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 第三の大陸で、初めて見つけた町に滞在する事となった僕たちは、リリィお姉ちゃんやまふにゃんが感じた違和感の正体を探るべく、町の人に聞き込みを開始した。


 まふにゃんは、のんびりと余生を過ごしている老婆へ近況を聞いた。


「いやぁ~、何も変わった事はないねえ」

「そうかにゃー。ありがとにゃ!」

 しかし、何の情報も得られなかった。


 次に僕は、町を見張っている軽装の兵士に近況を聞いた。


「ごめんねボク。そういう話はお兄さんは知らないなあ」

「そうですか……。ありがとうございました」

 しかし、何の情報も得られなかった。


 さらに次にリリィお姉ちゃんは、酒場から出てきた男の人に近況を聞いた。


「うひょお! すげえ別嬪(べっぴん)さんだ! 格好もすごいし……。ハァハァ……」

「…………」

「おおっとすまない! 特に何も聞かないなー」

「ありがとうございます」

 しかし、何の情報も得られなかった。



 結局なにも得られなかった僕たちは、休憩のために町の広場へ行き、そこにあったベンチに座った。


「うーん、何もなかったね」

「うにゃー! みんなヘンにゃー!」

 お姉ちゃんも、まふにゃんもとても残念そうだ。


「…………」

 でも、僕にはやっぱり分からなかった。

 二人の言う違和感って一体なんだろう?


「おい、グズ!」

「おっせーな、早くしろよ!」

 そんな中、広場の入り口から子供たちの声が聞こえてきた。

 だが、その口調はとても荒々しく乱暴で、可愛げがまるでない。


 僕はそんな発言を気にしつつ、暴言を投げかけられた先を見た。


「あはは、待ってよみんなー」

 そこには、笑いながら子供たちについていくクスクスちゃんが居た。


「あれって、クスクスちゃん?」

「そうにゃ。間違いないにゃ」

 最初は僕の見間違いかとも思ったけれど、お姉ちゃんもまふにゃんも気づいている。

 でも、どうしてあの子が?

 何をしているんだろう。

 そう思っていた時だった。


「はぁっ……、はぁっ……」

「あのさー、遅いんだけど?」

「早くしないと間に合わないだろうが!」

 乱暴な言葉使いの少年たちは、息を切らせてすっかり疲れきっているクスクスちゃんへ、心無い言葉を浴びせ続ける。


「ご、ごめん! でも、みんなの荷物持ったままだときつくって」

 彼女の言うとおりだ。

 自分のも含めて、三人分の荷物を抱えて走るなんて無理だ。


「だからお前は残って荷物番しとけって」

「別についてこなくていいから!」

「や、やだよう。あたしも一緒に行きたいもん」

「もういいから! なんで友達でもないお前と一緒に居なきゃいけないんだ?」

「荷物番するって言うから、俺たちと一緒に居させてやったのに! 使えないやつ!」

 この場面……、やっぱりそうだ。

 僕はこの風景を知っている。


「こいつ無視していこーぜ!」

「そうだなー」

「あっ、待ってよ!」

 どんなひどい扱いをされようとも、少年たちについていくクスクスちゃんの気持ちを察した僕は、胸が締め付けられるような苦しさを感じた。

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