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+プロローグ
弁護士は二人の若い男性を連れてきた。やけにハンサムな背の高い男と、頼りなさげな感じの青年だ。
遺言発表の場に、なぜこの二人を弁護士が連れて来たのか。この屋敷の大広間に集まった全員が疑問に思っていた。
初老の弁護士は、彼らの疑問に答えるかのように口を開く。
「こちらは、亡くなった彩香さんのご友人と元婚約者です」
弁護士の発言に、場は騒然となった。
弁護士は紹介を終えた二人を席に座らせ、こう言った。
「遺産はすべてこちらの婚約者に渡されます」
弁護士が口を閉ざすと、静寂が辺りを支配し、部屋中の視線が一気に婚約者に向いた。