交渉作戦
「作戦の説明をするぞ、ラグ」
「はーい」
グランツと会う。
家族の情報を伝える。
ラグが出てくる。
囚人を全員出してくれと交渉する。
モーランを避けてみんなで脱出する。
案の定と言うべきか、全ての作戦を説明し終えると、苦い顔をしたラグがジーッと僕を見ていた。
「えーっと……何か聞きたい事でもあるのか?」
「セドリックさんって、モーランを殺したかったんじゃなかったんすか?」
「僕は一部を見捨てて僕たちだけ安全に脱出するのが嫌だっただけさ。誰も死ななくていい道があるなら、そこを歩くしかないだろ?」
おそらく理解していない顔で、ラグが頷く。
「もう一つ聞きたいんですけど、なんで家族の情報伝えて俺が出たら、あのおっさんは俺たちを出してくれるんですか?」
「彼の視点に立ってみたら分かるさ。僕がラグを見たとき、明らかに死んでいると思った。それは彼も同じく思っただろう。なのに完全復活したラグが目の前に現れると、不気味がるだろう?」
それに、と僕は続ける。
「彼は僕がどの程度強いか知らないんだ。ラグとやって無傷なわけないし、ピンピンした様子のラグと、実力不明の僕と戦うリスクは避けたいだろうさ。……あと、戦場にこんな子供の落書きを持ってくるんだ。きっと子供想いのいい父親なんだよ、彼は」
まあ予想できた事だが、ラグは疑問符を顔面に貼り付けたような顔で僕を見つめていた。
「あーっとだな、ラグがケーキを巡って殺し合った相手が、そのあと無傷で出てきて……ラグが後で食べようと置いておいたケーキの位置を知っていたら、不気味だろ?」
「確かに!!」
どうやら納得してくれたようで、何よりだ。
「でもセドリックさん、おっさんの場所分かるんですか?」
「予測はできるさ。彼は大怪我を負った記録もあまり無いからね。こういう人間は総じて自分の安全を何よりも大事にするから、ラグに傷を負わされた以上はすぐ戦線復帰せずに、医務室あたりでのんびりしてるはずだ」
「すっげぇ、流石セドリックさん!」
「これもネブラ様の知恵あってのものだから、僕だけのものじゃないよ」
あとは作戦が上手くいくことを願うだけだが、あまり心配は無い。
なぜなら、ネブラ様が直々にこの僕に授けてくれた案なのだから。
――ほら、重症を負った人間が医務室付近を彷徨いてる。
一応ラグにあれがグランツかの確認をしてから、僕は彼にグングンと近付く。
いつ気付くのか少しドキドキしながら足音を合わせて後を付けると、グランツが後ろを振り向き始めた。
「やっと気付きましたか?」
……




