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計算高いクマ




 




「スズ様、入ってもよろしいでしょうか?」


護衛騎士の声がしたので、返事をすると。


「失礼いたします。スズ様の身の回りのお世話をさせていただきます、侍女のフェリスと申します」

柔らかい雰囲気の美人さんが挨拶をする。

「スズです。よろしくお願いします」

 ややこしいので、名前を名乗るのはやめておいた。



「では、さっそく湯浴みをしていただきます。

 こちらへどうぞ」

すぐに部屋の奥へ案内される。


「失礼いたします」

気づくと私の服に手をかけ、脱がそうとしていた。

慌ててそれを止めて、自分で脱いでタオルをもらって身体を隠す。

いくら同性でも見られるのは恥ずかしい。


「そちらのブレスレットはどういたしましょうか?」

ブレスレット?

自分の手首をみてみると綺麗な緑色をしたブレスレットがついていた。

 いつの間に?もしかして、聖石……?

 手にキスされた時につけられたのだろうか。

 ……ん?キス?んん??

 まさか、手で良かったとか……ないよね?

 嫌な予感がするが、帰ってくるまで確認できない。

「これは、このままで大丈夫です」

 詳細を知らないので、とは言えない。

  

 


 中に入るとお湯を張った浴槽があり、浴槽には装飾が施されていた。

大きさもアパートのものの倍はあり、恐れ慄いてしまう。


 フェリスさんには髪だけ洗ってもらい、外で待っていてもらう。

仕事を奪うようで申し訳ないが、身体だけは自分で!と譲らなかった。

人に洗ってもらうなんて考えられない。



 身体を洗い、ゆっくりとお湯に浸かる。

お風呂に浸かれるなんてありがたい。

手をあげると、シャラシャラと緑色が揺れるのが視界に入った。

 ヴィルの綺麗な緑色の瞳を思い出す。

 ………そして、あの言葉も。


 このブレスレットがある限り、見るたびにヴィルを思い出すはずだ。

どこまで狙い通りなのか。



 私は人と話すのは苦手だ。

言葉が出ず、焦る。

思考がまとまらず、早く喋らないとと思うと変なことを口走る。

そうしてあとであれは駄目だった、あの時こう言えば、と後悔ばかりしてしまうのだ。

……今のように。


 その時には必死で気づけない。



 そこまで計算のうちで上手く誘導されていたら、怖いと思った。


「……もっと頑張らないと。

 まずは、フェリスさんと話せるようになりたい」

 そう呟き、手で頬をぺちぺち叩く。

お風呂からでると用意してもらった服に着替えた。



 部屋に入るとフェリスさんが軽食とハーブティーを用意してくれていた。

確かにお腹が空いている気もする。

いきなりの状況に緊張して麻痺しているようで、それほど空腹は感じなかった。


「あの。良かったら付き合ってもらえませんか?

 ひとりでは寂しいので……」

ひとりで食べるのは気がひけるし、不安だ。


「ですが、私は侍女でとてもご一緒できる立場では……」

「ここにはふたりだけです。

 咎めるものはいません」

 それにどう聞いているかわからないが、私は貴族令嬢でもない。

ヴィルが勝手に婚約者にして行ってしまったので、どう振る舞うのか正解かわからないが。

確認しておけば良かったと後悔した。


「……では、ハーブティーのみいただきます」


「フェリスさん、私のテーブルマナーで気になる箇所があれば教えてください。

 失礼があってはいけないので、お願いします」



 そう伝えると食事を始める。


 メインはお魚、サラダとパンがついていた。

フォークとナイフを持ち、魚を切り分けて口に運ぶ。揚げてあり、意外にもスパイシーな味付けだった。

サラダがあっさりとおいしく感じるほどだ。


 ごはんが食べたいと思いながら、パンを手でちぎって口に入れる。


 なにも言われないということは合っているのだろうか?

少しホッとして食べるペースも上がったようで、あっという間に食べ終わってしまった。


 デザートはコンポートのようなものだ。

ハーブティーと一緒にいただく。

つい癖で器を手に持ってしまうと、フェリスさんに止められた。


「最後まで食器は持たずにお召し上がりください。

 他は綺麗な所作でした」

「わかりました。聞くことができて良かったです。

 ありがとうございます」

「お役に立てて何よりです。

 では、私は片付けをしますので、スズ様は寝室のほうでお休みになってください」


「ありがとうございます。

 また明日もお願いします。おやすみなさい」



 そういうと寝室に向かい、ベッドに横になる。

ベッドもふっかふかで気持ちいい。

私がアパートで使っているベッドとは大違いだ。

こんなものを知ってしまったら、物足りなくなりそうだ。


 明日は、本当だったら仕事のはずだが、どうなるのだろう。


 逃げたい、辞めたいとは思っていたが、無責任な形で他の人に迷惑をかけることは望んでいない。



 目まぐるしく色々なこと起き疲れていたのか、そんなことを考えているといつの間にか寝てしまっていた。






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