表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/18

第6話 スペシャルゲスト出演中に トラブルが起きたよ

『はーい、美咲チャンネルの美咲だよー! 今日は福島県にある海岸線の町にいるよー!! そしてスペシャルゲスト三人を紹介するねー!!』


 美咲はネモトシャクナゲ柄の服を着ていた。ネモトシャクナゲは福島県の県の花である。テントの中なのか周りは白いテントで殺風景である。会議室にありそうな長い机が置かれていた。美咲はパイプ椅子に座っている。


 美咲の右隣には40代後半の男性が座っており、黒髪で前髪を分けており、後ろ髪を束ねていた。目つきは鋭く、黒い服を着ている。

 シンガーソングライターの御堂寺敦司みどうじ あつしだ。


 そして美咲の左に座っているのは、40代後半の男性で、前髪は赤く染めており逆立てていた。後ろ髪は黒いままである。メイクが決まっており、赤のチェック柄のシャツを着ていた。

 ロックバンド『HI-GROWハイ グロウ』のギタリスト、弁財秀人べんざい ひでとだ。

 この二人はかつてSuperiorityスーペリオリティというロックユニットを組んでいた。

 2000年には不仲で解散したが、2011年の東日本大震災の後、一日限りで復活したのである。


 さらに秀人の左には禿げ頭で丸眼鏡をかけたちょび髭の中年男性が座っていた。随分場違いに見える。


『今回は御堂寺さんと弁財さんがゲストでーす!! この二人はかつてSuperiorityというロックユニットを組んでましたー!! で今回の動画で一番大事な方がおりまーす!! 願馬がんま大学教授、蓮戸元れんと はじめ先生でーす!!』


 美咲と敦司、秀人はぱちぱちと拍手を送る。蓮戸教授は恐縮していた。


『さて御堂寺さんと弁財さんは、2011年の東日本大震災で東京アリーナでチャリティーコンサートを開いたんですよね。私も当時は高校生でしたが、行ってましたよ。そもそもファンでしたし』


『そうなのか。今をときめく秋本美咲あきもと みさきさんと縁があったとは驚きだな』


『でもまあ、あの時は誰でもそうだと思うぜ。Superiorityを一日だけ復活させて、元気をあげたいと思ったんだ』


 美咲の問いに、敦司と秀人は懐かしむように答えた。二人は不仲説があったが、実際は最高の状態で解散したに過ぎない。彼らはだらだらと過去の栄光にしがみつくことを恐れていたのだ。

 二人は別れてしまい、敦司は鳴かず飛ばずの生活を送っていたが、チャリティーコンサートをきっかけに復活したのである。


『ですが未だに福島県は放射能に汚染されていると、国会議員が宣伝しているなんて信じられませんね。蓮戸先生』


 そこに美咲が蓮戸教授に声をかける。


『そうですねぇ。福島産の野菜は口にするなとか、汚染水を処理水と言って誤魔化すなと叫んでおります。実際は海洋放出されるのは、汚染水ではなく、安全性の確認されたALPS処理水なのですよ』


『それって放出されたらどうなるのでしょうか?』


『WHOのトリチウムの飲料水基準は2L/日を一年間飲み続けて、0.1MSV/年のの線量となるように計算されています。ALPS処理水を海洋放出する際には、そのさらに1/7未満になるよう海水を加えて調整するのです。なお、2mSv/年の放射線被爆で遺伝子が受ける損傷の頻度は、日常の紫外線等の100万分の1以下ですね』


『なるほど。つまりありえない話だけどALPS処理水を飲用し続けたとしても、放射線による健康影響は無視できるレベルなんですね!!』


 美咲の問いに蓮戸教授は肯いた。敦司と秀人も感心している。


『なんだ処理水を海洋放出しても問題ないじゃないか。なんで反対しているんだろうな?』


『多分感情で動いているんだと思うぜ。専門家の話より自分が偉いから正しいと思い込むから厄介だよな』


 敦司と秀人はうんうんと肯く。蓮戸教授は悲しそうな顔になった。


『彼らは科学的根拠を無視したがります。そもそもSNSでは専門家より、芸能人や国会議員の言葉が正しいと思い込む傾向が強いですね。これはユーモアのひとつですが、町の名士というだけで芸術の評論をするのはどうかという話に対し、私は卵を産んだことはないが、卵が腐っているかどうかはわかりますというものがあります。この場合は芸術なのですが、専門家と比べるのは間違っていますね』


『そうですよね。なんで芸能人や国会議員は専門家の話を無視するのでしょうか。ほんとおかしいですよね~』


『俺たちは福島県産の野菜や魚をモリモリ食べているけどな。皆も食べてほしいぜ』


 美咲の言葉に敦司が同意した。するとテントの外が騒がしくなった。撮影をやめろだの、殺人犯出てこいとかシュプレヒコールが響いてくる。

 そしてテントの外では言い争いが始まった。


『今は動画の撮影中です。中に入らないでください』


 野太い男の声だ。だが相手は金切り声をあげる。


『なんやと!! 自分ら人殺しをかばうんかい!! 自分は日本を救うヘイワレンジャーやぞ!! 出まかせの動画を垂れ流しにされて黙ってみるわけあらへんやろ!!』


『でたらめではありません。専門家の話ですよ。なんであなたはでたらめだと決めつけるのですか?』


『やかましいわ!! 専門家なんぞ与党の太鼓持ちや、あいつらの都合よくおべっかを使うだけなんや!! わしは偉いんじゃ、混血児の売国奴が生意気に動画撮影やっとること自体むかつくんや!! 早くやめて動画も消さな、自分らの事務所を火で責めたるぞ!!』


 どうも国会議員が殴りこんできたらしい。しかし差別用語を連呼し、周りもそれに煽られて叫んでいる。それでも美咲は冷静に撮影を続けていた。


『美咲さん、怖くないのかよ』


『怖くないですよ。あの手の人種はやりなれていますので。でも三人は初めてですよね。ここは私に任せて脱出してください』


『女性を一人置いて逃げ出すわけにはいかないな。敦司、ここは俺たちで馬鹿どもを追い出さないか?』


 そういって秀人はフォークギターを取り出した。敦司もマイクを取り出す。


『わっ、私も逃げませんよ。ここで暴力に屈したら、放射能に対して間違った情報が拡散されてしまいます!!』


 蓮戸教授もやる気であった。外の騒ぎは大きくなる。やがて一人の影が美咲に向って走ってきた。手にした木材で美咲を叩きつける。それは40台の国会議員であった。突然のことなので顔出しになってしまう。議員は「カメラ止めんかい!! ぶち殺したるぞ!!」とカメラマンたちに襲い掛かろうとした。

 しかしスタッフの一人が前に出る。ゴスロリドレスを着たボディビルダー並みの大男が立ちはだかった。

 議員は邪魔だどけと叫びながら、大男に攻撃を加えた。

 そして大男は議員の右手をつかむ。


『現行犯逮捕だ!! お前たちすぐ警察に通報しろ!!』


『『はい!!』』


 大男の指示で女性の声が二人ほど返ってきた。撮影をしていたのは女性二人のようである。


『なんやとぉ!! わしは国会議員なんや、偉いんやで!! このわしに暴力をふるった自分こそ逮捕にしてやるわ!! いいや、死刑台に昇らせたるで!! このおかま野郎、男のくせにひらひらした女みたいな服着んなや!! ワ―チューバ―なんぞニートやひきこもりや!! ここにいる奴らは全員人間の屑や!!』


 国会議員は叫び続けている。やがてパトカーのサイレンの音が響き、警察官が二人ほど入ってきて、国会議員に手錠をかけた。


 ☆


「なんだこれ……」


 岩佐康いわさ やすしはパソコンの前に座り、動画を見ていた。

 後ろには美咲が立っている。


「御堂寺さんと弁財さんのコラボ企画だよ。すごいでしょ。でもSuperiorityの二人とコラボできて夢みたいだわ」


 美咲はうっとりとしていた。彼女は割とミーハーのようである。

 動画の続きでは敦司の歌と秀人のギターで周囲を黙らせた。警察は機動隊をよこしており、逮捕者は数十人に上ったという。


「でも警察の動きが速すぎるな。なんでだ?」


「実は警察と裏で話を通していたのだ。あえていつどこで美咲の動画をSNSで告知したうえでな。まさか国会議員が釣れるとは思わなかった」


 答えたのはゴスロリドレスを着た大男、石原克己いしはら かつみである。お盆を手にしており、紅茶とコーヒーのカップが置かれていた。

 国会議員は逮捕され、党を除名処分された。あの男は過激な発言が目立ち、同じ党の議員は迷惑していたのである。克己は男を嫌う議員と手紙でやり取りをしており、議員を陥れるように頼んだのだ。

 

「そうだよねぇ。精々文句を言う程度だと思っていたけど、実力行使をするとは思わなかったわ。御堂寺さんと弁財さん、蓮戸教授に危害が加えられなくてほんとよかったよ」


「まあ、それも込みで出演してくれたんだけどな」


 美咲は克己から出された紅茶を飲んだ。克己は康にコーヒーを置くと、康はそれを飲んだ。


「でも、なんでマネージャーの俺が行かなかったんだ?」


 この動画は康が個人事務所セイレーンに所属してから撮影されたものだ。

 なぜか美咲は康の動向を拒んだのである。


「だってあんたは男に対してラッキースケベを発動させるからね。ゲスト三人をあんたの毒牙にかけるわけにはいかないのよ」


「いや、なんだよそれ!! この間横川先生や綺羅めくるさんと一緒について行ったじゃないか!!」


「あれはいいのよ。師匠なら一緒でもいいと思っているわ。綺羅さんはちょっと怪しいわね。もしかしたらあんたに惚れたかも」


 美咲は唸っていた。康に対しての信頼は皆無である。


「以前は北海道でも核燃料廃棄施設を名乗り出た町と村で撮影していたな。あちらも反対派がこちらに対して殴りかかってきたよ。なぜか美咲に対して攻撃的になるんだよな」


 克己は腕を組みながら当時のことを思い起こしていた。

 美咲チャンネルは過激なワ―チューバとして有名である。実名を出さずその地域において毒舌を発揮するのだが、反対派の人間がいちゃもんをつけに来て、その度に騒ぎを起こした。

 そして克己や恋人の田亀明宏たがめ あきひろたちがそいつらを現行犯逮捕し、警察に通報するのがパターンになっている。


 おかげで右翼扱いされていた。もっともテレビでは放送されない。前の所属事務所キツネ御殿の影響があるからだ。しかしネットでは有名になっている。


「でも最後にメテオシャワーフェスの話ができなかったのは残念だわ」


 美咲は残念そうにつぶやく。

 今回は如月文人様の再結成に登場した御堂寺敦司と弁財秀人を出演させました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 敦司と秀人のサプライズ登場。 これは胸熱です、そして福島の現状に 触れるとは、なかなか大胆な試みですね。 しかも科学的かつ論理的に説明されてて、 個人的にも色々と学べる回でした。
[良い点] 康視点で書かれる美咲のその後、ぶっ飛んだところが実は師匠譲りだったり、地元に根差したアイ活していたり、実は社会派だったり。 すごく魅力的なキャラクターですね。脇役も個性派揃いで、なのに皆…
[良い点] ∀・)美咲さん、めっちゃ派手な御方ですね(笑)でも、イイと思います(笑)そこにきて康さんの存在感もなんかあがっている感じが。この感じだと蟲ケラたちとは凄く相性が良さそうな気がする☆☆☆彡 …
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ