正当か不当か
「じゃあ、作戦会議を始めようか」
デリックがそう呼びかける。
僕と従者たちは不当逮捕である以上、牢を脱出する権利がある。ネブラ様が定めた脱獄の定義にも当てはまらない。
だが、デリックや他の囚人たちはどうだろうか? 彼らにその権利があるのだろうか。
「待ってください、デリックさん。一応、あなた方の罪状をお聞かせください。もし正当な理由での逮捕であった場合、ネブラ様の名の下、脱獄は認めません」
デリックは少し渋い顔をしてから、隣の囚人に合図を送る。
囚人はしばし黙り込んだ後、語り始めた。
「俺はスラム出身で、生きていくために……」
長々と話していたが、要約すると――殺人と窃盗だった。
僕は「こんな悪人を脱獄させてはいけない」と心の中で強く思いながらも、次の囚人の話を聞くことにした。
時間はかかったが、4人全員の話を聞き終える。
結論は明白だ。彼らは脱獄させるべきではない。
そう主張しようとした矢先、デリックが口を開いた。
「セドリック君、少し勘違いしてるみたいだから言っておくよ。スラムってのは君が思ってる以上にネブラ様の加護が広まってないんだ。むしろ真なる神であるネブラ様より、邪神ヴァイルの方が信仰されていたりするんだよ。
でも、ここにいる囚人たちは皆、ネブラ様の加護のもとヴァイルの悪魔を駆逐して、スラムに楽園を作ろうとしたんだ。その結果、捕まった。つまり罪ではなく、悪魔と戦った結果なんだ」
「セド、これは天啓だよ」
ルシアンがデリックの言葉に割って入る。
「ネブラ様がこの場にいるネブラ教徒を使って、スラムに……いや、世界にネブラ様を広めよと仰っているのさ」
デリックだけなら信用に値しないが、ルシアンがネブラ様の名を出してまで僕を説得するのは珍しい。
もしかすると本当にネブラ様からの天啓かもしれない。
であるならば、囚人一人ひとりを確認する必要はないのだろうか。
「ガロス。この脱獄計画に乗るべきだと思うか?」
「私の意見を言うとすれば……乗るべきだとは思います。ですが、デリックは信用してはなりません。計画の全容がまだ不明なので断言はできませんが……絶対に私から離れないでください」
ガロスの意見は至極真っ当だった。
従者2人がこの計画に肯定的な意見を述べているのに、僕自身は未だに消極的でいる。
ネブラ様の御意向かもしれないと勘付いていながら、この態度。――僕は情けない主人なのかもしれない。
「脱獄計画の大まかな作戦を練ろうと思う。何か言いたいことがある人はいるか?」
デリックの呼びかけに、ルシアンが手を挙げた。
「もうそろそろ、セドの最後の従者が来るかもしれない。だから、もう少し待ってくれ」




