7、黒い湯気
紗弥華に危険が迫ります。
読んで頂けると嬉しいです。
それから、昼食を挟みながら王宮を色々案内してもらった。
王宮は予想以上に広くて、1日では全ては回れないそうだ。
なので、近場の所を案内してもらった。
夕方になり、王宮主要人を集めた歓迎会が開かれた。
豪華な料理が並べられた立食パーティーには、アランと美香も姿を現したが、アランの表情はどこか険しかった。
次々に挨拶に来る主要人に、紗弥華は目が回りそうだった。目の前に美味しい料理があるのに、食べる暇がない。
1通りの挨拶が終わると、シューウィルは近衛兵と会場の隅で何やら話しをしていた。さすがに紗弥華も少し疲れてため息をついてしまった。
「サヤカ様、大丈夫ですか?」
メリッサが隙を見て側に来てくれた。そしてお茶の入ったティーカップを差し出してくれた。
「ありがとうメリッサ……」
しかし、ティーカップを受け取ろうとした紗弥華はぎょっとした。お茶の湯気が黒くなっているからだ。
(これも黒の気なの……?)
「……良い匂いね。新鮮な茶葉を使っているの?」
「はい!収穫してすぐの葉を使ったハーブティーにございます」
(じゃあ、これは葉の不良でない。だとしたら……)
「サヤカ様?」
異変に気付いたシューウィルがこちらへ戻ってきた。
「紗弥華様、どうかなさいましたか?」
「色が……湯気の色が黒いの。新鮮な茶葉のはずなのに……」
シューウィルは紗弥華の言いたい事をすぐに把握した。
「メリッサ。このお茶は誰が入れた。」
「えっ。はっはい。確かハリスに頼みました」
それを聞いて背筋がゾッとした。みるみる顔色が青くなる紗弥華の肩をシューウィルは掴んだ。
「飲んでないんだな?」
紗弥華は無言で頷いた。
「メリッサ、このまま紗弥華様を部屋にお連れしろ。落ち着くまで側にいてやってくれ。誰も部屋にいれるな」
「はっはい!」
「近衛兵、急いでハリスという侍女を見つけ出して拘束しろ。私は両陛下に伝える」
シューウィルは周囲に正確に指示を出し、震える紗弥華と目線を合わせる為姿勢を下げた。
「私もすぐに部屋に行くから、気をしっかり持つんだよ。紗弥華は必ず私が守るから」
「はい……」
私は部屋に戻りながら、メリッサに、自分の魔力の事、ハリスの事を話した。メリッサは驚いていたが、一緒にいてくれると言ってくれた。
部屋に着くとどっと疲れが出たのか一気に身体が重たくなった。
「サヤカ様、楽な服に着替えましょうか。」
メリッサはシンプルなワンピースをクローゼットから出してくれた。
しかし紗弥華は目を疑った。メリッサの持つワンピースから黒い気を、放っていたからだ。
「メリッサ。ダメ………それ……」
紗弥華は酷くなる目眩に我慢できず、そのまま倒れてしまった。
「サヤカ様!?」
紗弥華の記憶はそこで途切れた。
するとメリッサも目眩がしたかと思うと、その場に倒れてしまった。
読んでいただいてありがとうございました。
次回は話が大きく転換していきます。次回も読んでいただけると嬉しいです。