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秘術



「ヴィルを助ける方法を考えましょう!」

無理やり話を切り出すと続けて本題に入った。


「シャロさん、まずはヴィルの記憶を戻すことに力を貸していただけまんか?」

「申し訳ありません。呪いは記憶の操作のような繊細なものには向いていません。それに紋章が目立ちます。そちらはスズさんが試してみてください」


 呪いでも出来そうだが、他の秘術と違い制約が色々あるので難しいのかもしれない。

スマフォでも表現次第ではある。

ただ紋章は不審に思われる可能性は高い。

 


「記憶を戻すことを優先しようと思っていましたが、呪いが向いてないとなると……。私が記憶を戻すための飲み物を作ってみます」


 

 そう、私が記憶を戻す飲み物を作って殿下が差し入れとして持っていく。それが最善だと私は考えた。

飲み物ならそんなに怪しまれないだろう。


「殿下にはその飲み物の用意と、それを差し入れに行っていただきたいのですがお願いできますか?」

 "記憶を戻す飲み物"で用意することもできるかもしれないが、殿下が用意したことを知っている人がいたほうがいいだろう。



「ヴィラールが戻るならいくらでも。

 しかし、そのあとはどうする?

 取り乱して説明を求めるはずだ」

突然記憶が戻れば混乱するだろう。

忘れている間のことも記憶に残るのだろうか。 

覚えていたら気の毒な気はするが、情報はほしい。


「連絡手段をシャロさんに用意してもらいたいと思っています。それを渡すのはどうでしょうか」


「出来れば紙でメールのように、やり取りが出来るといいのですが……」


 シャロさんは向こうの世界に居たため、メールでも通じるだろう。

呪いは物に対して使う方が向いていると思う。

例えをあげると、シャロさんは顎に手をやると悩み始める。


「できるだけ怪しまれないものがいいんですよね?」

「はい、できますか?」

「本のような形にすれば違和感がないかと思います」


 そういうと、シャロさんはやってみますねと本とペンを持って部屋の隅で座り込む。

ペンの秘術は見たことないので、見てみたい気持ちもあるが我慢する。



 殿下は飲み物を貰いに行ってくれた。



 しばらくすると、殿下は大きな瓶に入ったオレンジ色の液体を持って戻ってきた。



 部屋にあるグラスを手に取ると、私とシャロさん、自分用に注ぐ。

王太子にそんなことをさせるなんて申し訳ない。

私がするべきだった!


 反省しながら受け取ると、口に含む。

よく冷えていてふわっと果物の味が口に広がった。

ミックスジュースのように色々な味がする。

さすがお城で用意されるものは違う。


 ……これはお高いのでは。

そう感じるが、口には出さない。

聞いてしまったら、失敗できなくなってしまう。


 あっという間に飲み干すと、私も部屋の隅で作業に取り掛かった。

あまり見られても困るからだ。



 ジュースをグラスに注ぐと、ポーチからスマフォを取り出す。

メール画面を開き、悩んでしまう。


 "目の前のジュースを"でいいのだろうか。

"記憶を戻す"でいいのかが一番悩む。

記憶を奪った願いの内容がわからない。

私と桜様に関する記憶を入れ替えた可能性もなくはない。

その場合も"戻す"だろうか。

言葉は少し違うと意味が変わってくることもあるので、不安は尽きない。


 何度も消しては打つを繰り返した。



 ――目の前のジュースを、記憶を取り戻す薬にしてください



 そう画面に表示されると、送信ボタンを押す。


 すると、グラスが淡く光を帯びたかと思うと中に光が吸い込まれていく。



 ……完成?成功?


 見た目はただのジュースである。

試すことが出来ないのが、余計に不安を煽る。


 失敗だったらもう一度作れば大丈夫、そう自分にいい聞かせ、ソファーで待つ殿下のもとへ戻る。



「飲み物できました。効力はわかりませんが」

そう、殿下にいって手渡す。

殿下はジュースを興味深そうにじっくりと見ている。


「これは味を変えた?」

味を変える、そうしたら自分でも試すことができる。そのことに気づかされた。

「もう一度作り直します!」

「いや、試しに飲んで量が変わっても効力があるのかはわからない。

 このままいこう。力も温存しておきたい」

それは最もだ。

不安だが、このままいくしかないだろう。



 そう殿下と話していると、シャロさんがこちらに戻ってきた。腕には本とペンを抱えている。



「こちらでどうでしょうか?」

 テーブルの上に本2冊、ペン2本を置くと、殿下側とシャロさん側に分ける。


 シャロさんは自分側のペンと本を手に取ると本を開いて文字を書いている。

すると、陛下側の本にスッと文字が浮き出た。

「す、すごい!!魔法みたいです」

まるでファンタジーの映画のようで感動した。

「これはすごいな!見た目は普通の本と、ペンにしか見えない、怪しまれることもないだろう」


 まさか本当に言った通りのものが出来るとは思わなかった。さすがシャロさんだ。


「使えるものができて良かったです」

 シャロさんはふたりの反応に安堵の表情を浮かべていた。



「よし、あとは私の出番だね」

そういうと殿下はソファーから立ち上がる。 


 時刻は22時になろうとしていた。


「もう寝てしまっているのでは?」

シャロさんが殿下を止めるように言う。

「そうしたら起こすまでだよ。

 悠長にしている時間はないと思う」


 殿下の言う通りかもしれない。

移動手段を持っているとしたら、いつ彼女が現れてもおかしくないのだ。


 その前に記憶を戻して、手掛かりを掴みたい。


「エミール殿下、お願いいたします。

 どうかお気をつけてくださいね」

殿下は頷くと扉に向かいながら、部屋から出ないようにと言い残して出て行った。



 うまくいきますように、そう祈りながら見送るとシャロさんとふたりで留守番をした。





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