緑色の制服
再びアステールに来た紗弥華の再会を書きました
夏休みになり、沙弥華は再びアステールを訪れた。
両親の存在も顔もだいぶ見慣れてきたのか、前のような恐怖心はなかったものの、沙弥華まだ両親との距離感を掴めないでいた。
「お久し振りです。国王陛下、王妃陛下」
祭壇から降りた沙弥華が挨拶すると、アランが答えた。
「元気にやっていたみたいだな」
「はい。無事に夏休みを迎えられました」
美佳も沙弥華との再開を喜んだ。
「今回は長く滞在できるようだから、ゆっくりしていってね。何か困った事があったらすぐ言うのよ」
「はい。お気遣いありがとうございます」
私は会釈をして後ろに控えていたメリッサに駆け寄った。
「メリッサ!元気だった!?」
「はい!サヤカ様もお元気そうで!」
久し振りの再開にはしゃぐ2人を微笑ましく見つめた後、美佳が言った。
「すっかり仲良くなったのね。メリッサ、サヤカをお願いね」
「かしこまりました!」
メリッサが元気よく返事をしたのを確認するとアランが言った。
「私達は仕事に戻る」
沙弥華の横に控えていたシューウィルも続けた。
「わたくしも所用がありますので、少し席を外します。後程、部屋にお邪魔させていただきますがよろしいでしょうか?」
「はい。もちろんです。しゅうさんお忙しいのに、迎えに来てくれてありがとうございました。」
「いいんですよ。私が迎えに行きたかったのですから」
しゅうが笑顔を見せると、両陛下は目を見開いて驚いていた。
沙弥華はメリッサと部屋に戻り、着替え用の服を選んでいたしていた。
前回帰る前に、ドレスではなくもっとラフな服装がいいと頼んでおいたら、メリッサは品のよいワンピースを何着か用意してくれていた。
私は薄いピンクのワンピースを着ることにした。
そして着替えながらメリッサに聞いた。
「しゅうさん、本当に大丈夫だったのかな?仮にも、陛下直属の執事で長なんでしょう?」
「はい。ですので、ここ数週間は鬼のように仕事をこなされていました。サヤカ様をお迎えに行く時間を作るため、仕事を調節していたんだと思います」
「そこまでして…」
「サヤカ様を大事にされている証拠ですよ。」
噂をすると、ノックをしてシューウィルが部屋に入って来た。
「紗弥華様、よろしいでしょうか?」
「しゅうさん、大丈夫です。今着替え終わったところです」
「今日の服装も似合います。まるで、透き通った海にいる人魚のようだ」
「ありがとうございます」
饒舌に私を誉め称えるシューウィルにガルダン隊長は咳払いをして合図をした。
「すまない。どうぞ入りなさい」
「隊長!……と……ハリス?その格好は……」
すっかり顔色も良くなり身体つきもしっかりしたハリスは、団長と同じ、緑色の近衛隊の制服を着ていた。
団長は、深々と頭を下げ、報告した。
「ハリスを近衛隊の一員として認め、サヤカ様の専属護衛の任務にあてる所存にございます」
「本当ですか!?」
「国王陛下とサヤカ様の命により、ハリスを見ました。彼女は凄い。粗っぽさがあるが、とてもいい筋をしている。この1ヶ月訓練で、彼女は、屈強な近衛隊の10人の兵を打ち負かしました。」
「ハリス!凄いじゃない!」
「凄いのはあなた様です、サヤカ様。手を見ただけで、彼女の素質に気付く、洞察力。御見逸れ致しました。以前の、傲慢な態度をどうかお許し下さい」
「たっ隊長!頭を上げてください!私はハリスの素質に気付いたわけではありません。剣術には、長い鍛練が必要な事を知っていたからです。きっと、手にまめを作るぐらい、ハリスは鍛練をする強い気持ちがあると思っただけなんです」
「それに気付くのが、あなた様の凄いところなのです。いい人材を近衛隊に招いて頂いてありがとうございます。困った事があれば、いつでもお呼びください。必ずお力になります。」
「ありがとうございます」
「ハリスもこれからよろしくね」
「何なりとお申し付け下さいませ。必ずこの命にかけてあなた様をお守り致します」