7 お手紙作戦
クラスの一の美人のアケサヤさんに渡せと隣に回した。手紙は順々にアケサヤさんに近づいていく。いいぞいいぞ、それは僕の気持でもあるからドキドキする。ついに手紙は届いた。なに? と手紙を見つめ開いた。
アケサヤさん好きです。入学式の日に初めて目にした時からあなたは僕の全てを奪ってしまいました。
それからうっとりとあなたを思い浮かべるか、どうにもならない苦しさの狭間で僕の心は落ちる枯れ葉のようにままならずクルクルするばかりです。
どうか膝まづく僕の手をお取りください。
あなたの手は天使天女のお手を超えて美しく白く透き通って柔らかく暖かくひんやりして頬に触れてくれるなら即座に気を失い天の桃源に遊ぶでしょう。
きっと大地は無くなるのです。ふわふわと浮遊するのみです。何処かへ飛んで行ってしまいます。
どうかそのお手で引き留めてください。そうでなければ天空を巡る使徒になってしまいます。
遠くあなたを見守ることしかできなくなります。
あなたのすぐ近くを回る妖精のお役目をお命じ下さい。
ヤミニシにこんな手紙出させて良かっただろうか。
それはアケサヤさんを愚弄することにならないか。
傷つけることにならないか。
僕のアケサヤさんを汚してしまうことにならないか。
ああ、とんでもないことをした。
御免なさい、アケサヤさん。どんなに詫びても許されることではありません。
あなたの崇高なお心を弄んでしまいました。
百年の罪です。百年の地獄に値します。
地獄で体を無数回切られ茹で滾る風呂に首まで浸かりこの目を無限回突かれる罪に値します。
どうかお許しください。
出来ることならあなたのひざ元に膝まづかせてください。
一生あなたの足裏の毛氈になってあなたを支えます。
どうかその役目をお命じ下さい。
さてこの気持ちをどう伝えようか。
あの手紙を回収してこれを渡そう。
いやいや回収することも無いだろう。
どこかにポイと捨てるだろう。恐らく人目につかないところに捨てるだろう。
なら放っておいても大丈夫か。
2通目の手紙でお心をお慰めしなければならない。一通目を出したままにしておくなんて出来ない。
本当に馬鹿なことをしてしまった。
アケサヤさんに手紙を出すなんて絶対無理だと思っていた。
だが出さないとならない。こんなことをしてしまったから。
コグスゲに出させないとならないが奴は言うこと聞くかな。
いやいや簡単だった。
コグスゲからと手紙を回した。順繰りにアケサヤさんに届いていく。そしてアケサヤさんは手紙を開いた。そして驚愕してコグスゲを見ている。通じた。良かった。
アケサヤさんは立った。何をするんだろう。ツカツカと国語のじいさん先生の元に行き、
こんな手紙貰いました。先生読んでください。
と2通の手紙を国語教師に渡した。先生はじっくり手紙を読んでいる。
そして分かりました読みましょうと宣告した。生徒たちはなんだと興味津々になっている。
爺さん先生は、朗々と読み上げた。
アケサヤさんが受け取ったラブレターです。
我がクラスにこんなふざけた手紙を書く生徒がいるとは驚きです。
この気持ちは先生が受け止めましょうと言って、生徒簿爆笑を誘った。では書いた本人に立ってもらいましょう。
「最初の手紙はヤミニシ君です。2通目はコグスゲ君です。みなさん書いた人に拍手しましょう」
クラス中やんややんやの大騒ぎだ。