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6 幸せのカタチ

六月三十一日桜森高校文化祭当日、実行委員は本番三時間前には学校に登校して最後の準備にとりかかっていた。文化祭開始が十時、終わりが二時半。


霧雨との約束が十二時から一時。外出してからあまり日数が経っておらず無茶をさせられない。

様子見ということもあり長くはしない方がいいだろう。


「何考えこんじゃってるのシオン」


実行委員に配られた【東昇】と書かれたプリントT-シャツを着た如月が声をかけてきた。


「別に何も」


「今日のデートはうまくいくかな~、とか」


「ッッ、なんで心が読めるんだ! てかデートじゃない」


デートだと肯定してしまえば一生このネタでいじられそうだ。


「いよいよあのシオンが彼女を作ったなんてお姉ちゃん、感激」


「いつから俺の姉になったんだ! それに彼女じゃない」


霧雨が楽しい文化祭と久しぶりの外を満喫してくれればいい。

だが僕には文化祭の楽しみ方が分からない。 だから青春の”お姉さん”に少しお手伝いしてもらおう。


「如月、頼みがある」


「いいよ」


内容も聞かず即答した。きっと如月にはお見通しなのだろう。


「でもあまーいひと時が過ぎたら文化祭の片づけを末永く終わるまでしようね」


さらっと恐ろしいこと言ってくる。こんな恐ろしい告白は初めてだ。


「ああ、頑張るよ」


 

                        ※



待ち合わせの職員玄関前。桜並木は満開時期を外れ寂しく佇んでいる。


「シオーーン」


桜森高校の制服に身を通し手を振りながら向かってくる。僕は霧雨の病衣しか見たことなかったのでかなり新鮮な印象だ。真新しく見える制服は新入生と同じくまだ体に制服がなじんでない。


「三分の遅刻だよ」


「だからシオンはモテないんだよ。 女性にあったらまず身だしなみを褒める!

  細かいことを気にしない!」


「世界一綺麗だ」


「うぁ~、超適当じゃん」


まぁ期待してなかったしいいよ、と言わんばかりに無言で先を歩いていく。


「待ってくださいよ、先輩」


人ごみの中で後をついていくのは大変だ。多少は気を使ってくれているのか少し微妙な距離、あと一歩前に踏み出したら届きそうな距離でついていく。


この妙な距離感が二人の距離と似ている。

踏み出したら届くかもしれないが近すぎて後戻りはできない。


「先輩機嫌直してくださいよ、やっ、焼きそばおごりますから」


「人を食いしん坊で食べたら機嫌を直すと思ってるの…」


「デザートに2-Cのクレープも追加しますよ」


「・・・・・クレープ」


食いついた。 ちょろい。


このまま中庭で焼きそばを食べ、2-Cでクレープを堪能した。

クリームが口について取り合ったりするお約束展開はなかったけど初めて文化祭で楽しいと感じた。


去年は文化祭の何が楽しいのか疑問だったが、今なら分かる気がする。


「シオン、今度はどこに行こっか?」


先輩は小さな声で言った。確実に体力を消耗している。


「なら少し休憩しませんか?」


僕は計画通り物事を進めた。



                       ※



桜森高校は旧校舎と新校舎が存在する。東西南北から順に旧校舎東棟、旧校舎西棟、新南校舎、新北校舎と並んでいる。

旧校舎は古く今は部活動の部室として使用されている。


その内の旧校舎西棟の屋上は施錠のカギが壊れていて自由に出入り出来る。

一年の頃に偶然壊れているのを発見して一人になりたい時来ていた。


「屋上って立ち入り禁止じゃなかったっけ?」


「もちろん禁止だよ。でも…」


フェンスが古く、高さも低いため学校を一望できる。

昼間だから太陽はきついけど桜並木も見渡せ、春だと満開の桜が一望できる。


「すごい。学校全体が見渡せるね」


忙しく動き回る人。恋人と仲良く行動してる人。フリースペースで保護者にお茶を配ってる人。

全てが見渡せる。


文化祭をすべて堪能する体力も時間も先輩にはない。だが堪能できなくてもここなら見ることはできる。

少しでも楽しんでもらうにはと考えた結果がこれだった。


「校内はどこもうるさいから…ここなら休めるよ」


「そう、ありがとう」


「でももうあと十五分もしたら魔法が解けてしまいますよ。シンデレラ」


「なら魔法が解ける前に一つ・・・・・・」


「うん?」


「・・・。 ありがとう」


唐突なお礼を言われ戸惑った。勉強のことはお礼を言われることではない。

先生に言われなかったら何も僕はしてなかっただろう。


「あまり教えるの上手じゃなかったけど」


「うん、上手じゃなかった」


正直者だ。 でも先輩らしくまっすぐだなと感じた。


「でも勉強を教えてくれたことだけじゃないんだよ。感謝してることは」


「僕は何もしてないよ。お礼は先生と如月に言うといい」


「いいや、シオンには助けられたよ」


霧雨は首を横に可愛らしく振り、否定する。


「なんか、らしくないな」


「そうかも」


「じゃあこの話はこれでお終い。 これからもよろしくね、シオン!」


「ああ、よろしく」


そしてシンデレラの魔法は幕切れ(時間切れ)となった。


次は書きたくてうずうずしていた遊園地。 感想などいただけるとうれしいです。

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