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「…………」

 手紙を全て読み上げた僕は、恐る恐る明るい部屋を出た。


「…………」

 部屋とは逆に真っ暗な階段を、ランプの明かりのみを頼りに上っていく。


「……みんな、どこへ行ったんだろう」

 僕はとても不安だった。

 リリィお姉ちゃんの意味深な手紙のせいか、それとも孤独によるものか。

 たぶん両方なのかもしれない。


「駄目だ駄目だ、怖がっちゃ駄目だ! 僕がしっかりしなきゃ……!」

 だけど、不思議と地に足をつけている感じはあった。

 だから僕は、しっかりと階段を一段一段踏みしめ上っていった。


 そして、がらくただらけの部屋に到着し、薄暗い教会の中を抜けて外に出た。

 その時だった。


「ひっ!」

「お待ちしておりました。タロ様」

 リリィお姉ちゃんの手紙に従って外へ出た僕を待っていたのは、整った装いの紳士な感じがする老いた男性だった。


「だ、誰!」

「……やはり私の事、ご存じないのですか」

 悪そうな感じはしなさそうだけど……。

 ”ご存じないのですか”ってそんな残念そうにされても、初対面じゃん!

 なんでそういう態度とるの?

 それとも、僕が忘れているだけ……?

 うーん、過去に会ったっけかな……。

 

「ついてきてくださいませ」

 老人は少し残念そうな顔をしながらも、そう言いつつ近くに泊めてあった馬車の扉を開けた。

 僕は、なんだかよく分からないままその馬車へ乗りこみ、廃れた教会を後にした。



 馬車に乗ってからしばらく走った後、ある場所へ到着する。

 山々の合間にある、テントがいくつかあるだけのいかにも野営しましたって感じの場所だ。


「大陸最後の町ラエトリは陥落し、もはや残っているのはこの名もなき拠点のみです」

 この人、さらっとすごい事言ってる。

 まぁ、馬車から見た感じ常に曇ってるし、地面も荒れ放題だし、いかにも世界の終わりって感じだし。

 五番目の大陸はとんでもない場所だなぁ……。

 本当、どうしよ。


 そう落胆しつつ、僕は馬車から見える風景を見た。


 そこに居る人々は、まるでゾンビ映画のゾンビのようにふらふらと彷徨い歩いたり、その場で座り込んですすり泣いたりしている。

 まさに、生気と覇気を失い、現状に絶望している様子だった。


 今まで通ってきた場所もそうだけど、ここもなんだか鬱々している場所だ……。

 みんなは本当に大丈夫なのかな。


「あの……、知ってたら教えてください」

「はい」

 僕はそう思いつつ、自分が置かれた状況を確認するため、御者の老人へ近況を聞いた。


「僕には仲間がいるんです」

「存じております。リリーシア様、マーフィ様、クスクス様、ミオリーゼ様ですね」

 どうしてこの人が僕の仲間を、しかもフルネームで知っている?

 ますます分からない……、どういう事なの。


「申し訳ございません。クスクス様は見つけて保護しましたが、他のお二方はまだです……」

 とりあえず、クス子は無事のようだ。

 良かった……。


「到着しました。こちらです」

 そう思いつつも僕は馬車を降りると、御者の老人へ案内で縦穴の洞窟の中へと入っていった。

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