一番欲しいもの
本来ならば僕も第一出口へ向かうべきなのだろうが、僕はラグと共に事件簿が保管されてある部屋まで向かった。
「俺文字読めないんすよぉ……。こんなとこ来ても役に立ちませんって」
「お前の傷じゃ戦場に立っても役に立たないだろ。ここで休んでろ」
ラグがしょぼんとしながらドア付近に座り込んで、下手くそな歌を歌い始めた。
正直、集中できないから静かにしてもらいたい。
が、ラグの事はよく知っているので、大人しくしているだけでもありがたいと思うべきか。
この手紙を見るに、子供の年齢は5、6歳程度と当たりをつけて、その辺りの記録に一通り目を通すが――僕が最も期待していたものは見つからなかった。
しかし、事件簿を見ていると、妙に生存力の高い者の名前は必然と浮かび上がってくる。
「グランツ、という名の衛兵の生存能力が高いな。生存能力と強さに直接的な因果関係があるわけじゃないが……」
「セドリックさん、俺が戦った奴の名前、そんな感じだった気がした気がします」
もっと早く言えよと内心苛立つが、これで欲しい情報の1人が手に入った。
賭けではなく確実となった事を、ありがたく思うか。
しかし、肝心のグランツの娘の名前が分からない。
けれども、それが分からなければ作戦の核が無くなるも同然だ……と自分を震わせ、7年前の事件簿をパラパラと一通り見ていく。
しばらく粘って、やっと見つけた!
僕は一枚の紙が挟まった本から紙を取り出して、その情報を目に――いや、脳に焼き付ける。
ーー俺に相談もせず引っ越すとは生意気だ。だがおめでとう! お前は1人の父親としてこれからはより一層仕事に精を出すべきだな。ハンナさんやエリスちゃんにもよろしく言っておいてくれ。後日、出生祝いに行かせてくれと。住所はアイルー領のヴァンデット区13号でよかったよなーー
モーランは部下からとても慕われているという事を、デリックさんから聞いている。
そして事あるごとに看守が手紙の話で盛り上がる事や、手紙を事件簿に保存する人も一定数いるという事を、看守の会話から推察できている事も聞いている。
「うっへぇ……ちょっと俺の方見ないでくださいよ、セドリックさん」
「考えておくよ」
ここに来て、要らないと思っていた情報を使う時が来るとは夢にも思っていなかった。
これもまた、ネブラ様の加護だろう。
あぁ……僕はなんて幸せ者なのだろうか。




