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シロクマと逆ハーレム



 ユティアーム殿下は前に来ると膝をつき、私を見上げる。

「スズ、勝手で強引な方法で怖い思いをさせて、申し訳ございませんでした」


 事情を知ったらもう怖いとは思わない。

確かに勝手で強引ではあったが。


「立ってください。もう大丈夫です」

「僕は廃嫡してもらいます。それだけのことをしてきました。あとは弟たちに任せます」


 そうくるとは思わなかった。

抱いている紺クマが、体を強張らせたのがわかった。


「全てが解決したらまた会ってもらえますか?」

 と続けて言う。


「……後悔はないですか?」


「はい。スズのおかげで踏ん切りがつきました。

 帰国してすぐに国王様に相談します」


「……私もご一緒します」

 ずっと無言だった紺クマが口を開いた。


「ギルバートの声がする。ここに……?」

 私は紺クマと出会い、クマになった経緯を説明した。


「そっか、私は無意識でギルバートに助けを求めていたのかもしれない。躊躇いが消えなかったんだ」

 良かった、ありがとうと小さな声で言った。


 

 聞こえたのか聞こえてないのか、紺クマは元に戻るために部屋の隅に行くと「スズ様、こちらへ」と私を呼んだ。


「きっと知っていたほうがいい、そんな気がする」


 クマは携帯電話で願いを叶える方法を、教えてくれるらしい。

その方法はメールに書いて送信するだけ。

ただし、これも無限ではなく聖石と同じように力が溜まっていないと使えない。


 あとどうしても気になっていた、あの検索サイトはカリストス王国の王族たちの情報共有に使われているそうだ。


 私が見れるということは、同じ機能を持っているかもしれないという。


 試しに私のスマフォで元に戻すメールを送ってみることにした。


――ギルバート殿下をクマから人間に戻してください


 そう入力すると宛先は入れずに送信ボタンを押す。




ーーが、何も起きない。

エラーが出ずに、送信できたのに。


「うーん、これはまだ完全に携帯電話になった訳ではないのかもしれない。力が足りない場合はエラーになるはずだ」


 紺クマはしばらく考え込むとそう言う。


 完全な状態じゃない?

もう私が使用していたスマフォではなくなっているが、まだ変化の途中ということ?


 手元のスマフォに視線を落とす。



 そういえば、こんなクマついていただろうか。

本来なら電波マークがある所にクマが5個並んでいる。


 この間までは4個だったはず。

だから電波マークだと思っていたのだ。


 ……。

 深くは考えないことにしよう。


 ギルバート殿下は自分の携帯電話で姿を戻していた。


 皆のところに戻ると、なにか言いたげにこちらを見る。


「スズは、ギルバートと仲が良さそうだけど異性として見ているんですか?」


「い、いせい?

 まだ15歳でしたよね?」

 8歳も年下だ。大人びてはいるがさすがに……。

後ろのほうで噴き出すような笑い声と、ゴンっと鈍い音がしたが気にしない。


「その反応に安心しました。

 どうかお気になさらず」

ユティアーム殿下はそう言って笑う。 


 なんで皆私の異性関係を気にするのだろうか。

あ、救国の乙女になれば複数人と結婚できるから、利用しようとしているのか。

そう思い至ると、悲しくなった。


 顔に出ていたのか、陛下がこちらにやってくる。


「スズ、私は違うからね。

 大切に思っているだけだよ」

 そう言ってくれるが疑心暗鬼になる。

救国の乙女だから大切なのかもしれない。


「はい、ありがとうございます」 


 私の気持ちが伝わったのか、陛下は悩むような顔して俯くと、しばらくして顔を上げる。



「ねぇ、スズ。彼が戻ってきてから言おうと思っていたのだけれど……私はスズが愛しくてたまらないみたい」

 ……愛しい!?それは恋愛的な意味でという?

急にそんなことを言われて頭は疑問でいっぱいだ。

そんな私に構わず陛下は続けた。


「救国の乙女になるのならば、諦める理由もない。

 本気でスズを愛してもいい?」


 99%の人が頷くような威力があった。

どう頑張っても赤面する言葉に、陛下の美貌が加わるともはや抗えない。

どんな顔をしているのか、知りたくない。


「私!レオン様を呼んできます!」


 叫ぶように言うと、一目散に部屋から逃げる。

後ろでそれぞれの声が聞こえたが、今は無視することにした。





 護衛騎士を引き連れ、桜様の部屋までの道を急ぎ足で歩く。


 やましいことはないが、気持ちが落ち着かない。


 部屋の前に着くとノックをして「レオン様いらっしゃいますか」と声をかけた。



 すぐに部屋の扉が開いて、逃げるようにレオン様が出てきた。

顔色が悪い。なにがあったんだろうか。

桜様は反対に嬉しそうに頬を高揚させている。


「スズ様、いきましょう。失礼いたします」


 レオン様は挨拶をするや否や、扉を閉めて急いで部屋から離れた。



「……なにかございましたか?」

 いつも冷静沈着なレオン様が珍しく取り乱している。


「桜様が、私は桜様と婚姻するのだと。

 未来がわかっているとおっしゃって。

 他5名の夫ができると。誰か聞いたら落ち着いてはいられませんでした」


 逆ハーレムのことを聞いたらしい。


 何度も思うが、好意を持ってもらうには逆効果ではないだろうか。


 しかし、他5名……。

ヴィルと陛下は私が好きだと言っている。

そうしたらどうなるのだろう。


 ラノベのストーリーが変わることなんてあるだろうか。強制力が働いたりしないのだろうか。


 ふたりが桜様を挟んで並ぶ姿を想像してしまう。

なんとなくモヤモヤする。

好きだと言われて少し嬉しいと感じたからだろうか。



「レオン様は、桜様と結婚したいと思っているのですか?」


「いえ。あのように浅慮、浅薄なのは困りますし、好みでもありません」


 はっきり否定されてしまった。

これからどうなっていくのだろう。


 ユティアーム殿下は廃嫡してもらう、と言っていた。それもストーリー通りなのだろうか?

その後どうなるのだろう?

内容を知らない私には想像がつかなかった。



 レオン様を連れて応接間に戻ると、部屋はなんだか賑やかだった。

陛下とユティアーム殿下が言い合っているらしい。


 ギルバート殿下の顔はうんざりしていて、同情してしまう。スイさんは面白がっているようだ。


「レオン、おかえり。どうだった?」

 どうだった、とは。陛下はまだ嫌いなのだろうか。


「怖い話を聞いてきました」

 そう言えば、陛下は聞きたがる。

元々話すつもりだったのだろう。


 レオン様は、陛下とレオン様、ヴィルとカイル、ユティアーム殿下とセルゲイ殿下が、桜様と結婚する。

その未来は決まっているらしい、と話す。


「あり得ない話だ。何があってもそれだけはない」

陛下は言い切った。やはり嫌いらしい。

一体なにをしたらここまで嫌われるのだろうか。



「しかし一応救国の乙女でありますし、無視できない情報です」

 レオン様、一応とつけては駄目だと思います。

私も不安になってしまいます。

そう、心の中で呟く。


「桜と婚姻は、したくないですね」

 そんな言葉を発したユティアーム殿下を、驚愕の顔で見てしまう。

いきなり爆弾発言だ。婚約者だったはずでは?


「僕と性格が合わないんですよね」

 ……確かにずっと周りに気を遣っていた。

煩わしくなってしまうかもしれない。


 そうなると、今のところ誰とも恋が始まっていない。


 ヴィルとカイルはわからないが。

やはりストーリーが変わっている?

それともこれから始まる?

私はどう行動するのが正解なのだろうか。

 



「スズ、私はスズ以外に心を奪われることはないと断言するよ」


 今は他のことを考えて不安な表情になっていたらしい。

陛下の突然すぎる発言に思わず赤面した。

レオン様はここでのやり取りを知らないので、一体なにが、と呆然とこちらを見ていた。


「……陛下はたくさんの人の心を奪っています」


「その中にスズは入ってないんでしょう?」


「……まあ、綺麗だとは思いますが」

そうくるとは思っていなかった。

陛下はいいところばかりで尊敬はしている。

だから至近距離で目を見つめるのはやめてほしい。

恥ずかしくなって目をそらす。


「ふふ、その反応をしてくれるなら、この顔も案外悪くないね」

 そう言った陛下の緩い微笑みに、私は目を奪われてしまった。




 




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