表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
20/137

海と私とクマ

 

 


 ふと、夜中になぜか目が覚めてしまった。

もう一度寝ようと目を閉じると、ヴィルが呟きが聞こえた。


「スズ、好きだ。

 だからしっかり男として見てくれ……」


 好きだ、とは前にも言われた。

男として見てほしい?見てるつもりだった。

馬に乗っている時も、背中にあたるヴィルの体が鍛えられていて、男の人なんだと思ってドキッとした。


 さっき夜道を歩いた時も、怖くて服を掴んで離れられなかったのでいつもより近かった。

横に並ぶとヴィルは身長が高くて男らしくて、心臓がうるさかった。

暗い道の恐怖でなのか、それはわからないけど。



 ……好きとはなんだろう。

ドキドキしたら?一緒にいたいと思えば?

経験がないため、わからない。

どうなれば、好きだとわかるのだろうか。

友情と恋愛の感情の違いもいまいちわからない。


 こればっかりはヴィルにも聞くことはできない。

私にもいつかそれがわかる日がくるのだろうか。

今の私にはまったく想像ができない。


 そんなことを考えているうちに、寝てしまっていた。





 朝になり、身支度をする。

昨日もらった緑色のリボンをしっかりつける。

練り香水を見ると、ヴィルにつけてもらったことを思い出し恥ずかしくなった。


 朝食はヴィルが食堂で買っていたパンを食べる。

とうもろこしとバターが練り込んであるようだ。


「これくらい簡単にわかればいいのに」

パンは食べたら中身がわかるように、人には誰かを好きになればわかる機能がついているといい。

矢印がでるとか……。

昨日の夜のことが頭に残っていたのか、ポツリと呟く。


「どうした?」

 ヴィルが心配そうに聞いてくる。

「なんでもないよ」

 そう言うとそれ以上聞かれないように口にパンを詰め込んだ。



 朝食がおわり、一息つくと街にでる。


 街中には塩や、海産物の他にもよその国の商品を扱うお店もある。

交易が盛んというだけあり、様々な商品が並んでいた。

見て歩くだけで、楽しめる。


 街を歩きながら、昨日見なかった海の方に向かうことにした。

石畳の上をヴィルと一緒に歩くと夜道を思い出し、ふとヴィルを横目で見る。


 髪は光を浴びて、黄色味が強くなっている。

部屋の中で見ると黄色っぽい茶髪だと思ったが、外に出るとハニーブロンドのような金髪に見える。

瞳も綺麗なエメラルドだし、背も高い。

180センチくらいあるだろうか。


 スラっとしているのに筋肉も理想的についているから、なにを着ても似合う。

目鼻立ちもくっきりしているし、お肌ツルツル、地位もある。

これは、さぞおモテになるだろう。



 先程から女性の視線を感じるのは、ヴィルのせいだったようだ。

特別な事をしなくても、絵になる。


 そんなことを考えているとは思っていないヴィルは、怪訝な顔をしてこちらを見る。


「眉間に皺寄せてどうした?」

その言葉がショックで、眉間に手をやり、皺をのばそうとする。

「ヴィルはどこをとっても格好いいなと」

「は?」

「優しいし。結婚する人は大変そう」


「……」

今のは失言だった、一瞬で不機嫌になったことに気づいた。


「で、でもヴィルと結婚したら、大切にしてくれて毎日楽しく過ごせそうだね」

フォローになっているだろうか?

なんとも怪しい気がするが、これ以上でてこない。



「スズは、どんな男が好みなんだ?」

ヴィルがこちらを見つめて、真面目な顔で聞く。

「どうだろう?今まで好きになった人はいないから、わからない」

恋愛とは無縁で、好みなど考えたこともない。


「では、どんな人と婚姻したいと思う?」

「うーん、私を大切にしてくれる人。

一緒に楽しんでくれる、優しい人がいいな。

……なんかヴィルみたいだね」

 当てはまっちゃった、と笑いながらいうと。



 先程まで立っていたはずのヴィル、は海の側の石段に座り込んでいた。


「ごめんなさい、無神経だった?」

「違う、ホッとしたんだ。私とかけ離れた条件を言われたら流石に凹んだ。しかし、それなら私にも可能性があるということだろう?」


 そう言ってヴィルが嬉しそうに笑い、優しい目で見つめられると、心臓がなんだか変な音を立てたような気がした。



 ふたりで海を眺めながら、笑い合う。


 太陽で海はキラキラと輝いていて、今まで見たどの景色よりも綺麗だと思った。

写真では写らない、このキラキラと幸せな瞬間を忘れないように目に焼き付ける。




 こちらに来てから私は私でないような、そんな気分になる時がある。

今までの私とは違い、周りには人がいる。

あちらの世界では叶わなかった、夢にまで見た楽しい日々。

毎日が楽しくて、あっという間に過ぎていく。

夢か現か、わからなくなる。

ただ、私はこの幸せを失くしたくない。

守りたいと、そう強く思った。







 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ