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マリアの実家

マリアとの絆が深まり、私は彼女の家族の問題にも目を向けるようになりました。マリアの家族は、特に兄との関係が悪化していました。彼らの家族構成は、父と兄、そしてマリアの3人家族で、母親は彼女が生まれて間もなく亡くなってしまいました。兄は母親の死をマリアのせいだと責め立てていました。


ある日、私はマリアの実家に訪れました。家の中は、母親が亡くなったときのままになっていました。特に家族の共有スペースは、何十枚もの母親の絵姿が飾られ、16年もの間、何一つ物が動かされることなく放置されていました。ほこりに覆われ、汚れが目立っていました。


母親の部屋に足を踏み入れると、カーテンも閉まり、薄暗い雰囲気が漂っていました。その場所は心地よいものではありませんでした。母親が亡くなった当時のままの状態になっていたからです。部屋の中央にベッドが置かれ、その周りには花瓶や写真立てなどが置かれていた。ベッドの上には毛布が敷かれていたが、ほこりを被っていた。写真の中で笑う母親の顔を見ると、胸が締め付けられる思いになりました。

16年という月日は長いものです。その間、この部屋は一度も掃除されることもなく、誰も足を運ばなかったようだった。

「こんなところで何をしているんだ?」

背後から突然声をかけられた。振り返ると、そこにはマリアの兄の姿があった。彼は不機嫌そうな表情を浮かべていた。

私は勇気を持って、マリアの兄と父親に話を聞くことにしました。彼らが整理整頓をしない理由は、母親のことを忘れてしまうのが怖いということでした。




彼女は、とても明るい性格の女性だったそうです。しかし、病気を患ってしまい、それから数ヵ月後に息を引き取りました。それ以来、彼らは母親がいなくなったという事実を受け入れられずにいたのだ。彼らにとって母親は特別な存在であり、今でも生き続けていると思っているようでした。



「怖いんだ。この部屋のものを整理すると母さんのことを忘れてしまうような気がして・・。」

父親はそう言いながら目を伏せた。彼の瞳からは涙が流れ落ちていた。

「でもこのままじゃいけない。私達は前に進まないといけないんだ。」

兄の方も涙を流しながら呟きました。彼らの気持ちはよくわかります。大切な人と別れることはとても辛いことです。

私は思い切って提案しました。「マリアさんのお母さんが大事にしていたものだけを残し、家をきれいに整理しましょう」と。


そして少しずつ前に進むように促した。

最初は躊躇っていたものの、私の熱意に押されて彼らは決意してくれました。それから数日かけて部屋の大掃除を行いました。

家全体の空気が変わるほど綺麗にしました。壁にかけられている絵姿は全て取り外し、家族の絵姿だけを残し、他の物品は処分しました。そして、大切なものを一番目立つ場所に飾ることにしました。それは母親の写真でした。写真を目にするたびに思い出してくれるだろうと思ったからです。

こうして16年ぶりに家の中は生まれ変わりました。

数日後、久しぶりにマリアが家にやって来ました。玄関を開けるなり、目の前に広がる光景を見て驚いている様子でした。彼女の後ろでは、父親と兄も同じように呆然と立ち尽くしていました。

「これは・・・。

ありがとう。エミリア嬢。なんとお礼を言ったらいいか・・。」


「気に入ってくださればいいのですが。」


「私からもお礼をいう。ありがとう。なんだか母さんが生きていたときみたいだ。」


彼らの心の距離が少しずつ縮まっていく様子が伺えた。



「ごめんな、マリア。俺がお前を責めることしかできなかった。」


「いいのです。お兄様。わたしこそごめんなさい。お兄様に向き合おうとしなかった。」


それからというもの、マリアの家族とは頻繁に交流を持つようになった。私が訪問したときは、必ず家の中を案内してくれた。特にお気に入りの場所があるらしく、そこだけはいつも念入りに掃除をしていた。その場所は母親の部屋だった。私は彼女の部屋を訪れると不思議な感覚に陥った。飾ってある母親の絵姿が笑ったような気がしたのだった。

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