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「能力は一つになったのに、どうして記憶は元に戻らないのかなって」

 それは僕も気にしていないわけではなかった。

 何故記憶だけは戻らなかったのか?

 今だに空白なのかと……。

 僕でもそう思っているくらいだから、リリィお姉ちゃんは余計気になるんだろう。


「第四の大陸で、マキナちゃんは魔王の存在を知っていたよね」

「うん」

「そうなると、魔王は他の大陸にも行っていた……って事だよね」

「そうだね」

「もしかしたらだけども、こうなる事を予想していて、記憶だけ別の場所に置くようにしたとか……だったらどうかなって」

 お姉ちゃんはとても思慮深い。

 だから魔王もそうだと思うし、こうやってお姉ちゃんが考えつくって事は、実際にやっている可能性は高い。


「そんな事出来るの?」

「私は出来ないよ。でも、他の転生した人の力を借りていたら……」

 魔王の意志に賛同して率先して協力する人が居るかどうかは微妙だけども。

 従わせるだけならユッコでやったようにすればいいからね。


「私は自分の記憶を見つけたい」

「お姉ちゃん……」

「見つけないといけないような気がするの。このまま放っておいたら、取り返しのつかない事がおきそうで……」

 それでも、そこまで必死になる必要はあるのかな。

 確かに気になるし気分のいいものではないかもしれないけど、取り返しのつかないって言うのは大げさな気がする。

 それに……。


「もう、いいよ」

「えっ」

「僕やまふにゃんやクス子やミャオと一緒に、みんなで静かに暮らそうよ」

 僕はお姉ちゃんの目をしっかり見て、はっきりと告げた。

 普段は意志薄弱で優柔不断な僕が、ここまで明確に伝えてくるとは思っていなかったのかな?

 お姉ちゃんは困った表情になりつつも、その顔には驚きと戸惑いもあった。


「…………」

 だけど、お姉ちゃんのそんな顔には、たちまち悲しみが広がっていった。

 僕はお姉ちゃんの気持ちを否定した事を察すると、とても申し訳ない気持ちになったが、それでも離れて欲しくないという気持ちの方が強かったのか、じっとお姉ちゃんを見つめ続けた。

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