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「…………」

 女は再び書類になにやら書き始め、こちらを一切見ようとしない。


「あの……」

 もう一度、俺は声をかけた。

 だが、その呼びかけにもまるで反応が無い。


 こんな傲慢なクソビッチがそんな偉い存在であってたまるか。

 だいたい、どうして俺がこんな待遇なんだ?

 さっきのチャラ男とまるで違うじゃないか!

 クソむかつく……、このクソアマめ……。


「何ぼっとしてんの? 気持ち悪いんだけど(ワラ」

 今なら、神すらも恨み殺せるくらいの怨恨の念を抱いていた時だった。

 今まで自身の仕事をしていた女がこちらを向くと、鼻で笑いながらそう話してくる。


 な、なんなんだこいつ……!

 確かに俺はブサイクで気持ち悪いけれどもよ!

 態々言わなくてもいいだろ、この……!


 いや、待ておちつけ。

 この場所や今の状況を考えろ。


 銀行に二人しかいないとかおかしすぎるだろ?

 てかそもそも、本来ならこういう緩いビッチは俺なんか相手にしないはずだ。


「決めるって、自分で決められるのか?」

 俺は冷静になって、自分の置かれた状況を理解するため、女に再び質問をした。


「だからそぅいってんぢゃん? 頭悪すぎ(ウケル」

 だが返ってきた答えを聞いた俺は怒った。


 くそ、こいついちいち腹立つ。

 もう知らん、神だろうが何だろうがこのクソ女をどうにか悔しがらせてやる……。


 俺は考えた。

 こいつが困るような事を考え抜いた。


「……お、おおお前を来世に連れていく!」

 そして俺が出した結論は、この傲慢なビッチごと俺を転生させるという内容だった。


 そうだ、俺が昔に読んだ本だと、異世界に転生させる女神を巻き込んだ奴があったはずだ。

 よしよし、こいつを俺による俺の為の世界へ連れて行って、チョロインにしてやるぜ。

 そして面と向かって、こいつをフってやれば……。


「はぁ? 聞こえなかったんだけど?」

「だ、だから、お、おおお……」

「あ? お前って誰の事いってんの?」

「いや、その……」

「どもってんじゃね→よ童貞君www、そんなん出来るわけないぢゃん?(ワラ ラノベばっか読んでるから頭ゎるくなったんじゃなぃの?」

 俺は泣きそうになった。

 散々ボロッカスに言われたり、この女の強気な態度にビビッてしまったり、それら以上に自分の考えが全てお見通しだったという事に、人生最大の屈辱と恥をかいたのだ。


「だいたいさ、お前の前世があまりにも可愛そうだったから同情してやったのにさ、なんなん?」

「…………」

 もう俺には、この憎たらしい女にどうこうする術は無い。

 こいつの言うとおり、俺みたいなクソが逆らおうなんて土台無理な話だったんだ。


「あのさー、あんましメンドクサイ事ばっかいうと、来世ハエとかゴキブリとかにしちゃうょ?」

「わ、解った! 真面目に考えるから!」

 だが女は俺に落ち込んでいる暇すら与えてくれない。

 害虫への転生を言われた時、俺は生理的に嫌悪すると即座に新たな望みを考えようとした。


「……史上最強」

「ん? もっかいちゃんと言えよー。他人にも解るように伝えるって習ったでしょ? そんなのも出来ないとかまぢないわ」

「史上最強で最高のスキルがある状態で転生させてくれ!!」

「はぁ?」

「今までのフィクション作品で出てきたどんな能力よりも強く、優れていて、何者にも負けず、何者にも侵されない、誰からも羨望され、そして慕われて、そんな人間に生まれ変わりたいんだ!」

 そして考え出した答えを、涙を流しながら大声で告げた。

 ラノベだろうが何だろうがもうどうでもいい。

 俺ばっかり損な思いをするのはもうたくさんだ!

 こんな最悪な自分から逃げられて、勝ち組で楽しい人生が送られればそれでいい!


 はぁ、でもどうせこれも無理なんだろうな……。

 来世は害虫か……、まぁ今までも似たようなもんだから別にいいのかな……。


「いーょ」

「えっ?」

「じゃ、手続き終わったから、そっちから出ていって」

 正直意外だった。

 さっきみたいに童貞だのボロ糞言われて、害虫直行コースだと思っていたのに、女は何の迷いも無く了承したからだ。


「バイバイ~」

 本当にその通りになったのか?

 絶対にはめられている気がする……。

 結局、この場所の事もあの女の事も聞けなかったし……。


 俺は心の中が様々な疑問を解消出来ずに燻りながら、女の指示した扉を開ける。

 すると、目が眩む程の光に包まれていき……。

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