――どうしようもない存在だった。


正直、いつかやらかすだろうとは思っていた。

でも、まさかここまでの惨劇を起こすなんて……。


セドリック、お前はきっと、人類の脅威だ。

頼むから――大人しく捕まって、裁きをその身で受けてくれ

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