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僕はクス子と共に、倒れたミャオを介抱するため近寄ろうとした時だった。
「おいらの魂、この一撃に注ぎ込むッ!! 唸れ! 轟け!」
まふにゃんが拳をぐっと強く握り、大きく振りかぶりながらトリスタンへと駆け寄り……。
「そして、慄き跪けぇぇぇっっっ!!!!」
そう叫びながら、無防備のトリスタンめがけて、自身の拳を突き出した。
トリスタンの胸にまふにゃんの拳がぶつかり、大きな衝撃波が発生する!
近くに居た兵士の一部は吹き飛び、おさまっていた砂煙が再び巻き起こった。
あの一撃は、第二の大陸でケガレ巨人を葬った時と同じ攻撃だ。
さっきのミャオの攻撃はきっとまぐれに違いない!
今度こそ……、今度こそ……!!
「何度やっても無駄だって、馬鹿じゃないのお前ら?」
「あ、当たったにゃ! どうしてにゃ!!」
だが、僕の願いは無情にも叶うことなく、砂煙がおさまるとミャオの時と同じくトリスタンはまふにゃんの背後に立っていた。
「オラァッ!!」
「ぎにゃああ!!!!!」
そして、同じように大きな何かをぶつけられたみたいに、まふにゃんも大きく吹き飛ばされてしまう。
まふにゃんは悲鳴をあげながら地面を幾度もころがり、止まった時は全身傷だらけになっていた。
「まふにゃん!!!」
「ハッ、どいつもこいつもほんと雌は頭が悪いわ。お前らは大人しく俺に犯されていればいいんだよw」
一体何をしたのかまるで分からない。
ただはっきりとしている事は、僕の史上最強のスキルは発動していないという事と、窮地に陥ったという事だ。
「さて童貞君、次はどうすんの?w」
「く、くそう……」
何故だ、どうして史上最強のスキルが発動しない!
今この瞬間!
一番大事な時なのに!!
「ギャハハハハ、マジウケるwww」
こんなクズ野郎、のさばらせていたらいい事なんて一つもない。
こいつだけは、こいつだけはここで倒さないといけないのに!
なんでだよおおお!!!!
「おい! その子らを捕まえろ! 俺の新しい雌犬だから大事に扱えよw」
「や、やめろ……!」
周囲で様子を伺っていた兵士は、トリスタンの指示があるとぼろぼろになった二人や治療中で動けないクス子へと近づいていく。
「いっぱい可愛がってやるよw 飽きるまでなww」
「やめろ、やめてくれ……」
このままじゃ僕の仲間が、マリアンナと同じ目にあわされてしまう!
そんなん嫌だ!!
死ぬよりも耐えられない!!!!
「飽きたら兵士たちにやるよw 好きにまわしていいからさww ギャハハハハハwww」
「やめろおおお!!!!!」
いてもたっても居られなくなった僕は、自分が無力である事も忘れてトリスタンを殴り倒そうと走り迫った!!




