表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
16/17

+エピローグ

「なーんか後味の悪い事件だったね」

 通が思い出したように、そう言った。事務所の自分の席に座って仕事をしていた真言は、顔をあげて通を見やる。

「ですね。でも、皆ひどいですよ。毒のこと、僕に教えてくれないなんて」

「まーだ言ってんのか。根に持つタイプはやだねー」

 清吾は珍しく、パソコンに目をやりながら声を上げる。

「いいですよ、別に。どうせ僕は根に持つタイプですよ」

「あはは、マコちゃん認めちゃった」

「ほんとにな。おっと、王手かよ」

 通の隣の席で、清吾が声を上げた。どうやらパソコンで仕事しているのではなく、またゲームをしているらしい。

 真言は立ち上がって清吾のノートパソコンを閉めてやった。

「ああ、何すんだ真言、手挟むだろ。手!」

「あはは。マコチョン偉い」

 通が拍手してくれる。

「何が偉いだ。もう少しで終わるところだったに」

「仕事中に遊ばないでください」

 真言は腰に手をあてて清吾を睨んだ。

 そんな真言の隣の席から、声が上がる。

「真言君の言う通りだぞ清吾。それに負けてたんだろう将棋。いいじゃないか」

 その声に顔を向けた真言は眉を寄せたまま、その相手に言った。

「芳郎さんもです。何でいつもそんなふざけた格好してるんですか」

 せっかくかっこいいのに。そのセリフは胸の中だけで言っておく。

 真言の目に映る芳郎は、ウサギのパジャマを着ていた。ご丁寧に耳のついたフード付きのものである。しかも、色はピンクだ。百八十近い身長の男が着るものではないだろう。しかもサイズはピッタリ。いったいどこで買ってくるのだろうか。

「いいじゃないか。可愛いんだから」

 無類のかわいいもの好きである芳郎は、そんな風に文句を言った。芳郎の机の上には、可愛らしいぬいぐるみや、ファンシーグッズが置いてある。今使っているボールペンにはハートのストラップがついていた。

「仕事しにくいでしょう。依頼人が来たらどうするんです」

「隠れるんだよね。芳郎」

 通がフォローするように言ったが、ちっともフォローになっていなかった。

 清吾は、言われてやんのと笑い転げている。

「清吾さんも笑ってないで仕事してくださいっ」

 真言がそう叫んだときだった。

 隣室のドアが開き、茉莉が顔を出した。

「真言、何騒いでるの?」

 不思議そうな顔をしている茉莉に、真言はだってと口をもごもごさせた。

「姉さん、何でこんなメンバーばっかり集めたの?」

 思い切って聞いてみた。

 茉莉は驚いたような顔になり、一同を見回した。

「あら、言ってなかったっけ?」

「マコプー、こんなって言い方なくない?」

 通が苦笑の色を浮かべて、真言を見る。

「通さんも、どうして僕だけへんなあだ名つけるんですか? みんなは普通に呼んでるのに」

 抗議するように言うと、清吾が声を上げた。

「俺らも変なあだ名つけられてたよな、芳郎」

「ああ、俺は何だっけ、ヨシヨシとか? ヨシくん、ヨッシーとか。あと、よっちゃんの後はイカだったっけ。中学の頃ブームだったよな。通の」

 そう、芳郎が言えば、茉莉も思い出したと手を打った。

「そうそう。私はマリーアントワネット」

「それは、お前が無理やり呼ばせてたんだろうが」

 茉莉の発言に、清吾が突っ込みを入れる。

「ちょ、ちょっと待って。中学の時って、みんな中学の頃からの知り合い?」

 茉莉の顔を見て聞くと、茉莉は大きく頷いた。

「そうそう。中高と同じ学校でね。全員演劇部に所属してたのよ」

 そんなの知らなかった。茉莉が中学生の頃は、真言はまだ幼稚園にも通っていないし、聞いていても覚えてはいなかっただろう。

「皆のあだ名つけるのは、飽きちゃったから、最近は普通に呼んでるんだよ」

 通が先ほどの真言の問いに答えるように言う。真言は大きく肩を落とした。

「そう、だったんですか」

「そうそう。そのうち、真言の呼び名も落ち着くって。どうせ、通はすぐ飽きるから」

 清吾が、真言にそう声をかけた。

「さ、皆。それより仕事よ」

 切り替えるように、茉莉が声を上げた。通がそれに反応する。

「どっちの?」

 そう聞いた通の眼が、どこか輝いているように見えるのは、真言の気のせいだろうか。

「もちろん+プラス探偵事務所の方よ」

 茉莉はそう言って鮮やかな笑みを浮かべた。

「さあ、みんな忙しくなるわよ」

「了解」

 茉莉の声に四人一斉に声をあげた。



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
cont_access.php?citi_cont_id=306009379&s
ランキング参加しています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ