シロクマside 1
スズがまたいなくなったと報告を受けると、急遽議会を開き、どんな状況にも対応できるよう騎士に部隊を編成させた。
しばらくしてレオンより戻ってきたと連絡があるまで、生きた心地がしなかった。
冷静でいなければと必死だった。
すぐに解散を命じ、部屋を出て人の目がなくなると執務室を目指して駆け足になる。
スズの姿を見つけると、駆け寄り抱きしめた。
体温を感じて、やっと安心することができた。
もう周りに誰が居ようが関係ない。
怪我がないことを確認しても腕は離さない。
涙が滲んでいるのを見ると、あっさり誘拐されてしまった自分の不甲斐なさに腕に力が入った。
安心できたらと頭をぽんぽんすると、上から見えるスズの耳が赤くなってくる。
気づくと同時に、スズはもう大丈夫だからと逃げようとするが逃がさない。
「そう?もう誰にも誘拐されないようずっと抱いているのもいいと思ったのだけれど」
本気でそう思って口に出す。
まだ触れてはいないが、見知らぬクマと従者がいるのもいい気はしない。
クマはスズがしたに違いない。
スズはネックレスがあるから平気だというが、それだけではどうにも虫除けにならないようだ。
なにか他に手を考えておこう。
しかし、スズを助けることが出来たなら良かったと思う。
あのネックレスの呪いは、デイル帝国に伝わる秘術を使っている。
以前兄が本に施したものと基本は同じだ。
王族が持つ特別なペンで紋章を描くことによって効力を発揮する。
ペンは使うとインクが減り、時間とともに増えるらしい。
半永久的に使うためには代償が必要になるため、多くは使用回数が限られていた。
ネックレスもそうだ、使えなくなる前に次を用意すれば代償は必要ない。
あのネックレスには帰りたいと思った時に私の執務室に転移するよう呪いがかかっている。
転移に使用するのは初めてで、使えるか確証はなく伝えなかったのだ。
無事に使えて良かった、とホッとした。
痺れを切らしたレオンが間に入ると、スズはハッとしてから一気に顔が真っ赤に染まる。
皆に謝るとサッと私の腕から逃げて、部屋の隅にいき丸くなっていた。
……もしかして周りに人がいるのを忘れていた?
あの間スズは私しか見ていなかった、それに気づくとどうにも頬が緩んでしまう。
丸まって真っ赤になっている姿が可愛くて愛しくて。焦っていた気持ちが落ち着いた。
クマに座る許可を出すと、ふと気になった。
――まさかあの時同様、抱っこしたのでは。
スズは否定したが、クマは話をすり替えた。
疑惑は確信に変わったが、黙っておく。
このクマは頭がいいらしい。
知りたいことを的確に答え、秘密は守る。
なおかつ、私の反応を見た途端にスズと適切な距離をとり、適切な対応をしていた。
確かにこれが弟であれば、さぞ焦るだろう。
話し合いの結果王太子を自白させるためにスズのスマフォとやらで、接触を図ることになった。
待機している部屋から様子を伺い、合図を出し場所を移動すると手を握っておく。
万が一にもまた拐われたら、たまったものではない。
スズの手元から、あの王太子の声がする。
どうやら無事に繋がったようだった。
しかし王太子の第一声の声に違和感を覚え、嫌な予感が胸をよぎる。
「……スズはこんな僕を知っても側にいてくれますか?」
その言葉が聞こえたとき、予感は確信になり思わずスズの手を強く握ってしまった。
スズはその言葉の意味に気づくことなく、相手が喜ぶようなことをいう。
「スズは、救国の乙女になるんですよね?」
考えていることが手にとるように分かってしまう。
私も望んでいることだから。
「予定では」
「絶対になってください。でないと、僕困ります」
それを聞いたら我慢できず、スズの手を握って訴える。
が、首を傾げているので伝わっていない。
このまま会話をしていたら、ろくな事にはならない。そう思うと、スマフォを奪い終わらせていた。これ以上敵はいらない。
スズが来る前に話をするため、応接室に向かう。
こんなに余裕のない気持ちは初めてだった。




