洋菓子店
エミリアは、通い慣れた洋菓子店が最近休業していることに気がつきました。店主に連絡を取り、その理由を知ると、驚くべき真実が明らかになりました。店主の妻が出産のために実家に帰っているというのです。それによって、店主は家のことも店のことも妻に任せ切りで、何がどこにあるのかわからない状態になってしまっていたのです。
エミリアは店の中を見て、その惨状に怒りを覚えました。「この店は誰の店ですか?自分の身の回りのこともできないような人の菓子は誰も食べたくないわ!」彼女の声は厳しさと同時に、心からの思いが込められていました。そして、彼女は決意しました。自分が店を再建すると。
店主は、
「エミリア様、そんなことおっしゃっられても何から手をつけていいやらわからなくて‥。片づけようにもどこから手を付けてよいやら‥。」
と言います。しかし、エミリアは言いました。
「何を言っているんですか!あなたが何もかもをほったらかしにして奥さんに逃げられたんでしょう?」
店主はその言葉を聞くと、「うぅ……」とうなだれて反論できませんでした。彼は、妻の出産を機に仕事をもっと頑張ろうとすら思っていたのです。それがいつの間にか妻のことをほったらかしにしてしまっていたのです。
「私は今からあなたの代わりにこの店を再建しようと思います。私は、この店の洋菓子が大好物です。私にはそれくらいしか出来ませんから。」
「ありがとうございます。エミリア様。どうかよろしくお願いいたします。」
「ふふっ、ビシビシいくわよ!」
(男の人ってなんでこんなに弱いのかしらね‥前世の旦那も私がいないとよく物の場所を聞いてきたわ)
店主は自身が妻に頼り切っていたことを反省し、エミリアと一緒に店の片づけを始めました。不要なものは処分し、店で使う大切な調理道具は自分で管理することを決意しました。少しずつ店の中が整っていきます。
数日後、店の前に開店を知らせる張り紙を出しました。そこにはこう書かれています。"美味しいケーキのある洋菓子屋さん。
あなたの街の小さな洋菓子店。
本日リニューアルオープン!!" そして、いよいよオープン当日になりました。
翌週、エミリアは洋菓子店を訪れました。店主は一人で店の掃除と開店準備をしています。
その後ろでは、店主の妻が赤ちゃんを抱いて微笑みながら見守っていました。
エミリアは店主の頑張りに感動しました。彼は自分の未熟さを認め、家族との絆を取り戻そうと努力していました。店の中が整い、彼の姿勢も変わってきたのが明らかでした。
この小さな洋菓子店には、一家の温かさと絆が息づいていました。エミリアはその空気を感じながら、大切なものは自分自身で守り育てることの大切さを学びました。
そうして、エミリアは『ラ・ヴァリエール』を再建し、見事に成功させたのです。今では彼女の作ったお菓子を求めて遠方からお客さんが来るほどです。
さて、ここまでは普通の話なのですが……。実はこの話は続きがります。今ままで店主は、仏頂面で愛想がないことで有名でしたが、子供と奥さんが戻ってきてからというもの目じりは下がり、口角はいつも上がっていて毎日にこにこと過ごしているとの噂です。