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お披露目式に挑む



 翌朝目が覚めると朝食を軽く済ませて、準備に取り掛かる。


 まずは昨日と同じように湯浴みをして、マッサージを受けると、ドレスに着替えた。

白とピンクを基調にしたふんわりドレスで、いつもよりゴージャスな印象だった。

 身の丈に合っていないのでは、と不安に駆られる私をフェリスはとことん褒めまくる。

「妖精のようで、美しいです!

 これには陛下も驚いてしまうかもしれませんね。陛下が選ばれたドレスでないのが、残念です」

「え?」

「もっともっと腕によりをかけて、素敵に仕上げますね!」

 疑問に思う私をよそに、フェリスはグッと拳を握ると、髪のセットに取り掛かる。

少しウェーブをかけるように、癖付けをすると長くはない髪をハーフアップにする。

前髪も分けるようにして、耳にかけられた。

顔にはうっすらの化粧を施していく。


「あとは装飾品ですね、どれにしますか?」

そう言ってフェリスが持ってきたのは、ギラギラと宝石の輝いたネックレスや髪飾りだ。

「えっと……」

どれも嫌だとは言えない。


 そんな気持ちが顔に出ていたのか、フェリスはそれを下げると、いつもの装飾品を取り出した。

「こちらをつけられますか?」

フェリスが取り出したのは、いつもの銀細工の髪飾りと、ネックレスだ。

「地味でしょうか?」

「いえ!もし気になるようでしたら、重ね付けすることも出来ますよ」

「では、それでお願いします」


 あれやこれや悩みながら、最終的にはネックレスはそのままつけて、髪飾りにはピンクの宝石を重ねてつけた。

「とってもお綺麗です!

 あとは陛下のお迎えを待つのみですね」

 フェリスはなんだか楽しそうで、緊張している私まで気が抜けそうだった。


 お披露目式は昼から始まり、その前に陛下直々にお迎えに来てくれるそう。

 開始時間を一時間切ると、そわそわしてしまう。

ふとスマフォはどうしようか、と考える。

ドレスには隠せる場所がなく、ポーチごとフェリスに預かってもらうことにした。


 三十分前になる頃、扉を叩く音が響いた。

姿を見せた陛下に、目を奪われてしまう。


 正装だろうか、軍服のような服に銀の飾りと刺繍が施され、麗しいという言葉がぴったりだった。

そんな陛下は目が合うと、頬を緩める。

「スズ、とてもよく似合っているね。

 可愛すぎて妖精と間違えられないか、心配だよ」

「……陛下こそ、格好良いです」

恥ずかしくなるような言葉に顔を赤くしながらも、拙い言葉で陛下を褒める。

 すると、陛下は「ありがとう」と微笑みを深めた。

 それがまた美しくて、私は困ってしまった。


「ふふ、ではいこうか」

微笑みながらエスコートするように差し出された手には、キラリと光るものがある。

 ――渡した指輪が薬指に付いていた。


 それに嬉しいような恥ずかしいような気持ちが湧き上がるのを必死に抑え込むと「はい」と手をとった。



 ****


 広間に繋がる控室に着くと、いよいよ心臓は破裂しそうなくらいにバクバクいい始める。


 そんな私を見て陛下は笑うと。

「心配ないよ。私は側を離れないから」

それは安心出来るが、いいのだろうか。

そんなことを考えていると「失礼いたします」と声が響いた。

 

「スズ様、お久しぶりですね。

 本日はよろしくお願いいたします」

そう言って入ってきたレオン様は頭を下げる。

こちらこそ、と返すと早速本題に入る。


「まず陛下におひとりで挨拶をしていただき、その後スズ様をエスコートして、もう一度広間に入ります。それからは流れに身を任せてください」

 簡単すぎる説明に驚いてしまう。

確かにガチガチに説明されても困るが、流れに身を任せて、と言われるのも困る。

「スズ、私に任せて」

 陛下の言葉に頷き、深呼吸をする。

それをレオン様から生暖かい目で見られて、恥ずかしくなった。


「陛下、そろそろ」

レオン様がそういうと、陛下は奥に消えていく。


「本日は我が国に現れた『救国の乙女』を紹介するとともに正式に任命する場とする。

 異例のことに戸惑う者もいるかもしれないが『救国の乙女』は皇帝である私の庇護下にあることを、ゆめゆめ忘れるな」

 陛下は挨拶をしたあとそう宣言をすると、こちらに戻り、私の手を取る。


 一歩壇上に踏み入れると、遠慮なく突き刺さる大量の視線に心が折れそうだ。

 下は見てはいけないと、ひたすら前だけを見る。


 陛下は玉座の前で立ち止まると、深く息を吸った。

「ここにいる彼女が『救国の乙女』スズ嬢だ。

 『救国の乙女』はエルザード公爵領での事件を解決に導いた。この場で感謝をさせてほしい。

『救国の乙女』としてこのデイル帝国の富国と発展に力と知識を貸してもらえるだろうか?」

「身に余る光栄でございます。

 精一杯努めさせていただきます」

 礼をとりそう答えると、陛下は頷き口を開く。


「その詳細については『救国の乙女』に関する規定に従う。後日文書を各邸に送付するため、確認して従うように」


 そう陛下が言うと、恰幅の良い中年男性が手をあげる。

「なんだ」

「恐れながら、陛下。

 そのお方は本当に『救国の乙女』でございましょうか?カリストス王国に現れたと聞いております。名を騙っている可能性はございませんか?」

 陛下の目がスッと冷える。

周りの貴族は静かに成り行きを見守っている。

「ほう、……リーベルド公は疑っていると?」

「そのようなことは、決して!

 この国に前例のないこと故に、慎重を期すべきかと存じます」

「今この場にはカリストス王国、アリシャール王国から招いた賓客がいるが……。

 その意味がわからぬ訳ではあるまい」

 そう笑顔を浮かべた陛下に、リーベルド公と呼ばれた男性は顔を真っ青にして頭を下げた。

「……申し訳ございません。

 無礼な発言をいたしました」

 ピンと張り詰めた空気に、微動だにできない。

他の貴族達も同様のようだ。


「『救国の乙女』である彼女には、私の紋章がついた銀のネックレスを贈った。

彼女に対する無礼は、私に対する無礼だと思ってもらって構わない」

 その言葉に男性は更に顔色を悪くしていた。


 改めて見渡すと、エルザード公爵の姿もある。

相変わらず厳格そうな顔立ちで、男性を不快の表情で見ている。


 どこからともなくレオン様が現れると「エルザード閣下」と呼んだ。

 陛下は私の手を取ると、エスコートをする。

「陛下と救国の乙女様に、ご挨拶を申し上げます。

 ルイズ・エルザードと申します。

 救国の乙女様に救っていただいた御恩は、決して忘れません。

 この度は誠におめでとうございます」

 そう膝をついて頭を下げる。

陛下が「これからもよろしく頼む」と言うと周りが少しざわめいた気がした。

公爵様は再び頭を下げると、下がっていく。


 それからは爵位が高い順に、挨拶に呼ばれる。

陛下が答えて、私は隣で微笑む。

微笑み続けて、頬がつりそうだ。

 あの男性以外の貴族の挨拶が全て終わると、陛下が締めの挨拶をすると、一緒に退室した。

男性の表情は怖くて見ることは出来なかった。

 

「……つ、つかれた……」

 控室に戻った瞬間にそう言う私に、陛下は微笑みを浮かべる。

先程までの厳しい顔はどこかにいったようだ。

「不快な思いをさせて、申し訳ないね」

「いえ、大丈夫です。そういえばヴィル達はどこにいたんですか?」

「広間の上だよ。見えないようになっていてね」

 上!どおりで見えないはずだ。

「そうなんですね。

 でもお披露目式が無事に終わって良かったです」

「スズのおかげだよ。ありがとう」

私はひたすら笑っていただけだ。

間違いなく陛下のおかげだった。


 こちらこそ、と言うと微笑んで頭を撫でる。

私はペットにでもなったような気分だった。




 

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