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 僕には、この人の頼みを素直に聞けない理由がいくつかあった。

 それをどうにか分かってもらう必要がある。

 さて、どうやって説明しよう?


「この国は見ての通り、魔王と称する者の手におちようとしている」

 だが僕の思惑を無視し、国王は現状を語りだした。

 今言っても聞いてくれないと思った僕は、とりあえず国王の話に耳を傾ける事にした。


「我々は魔王から民を守り、この豊かだった大地を取り返さなければならない」

 執事セバスも言っていたけれど、そんなに綺麗だった場所をここまで変えるなんて……。

 美しい大地から美しさを奪うって聞いた時も驚いたけど、内容だけじゃなくて効果範囲や威力そのものも凄いな。


「数多くの賢者や勇者が、魔王打倒をかかげて立ち向かった」

 多分、この中には僕たちと同じ異世界転生者が居たのかもしれない。

 仮にそうだったら、その人達も類い稀な能力の持ち主だったんだろう。


「だが、それら全ては失敗に終わり、彼らは二度と返ってくることは無かった」

 そりゃあ、全ての奪う力には勝てないよなぁ。

 だってどんな凄いスキルあっても、それ奪っちゃえば終わりなんだから。

 しかもその人が二度と返ってこないって事は、奪ってお終いってわけでもなさそうだし。


 これは、いよいよやばいかもなぁ……。


「だから頼む。我々の常識を超えた力を持つ救世主たちよ。どうか、この国を救ってくれ!」

 国王は玉座に座ったまま、かぶっている王冠が落ちない程度に頭を下げた。

 国王の様子はとても真剣だし、すごくいい人そうだから力を貸したいけども……。


「あ、あの……、ちょっと考えさせて貰っても――」

 そう思いながら、僕はとりあえずミャオやクス子と相談するための時間を稼ごうとした。


「国王の決意、実に見事だ。よかろう、余の力を貸そう」

「ちょっと!」

 そんな即決だなんて!

 いろいろ作戦とか方針とか懸念点とかあるのに、なんで勝手に……。

 もーー!!


「どうした? 戦わないのか? 一国を治める漢が、自身の従者の前で恥も外聞もなく、ここまで頭を下げているのだぞ?」

「う、うん……」

 そりゃあそうだけどさ。

 でも、ものには手順ってのがあってな……。

 はぁ、こうなったらもう僕の意見を聞こうとしないからなぁ。


 この時、僕の能力は”あくまで好きなキャラクターをコピーする”だけで、決して”絶対服従”ではない事を再確認させられた。


「王様、僕も力を貸します」

「おお! 本当にすまない!」

 国王の表情はとても明るく、少し前のめりになりながらそう答えている。

 期待されているよな、間違いなく。


「ですが、その前に一つお願いがあるのです」

「言ってみよ、遠慮することはないぞ」

「僕の仲間はクス子とミャオと、あともう二人居るのです。その者達を探して合流し、僕と四人になってから魔王に立ち向かいたいです」

 僕の懸念している事で一番の内容は、はぐれた仲間と合流していない事だ。

 相手は能力を奪うという、なかなかインチキじみた相手だ。

 功夫の達人であるまふにゃんと、魔法が使えるリリィお姉ちゃんの力は絶対に必要になってくる。


「よかろう、斥候と物見の者に連絡を入れておく」

「ありがとうございます」

 これで見つかればいいけれど……。

 僕はそう思いながら、頭を深々と下げると、謁見の間から出ていった。

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