表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
水の道  博士ちゃんJCが迷い込んだ大江戸で水を持ってくる物語  作者: Kくぼ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

45/49

第四十五話 秘密兵器の正体

 暗渠を通って水が坂の下から登っていきます。現代では逆サイホンの原理と呼ばれる方法で水が江戸川橋の堰の高さまで登っていきます。因みに神田川の名称ですが井の頭池から中野までが神田川、そこから飯田橋までを江戸川、その下流をまた神田川と呼ぶようになっています。理由はありません。単純に舞湖の記憶で江戸川橋と呼んでいたのに江戸川がないのはおかしいのではないか、となってそうなりました。そして江戸川橋の堰の少し下流に橋がかけられ江戸川橋と名付けられています。暗渠の出口は神田川の淵です。そこからは神田川の上を渡る橋になっています。そこには二つの橋が並んでかかっていました。一つは人が渡る橋で両側が関所のようになっていて一般人は通れないようになっています。橋の横には詰所が建てられています。監視人の待機場所です。


 監視人は4直3交代という勤務体系で365日24時間勤務する事になっています。朝勤、昼勤、夜勤を5日単位でぐるぐる回るのです。5日働いて1日か2日休みが入るように勤務カレンダーではない勤務予定表が立てられています。


 もう一つの橋、これこそが真の水道橋。橋は開渠になっていて水の状態を見る事ができます。その橋に水が通り始めました。


 舞湖は人が渡る方の橋に立っています。


「鈴木殿、どんな感じ?」


「舞湖様、今の所いけそうですがどのくらい保つかわかりません。ご命令通りにしてありますのでご安心を」


 舞湖は頷いて橋を流れ始めた水を見ている。秘密兵器、別に攻撃するわけではないから兵器ではないのよね。なんとなく語呂がいいのでそう呼んでるけどおかしいかしら?


 その正体は橋の上に設けられた何重ものフィルターだった。荒い金網で作られた五重のゴミ取り、その後に炭のフィルターが設けられている。あまり細かいと詰まってしまい水が流れなくなるので大きめに隙間が開いているが、その形状に工夫がありすり抜けた後には炭の壁にぶつかるように作られている。そして最後に真っ白なサラシが待っている。水が通るように隙間のある織物になっていてそこを通過した水が、橋を渡ったところから暗渠になっている水道管に入るのです。


 秘密兵器とは芽衣ちゃん特性濾過器の巨大版、上水を浄水にする装置でした。


 舞湖は歴史を知っています。神田上水、玉川上水が通った後に江戸で疫病が流行った事を。こんな事でそれが防げるのかはわかりません。舞湖は医学の知識はないのですから。でも知っているからには何かしたい、その思いがこの巨大な濾過器を実現させたのでした。


 橋の監視人が24時間体制で行う仕事は多数ありますが、定期的にこの濾過器を見回りし、網、炭、サラシの交換を実施するのも含まれています。またその状態を記録して、水戸のお屋敷や江戸川橋の堰との連絡を密に取り、水が滞りなく供給できるようにしています。


 水がいよいよ暗渠の水道管に入りました。もう水の流れはここからは見えません。


「鈴木殿、サラシの色が黒くなったら炭の交換時期ですので。予備を欠かさないようにお願いします」


「承知仕りました。舞湖様、浄水という事ですがいまいちわからないのですが」


 この時代に消毒という概念はない。傷口が膿んだ時に酒をかけるといいという事すら医者か経験者くらいしかは知られていない。この時代の日本の水は綺麗なので湧き水はそのまま飲めるのだ。工業団地なんかないしね。ただそれでも疫病が流行るのは水が汚れる事に起因する場合が多いと舞湖は思っている。


「身体に入る飲み水は綺麗にこしたことはないですよね。炭には汚れを吸着する性質があるのです。これを使えば大江戸の流行病を減らせるかもしれないのです」


「吸着でございますか?舞湖様の知識は本当に素晴らしいです。浄化した水だから浄水。神田上水の名前を神田浄水に変えたらいかがですか?」


 えっ!考えたことなかったですわ。舞湖が知識として知っている江戸時代とこの大江戸は違う世界だ。だから名前を変えても問題はない、っでいいのかな?わっかんない。


「鈴木殿、なんかそれはちょっとというか。遠慮したいですね」


「どうしてでしょう?舞湖様は大江戸の民の事をご心配なされてこのような大仕掛けを作られたのですぞ。名を残すのになんの遠慮がありましょうか?」


 結局、鈴木は上司の片倉大十郎に説明し、それが伊達宗政に伝わり、上様に伝わって神田浄水と名付けられる事に決まった。なんやねん、その伝言ゲームは!と舞湖は後で若様に文句を言ったが覆す事はできなかった。


 そして水が地下の水道管を通って大名屋敷の中を流れていく。神田川に近いのは譜代の本田、武平の老中の屋敷でその後に上杉や結城が続く。そして最後に日比谷の伊達屋敷を通って八丁堀方面へ流れていった。


 舞湖は駆け足で八丁堀へ向かった。中村の旦那が井戸の前に待機しているはずだ。井戸の数は50、町民が住む長屋毎に作っているが末端までは水が届かないのではないだろうか。神田川に流れる水を減らせば足りるだろうが、水運で使えなくなってしまう。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ