384
僕は腕の端末を交番に届けると、すぐさま紹介を受けた探偵事務所がある場所へ向かった。
「ほおほお……、ここか」
そこは、意外にも表通りに面しているオフィスビルの一室だった。
前に行った場所と比べればかなり明るく、建物自体もおしゃれですごく入りやすい印象を受ける。
すりガラスの自動ドアには、斎藤探偵事務所と書かれている事から、場所は間違いないはずだ。
僕は自動ドアを抜けていき、中へと入っていく。
「いらっしゃいませ、どのようなご用件でしょうか?」
受付のカウンターには、感じのいいお姉さんが座っていて僕に話しかけてきた。
僕は彼女の気さくさにつられて、相談内容を告げようとしたが、慌てて空いていた手で口を塞いだ。
いやまて。
もしもこの人がアンドロイドだったら、リリィお姉ちゃんの事は言えないよな。
ならば……。
「探偵の田中さんからの紹介で来ました、山田です」
これならどうだ。
あそこまで気を利かせてくれた人なら、話くらいは通っているはず。
「はい山田さんですね。お話はうかがっております、一番右端の相談室に入りおかけになってお待ちください」
「ありがとうございます」
僕の予想通りだった。
本当、助かる。
……いや、もしかしてこれって史上最強のスキルを使ったからかな?
だとすると迂闊にお願い出来ないな。
ともかく、行ってみよう。
僕は用意された部屋へ向かった。
部屋に入った時、受付のお姉さんへの対応があまりにも固かったのを思い出した僕は、少し不安になったけれども探偵に相談出来ると思うとそちらの気持ちの方が強くなった。
「こんにちは。斎藤です」
部屋に入って間もなく、探偵の人が入ってくる。
紹介してくれた田中さんとは違い、ぴしっとスーツを着こなしたいかにもやり手な感じがする男の人だった。
「山田さんの事は聞いております。リスターは大丈夫ですか?」
「はい」
僕は両手首を見せて、端末がついていない事を見せると、探偵の斎藤さんは何も言わず頷いて机に座り、持っていたノートパソコンのようなものを広げた。
いよいよ、リリィお姉ちゃんの事が聞ける……!




