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水の道  博士ちゃんJCが迷い込んだ大江戸で水を持ってくる物語  作者: Kくぼ


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第十七話 山を削って川にしよう

 利根川の工事はもう10年続いているそうだ。大江戸湾?に流れ込んでいる水を銚子の方に流れを変えるという大工事です。元々下総と常陸の境を流れる利根川の分流があって、銚子に流れていました。利根川は九十九里と江戸湾両方に流れるように分岐していたのです。正確には色々な川が分かれたりくっついたりしていて、支流が数多くあり下野、上野、武蔵、常陸の間を好き勝手に川が流れていたのです。徳川康家が幕府を開く前に豊臣家の指示で江戸の人口を増やすために、この河川事業に踏み切りました。


 大江戸に上流の川が合流して流れこむそのせいで河口にあたる地域は湿地帯になっています。雨季には氾濫し人は住めません。利根川を全て銚子方面に流れるようにして大江戸川方面は堰き止める。そうする事で今は湿地帯になっていて洪水でも苦労している土地に人が住めるようにする。川を使って運送もできるようにという幕府の構想です。現在でいう東京の0m地帯、隅田川から中川、江戸川の間は沢山の人が住んでいますがこの当時?はそれは酷い物でした。舞湖は調査という視察に行って未来の姿を工事に携わった人に見せてあげたいと思いました。だって、これがあれになるんですよ、奥さん。信じられます?


「そっちの工事には首を突っ込む気は無いけど、出た土をちょうど使ってくれるのでラッキーなんです」


 舞湖は川久保に説明している。


「ら、ら?なんだって?」


「ごめんなさい。運がいいというかそういう意味です」


 川久保は役目がら利根川の工事にも関わっていた。舞湖は、大川の流れについても変えるべきだという。


「利根川の工事はまず大江戸側に水を堰き止めたらその水が流れるように堀を作って、ある程度先までつながったら堰き止めるはずです。そうすると荒川の水が減ります」


 利根川は一部が荒川に流れ込んで水害の原因になっている。それが無くなれば当然水が減る。


「そこで荒川と隅田川に川を分けるのです。そうすれば、水害を減らす事ができます」


 川を分ければ水流が減るから、土手が崩れたりする危険度が減ります。舞湖は水博士の知識から案は出したがその工事は勝手にやってくれという。ただ、その隅田川に神田川を流し込みたいだけだと。


 川久保との毎日の打ち合わせは、利根川、荒川はおまけで舞湖の工事の話がメインでした。舞湖は水不足を無くすのが任務なので、実際利根川の流路はどうでもいいのです。興味はあるけど。会議では毎日今後行う工事の話をしています。足を使って調査し、時には太田を使って絵を描かせて報告させそれを元に工事スケジュールを組み直して。毎日寝る暇もありませんと言いながら毎日5時間は寝てます。舞湖は出来るだけ短期間で工事をしたいと言います。それには資金が必要でした。工事人や指揮する人を集めなければなりません。舞湖が最初依頼した10人組を20では足りそうもない。だが、幕府は利根川の工事にもかかっていてそれだけの人が出せないのです。


「利根川の工事に上野、下野、武蔵、常陸、下総の大名が駆り出されているのだ。舞湖の方に回せるだけの人がだな」


 大江戸の人口はまだ多くはない。これから人を増やすために飲み水や埋め立てをするのです。工事は他所から人を連れて来ることになりその手当が上手くいっていないと川久保が言っているのです。舞湖は、


「それを言われると私にはどうしようもありません。だって、この大江戸に伝手なんか」


「こちらでも考える。最初に言われた10人組を20はなんとかする」


 結局工事開始に間に合ったのは10人組が15だった。舞湖はそのうち3組を小石川に当てた。そこには知り合いの中村の旦那を指揮官にしました。小石川では池になる予定の窪みを作っている。そこで出た土は利根川や荒川の土手工事や埋め立てに使うのだ。当然、全然足りないのでもっと土を供給しなければならない。


 残りの12組は平川の拡張工事に取り掛かっています。最初、図面を見た川久保は固まりました。以前考えていた構想ではありましたが実現の仕方が絵に描けず諦めていた物がそこにありました。それは、井の頭公園を起点に流れている川を湯島の平川に合流させる物でした。


 川久保は水源の候補として考えてはいたのですが、舞湖が現れる前は大川の上流から水を引く方が早いと思っていたのです。利根川の工事が進み、荒川の水が減れば、千住の辺りに溜池を作りそこから水運を使って水を運ぶ案です。その案は舞湖に弱点を突かれてしまいました。


「大江戸の民が井戸から水を汲んで生活できるようにしないとなんですから。川久保様の案だと水売りが出ますよ」


 商売にする連中が出るというのです。確かに水を運ぶのを仕事にすると起きそうな話です。現に今でも大江戸の中には水不足をいい事に商売にしている連中がいます。そいつらを水売りと呼んでいて奉行所では取り締まっているのですが、後を断ちません。それに加えて


「そこから運ぶのは遠すぎませんか?できなくはないですが時間がかかると思います」


 確かに、完成するまでにものすごい時間がかかりそうです。つまり間に合いませんよ、と舞湖に言われたのです。


 そして今、湯島台から駿河台に向かって下っている斜面の真ん中に幅20間(36m),深さ10間(18m)の堀を作り始めました。まるで大江戸城の堀を広げているかのようでした。




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