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シロクマ危機一髪



 またもや部屋にノック音が響いた。

相手はどうやら侍従のようで、レオンが許可を出すと木箱を抱えて入ってくる。

 

「申し訳ございません。

 治水工事に関する調査資料をお渡ししておりませんでした」

 眼鏡をかけた大人しそうな侍従は、少し顔を青褪めさせて謝罪すると、しきりに眼鏡を直している。


 その様子に違和感を感じる。

確かに叱責を受けてもおかしくないけれど。

それはレオンも同様なのか、視線を外さない。



「失礼」


 レオンは勢いよく立ち上がると、侍従の眼鏡を取り床に投げつけて踏み潰した。

 念入りにグリグリと踏み潰し、靴をずらすと。

その床は真っ黒に焦げて煙を上げていて、レオンはそれに水差しで水をかけた。


「先程から随分と眼鏡を気にされてましたね。

 その箱の中身は本当に資料でしょうか?」

侍従の前に立ち、威圧するように見下ろしている。

責められ疑われている侍従はガタガタと震え出すと「も、申し訳ございません、お許しを……!」


「許されると?そんな訳ないでしょう。

 反逆罪で処刑か幽閉ですね」

 冷たく言い放つと廊下にいる護衛に、牢へ連れて行くよう指示を出した。


 慌てたようにふたりの護衛が侍従を引っ立てる。

残された木箱を開けると、中には偽物の紙の束と小麦粉のような粉が入っていた。

 火薬の類なのか、小麦粉なのか。


「……どちらにせよ、爆発した可能性が高いね」

 そう呟くと、レオンも首を縦に振る。


「レオンが気付いてくれて助かったよ」

 まさか眼鏡が火の役割だとは思いもしなかった。

「彼らは本気で私を消すつもりらしい。

 リーベルドが考えたとは、とても思えない策だ。

 ……油断できないね。

 スズがいなくて良かった」

「…………そうですね」


 その瞬間、窓が割れる音が響いた。

「陛下……!」

それと同時に天井からバンッという音とともに、小さい何かが飛んでくる。

スズの御守りの効果か、既の所で逸れた。


 しかしすぐに次が飛んでくると、レオンは腕を掠ったようで血が滲んでいる。


 音に気づいて入ってきた護衛は、私を守るように囲んだ。

居場所が分かっているのに、誰も近づけなかった。

このままでは袋の鼠だ。

避けながらどうするべきか考えていると。


 ボンッと少し違う音が三度したかと思うと、天井から人が落ちてきた。

 着地すると同時に、パサリと布が落ちる音がした。それに目を見張った。


 ――その瞬間、身体が勝手に動いてしまった。


 黒い服をきた奴は、筒のようなものからナイフに変えていて、それが左腕に掠った。

それに構わずナイフを蹴り落とすと、私のすぐあとに反応していたレオンが奴を取り押さえた。

「くっそがぁぁ、邪魔しやがって……!」

押さえられながら喚く奴は、女のような声だ。


「……陛下!」

 私の背中で響く声は、間違えようもない声で。

「約束したでしょう?なんでここにいるの。

 ――スズ」

「……ごめんなさい、あとで話すから!

 腕、血が出てる、早くなんとかしないと……っ」

 振り返ると、涙でぐちゃぐちゃの顔で、必死に腕の血を止めている。


「陛下、ご無事ですか」

 取り押さえるのを護衛と代わり、簡易の布を手に持っている。

「勝手な行動をしてしまったね。

 少し掠っただけで、問題ないよ」

 布を腕に巻くと、スズの顔を隠すように抱きしめる。

「反応が遅く、申し訳ございません」

 責任を感じているのか、顔が強張っている。


「気にするな。

 それより、その女の顔を見せて」

 そう言うと取り押さえている護衛が覆面を取る。


「――なるほど、ね。

 リーベルド公爵令嬢が、こんなところでそんな格好をしてなにをしている?」

「……くっそ、あの女のせいで……!」

 私の問いに答えるでもなく、スズのほうを睨んでいた。スズはビクリと身体を震わせた。

 「会話が出来そうにないね、そのまま牢へ入れて厳重に警備させて」

「はっ!」と護衛達は引っ立てていく。

 一刻も早くスズの視界からいなくなって欲しかった。


「赤と青、両方が使われたと見るべきか」

「まだ油断してはならないのでは……」

「それもそうだね」

 一呼吸おくと、続けて言う。

「レオン。スズに気づいていたでしょう」

「…………はい。薄々、そうではないかと」

 あの歯切れの悪さはそこからきていたらしい。



 スズは私の様子を窺うように、濡れた瞳で見上げる。

「――では、言い訳を聞こうかな」

 にっこりと笑みを浮かべて言うと、スズはポツリポツリと話し出した。




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