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逃げた私の周辺人々

作者: 暁希

ラウベルの周りの人達の話です。

父親→兄→婚約者、そしてラウベルの今の話という構成になっております。

前作含め読んでいただければ幸いです。

曇り空の中妻が産気づいた。それから2時間も経ったが産まれず、産婆や妻の体にも疲れが少しずつみえ始めた。

息子は不安そうに私の腕を掴み震えていた。


曇り空はだんだん深くなりいよいよ雨が降ってしまうのではないかという時我が家の上だけ雲がはれ太陽の光が当たった。その時だった。

ラウベルが生まれたのは。

この世のものとは思えないほど光り輝く娘の姿。皆が歓喜した。だが、それもつかの間ラウベルの姿は暗く染まっていってしまったのだ。



私は自分の魔力を全てなくしてもいいという気持ちで魔法をかけた。でも何の魔法を使えばいいかわからずいくつもの魔法をかけた。

だが、ラウベルの姿は元には戻らなかった。



妻はラウベルを見るのをいやがった。そして私の姿も。ラウベルを救えなかった私を許せないのだろう。それから家のことは全て妻がやるようになった。居場所は執務室(私室)と誰もよろうとしない古書室だけだった。


それから仕事にいけば、ラウベルの姿を元に戻す方法を調べたり、本を執筆したりした。



だが、ラウベルが生まれてまだ半年のそんなある日妻がこういったのだ。


「ラウベルは私の子じゃない。

使用人にするわ。」と。


自分の娘を使用人にする?私は妻の言葉を理解出来なかった。だが、既にこの家の全権は妻が握っていて反抗することなど出来なかった。

できることは自分の数少ない味方だった執事長とメイド長に娘のことを頼むことだった。


ラウベルは2人の元ですくすくと育っていった。

会うことはできなかったが2人が様子を聞かせてくれた。本当は自分の目で見たかったがそれは許されないことだとわかっていた。












数年たって古書室に誰かが出入りしてることに気づいた。メイド長に聞けばラウベルが毎日暇さえあれば行っているという事だった。

私は嬉しくなった。自分と同じようにラウベルが本に興味を持ってくれていることに。

息子は本には興味を持たず、遊びばかりしている子だった。そんな中ラウベルのこの話。

嬉しくない訳がなかった。





だが、息子もラウベルのことを心配しているらしかった。あの日から息子との関わりも減ったが友達を作り手当り次第ラウベルの姿を戻す方法を探しているらしい。母親の手前表立っては出来ないらしいが。そんな姿に私は息子のことを誇らしく思った。




そして私は古書室に新しい本を置くことにした。

古書しかない部屋に突如新書が置かれていればきっと読むだろうと信じて。

魔力があるかどうか分からないが一応貴族の子だ。そして何より私の子だ。魔力はあるだろうと思って。






そんなある日、突然息子が友達である第三王子殿下を家に招待するという話をしてきた。

それと同時にラウベルのことを気づいてもらえればラウベルを救える手立てが出来るかもしれないという話も聞いた。我が子ながらうちの息子は出来た子供だと思った。


次の日第3殿下はうちに来た。ラウベルに気づいて貰うため息子と妻に気づかれないように古書室に近づくよう仕向けた。

簡単だった。浮遊魔法の練習をしようといえば好奇心旺盛なこの時期断るわけがなかったから。

それに第3殿下は1番行動力のある王子だということを知っていた。

陛下に直接話すことも考えたことはあったがそれは色んな諸事情により出来なかった。

それに一応我が家の戸籍には入っているのだ。

問題の根本的な解決には至らないとそう判断したんだ。





第3殿下の働きは思った以上のものだった。

ラウベルを婚約者にしたいと言い出したのだ。

それを聞いた妻は大騒ぎ。ラウベルに英才教育を施し始めた。ラウベルは優秀で予定よりだいぶ早く学び終え、それでも息子達が学園に行くのには間に合わなかったが。


第3殿下は婚約者のためと言って勉強に今まで以上に取り組むようになり、誰かと遊ぶことはあまりなくなったようだ。息子や陛下がちょっと寂しい様子で話していた。


息子もそれと同時に勉強を始めた。

やはり優秀で第3殿下とトップ争いをしているらしい。





いつの頃だったか。ラウベルの様子がおかしいと話を聞いたのは。前々からラウベルが侍女にいじめられていることは話で聞いていた。その侍女達にはちゃんと注意をした。だが、この家の主は妻であると分かっていたため焼け石に水状態になってしまった。





ラウベルはそんな中でも頑張っていた。ちょっとだけ見に行ったこともあった。ラウベルはきっと気づいてないが。

そんな中ラウベルの悪い噂が流れ始めた。

どこから流れたかは分からないが、この家としては放置することに決めた。

否定してもきっと話は悪くなる一方だと思っていたから。



ラウベルの入学を控えどんどんと胃は痛くなる一方だった。こんな悪い噂が流れる中人前に晒すことは良くないと思っていたのだ。

そして入学前には婚約者の第3殿下と息子の卒業パーティーがある。ラウベルも婚約者として出る予定であった。そう予定だったのだ。




ラウベルは当日逃げた。でも心のどこかで安堵したんだ。私は。この家にいるよりきっとどこかに行った方がラウベルは幸せだと思っていたから。


.......手紙……?

ラウベルから貰う初めてのものがこんなものだとは分からなかった。私は静かに泣いた。ラウベルがよくいた古書室で。その時私の体を小さな光が回った。本当に微かな光。でもそれは私が初めて見るラウベルの魔法だとすぐわかった。


私にはもうなにも出来ないがラウベルの幸せのためにここでできることをやろうと思った。



ラウベル……愛せなくてごめん

幸せになれよ…………。






息子(ラウベル兄視点)


ラウベルが生まれる時母さんが死んだらどうしようだとか色んな不安が僕を襲っていた。

父の腕を掴み震えていた。

ラウベルが生まれた時みんなが嬉しそうに叫んでいたことを今でも覚える。

でもラウベルはどんどん暗く染っていったんだ。

僕はなぜラウベルが暗く染ってしまった理由がわかった気がするんだ。


だってここに立ち会っている人達に僕の家族のことを悪く言っている人がいたから。それだけじゃない。痛いほどわかる。人間本当にいい人なんか居ないこと。

その人たちの黒い心がラウベルを暗く染めた。

父さんは頑張って魔法をかけたけど治せなかった。母さんは父さんを悪く言った。

でも、母さんにだって責任はあるんだよ?って子供ながらに思っちゃったんだ。




それから僕はラウベルを元に戻す方法を探しながらそれ以上にラウベルが幸せになる方法を探したんだ。

でも無駄な気遣いだったみたい。

僕はラウベルのことをずっと見てる。

ラウベルが隣国に行って幸せになった姿を見た。

父さんには言わないけどね。

ラウベル。幸せになって。僕のことなんか忘れていいからね。








第3殿下(ラウベルでいう、彼)

ラウベルと初めてあったのは学友の父親である魔術師に浮遊魔法を教えてもらい練習をしている時だった。光が見えた気がして古書室を覗いた。そしたら女の子がいた。初めて見る暗い髪色に暗い瞳だった。でもそんな彼女が魔法を使えることに驚いた。


彼女に色んな話を聞いた。本当はこの家の娘であることには驚いたが嘘をついてる様子はないし、きっと本当であると思った。

微かに笑う彼女に不覚ながら惚れてしまった。

父様に頼んで彼女を婚約者にしてもらうことを頼んだ。

父様に交換条件として彼女に相応しい誰よりも素晴らしい人になると言うことを約束した。


そんな中、学園に行くことになった。

彼女を守るために沢山勉強した。いつも1位か2位になれて自分が誇らしかった。

そんな時聖女として平民の女子が転入してきた。

彼女は聖魔法を使える。その力はこの国でも1番とも言われていた。だからもしかしたら彼女の姿を変える方法を知らないかと思って近づいた。


彼女は少しラウベルと似ていた。

その話を聞いて自分も協力すると言ってくれた。

彼女と共に本を調べたりしたが何も解決策は見つからなかった。彼女は僕に告白したことがあった。でも断った。彼女のことは友人として信頼してるし好きだが愛してるのはラウベルだったから。




でも、そんな中ラウベルの悪い噂が沢山流れていることを知った。そしてそれが聖女が流したものなのも。それから彼女に近づかなくなった。


卒業パーティーが近づいて、彼女にプレゼントを贈ることにした。彼女に似合いそうなドレス一式を見繕って彼女に送った。

もう何年もあっていないけどきっと美しく成長した姿を考えると自然と顔が綻んだ。



でも、彼女は来なかった。

最初は彼女を恨もうとした。彼女は僕から逃げたから。でも彼女はきっと僕といるよりこの国じゃないどこかに行った方が幸せだと思っているから。



部屋に戻ると一通の手紙が置いてあった。

ラウベルの初めて見る手紙、はじめて見る字に感動した。ラウベルは僕のことを勘違いしていた。

でも彼女からしたら1度しかあったことの無い僕のことなどよく分からないし、噂が本当だと思ったのだろう。

読み終えた時小さな光が僕の指に止まった。そしてすーっと消えていった。

きっとラウベルの魔法であろう。この純粋な光から悪い魔法ではないことはわかった。




僕は空を見つめ、ラウベルが幸せになれるように願う。もし第三王子ではなく、こんな姿でなければラウベルと違う関係をもてたのかと思い、少し自分のことを恨んだ。












隣国に移り私は図書館の司書として働いている。

色んな人と出会いとても幸せに暮らしている。

ご飯は美味しいし、人は優しい。

国民性も違うのかな。

私にはこの国の方があっている気がする。


今の私ならあの人の隣に立っていても大丈夫だったかなと思いながらそんなことを考える私に失笑する。


きっと幸せに過ごしていることでしょう。

きっとね。


今思うと兄も私の事を思っていたんだろうね。

この前兄の気配がしたし。だから私は兄が幸せになれるように願う。

まじない程度にはなるだろうと思ってね。



いつか、お世話になった人達に恩返し出来ればいいなと思ってる。確かに悪いことの方が多かったけどね。



これからもこの先も私はこの地で生きていく。

本が沢山読めて自由に暮らせるこの場所は私にとって楽園だ!

最後までお読み下さりありがとうございます。

個人的にラウベルの幸せになる話も書きたいなと思っています。書くかは未定ですが。

感想、誤字報告受け付けております。

返信は出来ませんが、いつもありがとうございます!

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