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マキナに徹底抗戦していくという方針は決まった。
次は手段と目的だけども……。
「それで、二つ疑問があるんだけどもいいかな」
「はい」
「なんにゃ?」
「うんっ」
「なんだ? 言ってみよ」
「一つはアイオーンの倒し方」
僕は四人の女の子たちを見回しながら、話を進めていった。
「近接戦に持ち込めば、まふにゃんやミャオでも十分戦えると思う……」
ここで”倒せる”と言えない自分に気づき、弱い気持ちを振り払うように顔を何度も横に振った。
「やはり、あの光の攻撃か?」
「うん、カルネージ・なんとかかんとかってやつだね」
リリィお姉ちゃんの魔法によって無傷ですんだけれど、次も防げる保証はない。
あれだけ凄い攻撃をどうするかが、僕たちのこれからの宿題だった。
「撃滅-崩壊-衝動だね」
「かんねーじ・あくしょんりすとにゃ」
「うんうんっ」
「もうその流れはいいよ! しかもまふにゃん全然違うし!」
きっとこの緩い流れも、僕が気難しく考えているからそれを和らげてあげようという、みんなの計らいなんだろうなと思うと、僕は怒れず笑顔でそうつっこみを入れた。
「コホン、もう一つは、アイオーンを倒したとして、マキナ本人をどうするかだね」
僕はわざとらしく口に手を当てて一つ咳払いをすると、次に決めなければいけない事を告げた。
「それに関しては既に決めてあるぞ」
「ほおほお、何だろう?」
「”この館に手を出させない”と約束させる」
「そんな約束守るか?」
「だな、機兵が大挙してくるオチしか見えないな」
魔法倶楽部の男の子二人の言う通りだ。
過去に虐殺をしたと言われる機兵が、すなおに言う事を聞くとは思えない。
僕や僕の仲間が居ない隙を見計らって襲撃に来るなんて、誰でも分かる事だ。
「大丈夫だ。必ず守らせる」
ミャオの真剣な表情を見た僕は、それ以上何も言わず彼女の言葉を信じる事にした。
「あと、お前達」
ミャオは僕の方を見ながら一つ軽く頷くと、次に魔法倶楽部のメンバーである男の子二人の方を向き……。
「国の連中から見れば、余たちは反逆者だ。勿論お前達もその一味に加わっている」
表情を崩さないまま、はっきりとそう告げた。
「あ、ああ」
「そうだな……」
この時、二人の表情はミャオとは逆に、不安でいっぱいだった。
勝利の余韻で騙せていた感情が露わになっていくのが、僕でも分かるくらいだ。
「失敗はするつもりはない、生きて必ず戻ってくる」
「おう!」
「当たり前だ!」
「だが、万が一戻らなかったら……。ここから逃げて欲しい」
男の子達に放っているミャオの一言一言は、僕の心にもずしりと響く。
「この大陸には、まだ魔法を信じる者が居る。その者たちのもとで静かに暮らせ」
だけど僕は不安じゃなかった。
それ以上に、この戦いに勝って生き抜くという気持ちを漲らせていたからだ。
「まぁ、ミャオなら心配ないけどな」
「それでも、備えあれば憂いなしか。分かった」
この時僕は、一時の気持ちの変化はあれど、彼らがミャオの事を本当に信頼しているという事に気づき、張った気持ちが少し緩んだような感じがした。
「頼むぞ。同志たちよ」
そして男の子たちの言葉を聞いたミャオの口角が、少しだけ上へあがっている事に僕は気づくと、より強く生きる事と勝利することを願った。




