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水の道  博士ちゃんJCが迷い込んだ大江戸で水を持ってくる物語  作者: Kくぼ


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第十二話 谷端川を歩く

 お参りした後改めて池を眺めて亀さんでほんのりした気分を味わい、神社から出ようとした時に石版が立っているのに気がつきました。前を歩いている芽衣ちゃんを引き止めます。


「芽衣ちゃん、ちょっと待って。ここになんか説明みたいのが書いてある」


 石版には、こう記してあった。


『注昔、ここは清水の涌出する静謐の地であった。泉は溢れ川となってこの地を潤し、のちに谷端川の源泉ともなった。静泉をめぐって樹木が鬱蒼と茂り、神韻の地として畏敬された』


舞湖は真剣に石版の字を読んだ。


「ねえ、芽衣ちゃん。私、読めない字がある」


「えっ、奇遇だね。私も」


あれまあ。


「でも何となくわかるね。水が溢れて川となって木が生えて神社になったってことかな?」


「うん、舞湖ちゃんあったまいい」


 結構適当に言ったけど合ってたのかな?少し違う気もするけど良しとして続きも書いてあったので、続けて読んだ。


『口承によれば鎌倉の末期頃から罔象女神(水の神)が祀られいつか弁天様として地元民に親しまれるようになった。江戸の頃から大正末期まで早天の折 雨乞祈願の聖地となり蒼々靈驗を得て五穀豊穣の信仰を集めるようになり ここからまた悪疫退散の信仰を生み出していった』


 舞湖は読んでいて何かが頭に入っていくような感じを受けていた。芽衣ちゃんはただただ石版を読んでいる。そして、


「なんか凄いところみたい」


 読んで感動しているようだった。それから話を続けた。


「何で私達ここにいるんだっけ?ここって都内ですよね?すぐそこに地下鉄の駅があって」


そうなんです。石版を読んで初めて凄さに気付きました。こんなところになんでって感じです。舞湖もただの池があるとしか思ってなくて驚きでしたが今日の目的はここで終わりではありません。これからが本番なのです。


「そう。探検再開しましょう。ここからは川に沿って歩きまーす」


「うん、って川なんかないですわよ、奥様。水はそこで止まってるし。暗渠ってもうここから始まってるの?」


芽衣ちゃんのいう通り池はありますが水が見えるのはそこだけです。川なんてどこにあるのか。


「この神社の正面の道、この下を川が流れています」


「うっそー!」


 芽衣ちゃんがそう言うのもわかります。だって目の前は車がすれ違うことができる程度の道幅の、ごく普通の道路です。両側には住宅が建ち並び、ここが川の上だなんて信じられません。


「本当にこの下を川が流れてるの?」


「うーん、もしかしたら過去形かも。でも川があったのは間違いないわよ。さっきの石版にも書いてあったではないですか。溢れるくらいの水が川になったって」


 2人は道を歩き始めました。少し歩くと商店街になったようでパン屋さんからいい匂いがしてきます。人気のパン屋さんなのか10人ほどお店の前に並んでいます。芽衣ちゃんはその匂いに釣られてその後ろに並ぼうとしますが舞湖は腕を組んで並ばせません。まだスタートしたばかりで寄り道なんてアカンのです。歩いて行くと正面に踏切が見えました。駅があるようです。踏切が降りて電車が通過して行きます。


「あの電車は何?」


「ええとね、西武線の椎名町っていう駅。川はあの踏切を渡ってる」


「!!!! 川が踏切を渡るのね。もう何でもありね」


 そういう表現をすると確かに何でもありに聞こえます。実際は昔は電車なんて無かったのです。踏切を渡ると公園がありました。芽衣ちゃんは、


「この公園を川が通っているの?」


 地図を見るとここで川が左に曲がっています。線路に沿って。どういう事?舞湖は芽衣ちゃんに説明して左に曲がりました。少しして今度は来た方向へ北上します。ほぼUターンです。芽衣ちゃんは


「何で?」


 と聞きますがわかりません。多分こっち側が低いのかだと思うのですが歩いてみてもよくわかりませんでした。現在の舗装路でこれ以上突き止めるのは無理そうです。しばらく歩くと大通りに出ました。そしてまた駅があります。


「要町、さっき通った有楽町線の駅だ。地下鉄の駅を一つ戻ってきた事になりますね」


「川の流れは気まぐれね」


 芽衣ちゃんは面白い事を言います。舞湖は


「何じゃそりゃ」


 と答えましたが芽衣ちゃんは、


「だって地図覗いたけどこのまま池袋に行かないで北上してる。ここで右に曲がれば池袋でしょ?そっちへ行ったほうが小石川が近いのに」


 確かにそうです。こんなに蛇行して遠回りしなくても、と池袋方面を見ると緩い上り坂になっていました。舞湖は閃きます。


「ここは低くてあっちが高いんだ。川は低いところを畝って進んでるみたいだよ。高低差の地図があればすぐにわかるのに」


「そんな地図売ってるの?」


「わからないけど、図書館にあるかなあ」


 2人は小さな公園があったので一時休憩をして持ってきたお菓子を食べながら水筒の麦茶を飲んでいます。


「結構歩いたね。あとどれくらい?」


舞湖は地図を見てざっと計算しました。


「まだ四分の一くらい。なかなかの冒険だね」


「マジっすか。これは厳しい。でも最後まで行くんでしょ」


 芽衣ちゃんの問いに舞湖は大きく頷きました。中一の体力は無限大です。エネルギー充填100%、出発です。大通りの横の細い道を北上して行きます。谷端川南緑道と書いてあります。やっぱりここに川があったのか暗渠かどっちかです。歩いていくと谷端川北緑道に変わりました。地名が今でも残っているなんて面白いですよね。


「あった、駅だ。下板橋駅だって」


 芽衣ちゃんは駅を見つけて喜んでいますが顔は疲れてます。舞湖は芽衣ちゃんの喜び方が嬉しく、改めて地図を見て青ざめます。


「げっ、ここで四分の一くらいでした」


「ウッソでしょ!ゲロゲロですよそれは」


「行けるとこまで行きましょう。お互いどっちかがギブアップしたらそこで」


「ラジャー!」


 気を取り直して歩き出します。その後、板橋駅を通過したところで川は南下し始めます。つまり台地と台地の境目がここにあるというわけです。実際に歩いてみてもイマイチわからないけど。地図を見るとここから大塚駅に向かって川は流れて小石川植物園の横を通って東京ドームを通って神田川へ流れ込んでゴールですが、結局巣鴨新田まで歩いて2人ともギブアップしました。







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