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3 ダンスはお得意ですか?

 僕は今、病室のベッドで上向きになっている一つ上の先輩であり、クラスメイトの霧雨ミホに勉強を教えている。きっと人生でこんな体験をする人はごくわずかで貴重な体験だろう。


「シオンがいやいや来なくてはならなかった理由がしりたいな」


悪戯っぽく微笑んでいる。


「僕みたいなハイスペック人間に弱みなんてないよ」


「嘘をつく上に先生の悪口を言ってましたって先生に言ってもいいんだよ」


何故だろう、最近脅されてばかりだ。


「そんなことよりそこのXは2」

「えっ、あっ。 しっ、知ってるし。ちょっと教師の実力が知りたかっただけ」


何故か頬が赤らんでいるのは気のせいだろうか。確実に拗ねた。


「もうめんどくさい。やりたくない。疲れたーー」


「小学生か! まだ始めてから五分もたってないぞ」


「だってXが虚になったり、点Pが動き回ったりしてムカついてきた」


そう言い放った直後にベッドに横たわった。


「この先動いてる点Pから面積求めたり……って寝るなッッーー!!」


「これが将来役立つことが……」


屁理屈を言うのをやめたと思えば急に前かがみになり顔が近くなる。


整った顔立ちの純白の肌が目の先ある。


自分でも分かるほどに心拍数が上昇している。


「どうかした?」


「モチベーションも保たせるのも教師の仕事だと思うんだ」


一理あるかもしれない。先輩には勉強を頑張ってもらわないと僕の学校生活が危機に陥ってしまう。


「何かしたいことや、欲しいものがあるの?」


無邪気な子供の笑顔になり可愛いと思ってしまった矢先に


「私、友達が欲しい!!」


僕も欲しいよ……とは言わず、「これが終わってから」と言って今日を終えた。



                   ※



三度目となると病院のオフィスを顔パスで通れるようになっていた。


さっそうと病室に向かったが彼女はいなかった。


きっと検査とかでいないのだろう。


「シオン、これこれ」


と如月が指さしたのは机の上に置いてある霧雨の物らしきスマホについている熊のキーホルダーだった。


「そのクマのキーホルダーがどうかしたのか?」


「頭大丈夫? 今流行りのクマクマだよ」


なんともネーミングもないクマのキーホルダーだ。


病室のドアがスーと開く音がして振り返ると


「あらシオン……君とどちら様?」


今まで尊敬の体を表してなかったので慣れておらず手間取っているみたいで面白かった。


親しき中にも礼儀あり、とはよく言ったものだ。


「初めまして。 私は、クラスメイトの如月チヨです」

「私こそ初めまして。 私は霧雨ミホです。敬語じゃなくてもいいよ」


「うん分かった、よろしくねミホ」


「うんうん、誰かさんと違って切り替えが早くて話しやすいよ」


こっちを見るな、こっちを。


それからたわいもない話を三人で話した。


そのたわいもない、特に学校の話は霧雨にとって懐かしいらしく反応が新鮮で話す方にも熱が入ってしまった。


こんなに話したのは何年ぶりだろう。


楽しくて時間を忘れるということを今日初めて体験したかもしれない。


今日、如月と先輩のお見舞いに来た理由は如月に先輩と友達になってくれないかと淡い期待を思った

からだ。


友達。残念ながら如月しか心当たりがない。先輩のお願いを精一杯叶えるにはこれしかなかった。


ふと窓から外を眺めると空が夕暮れとなり解散を告げている。


「ミホ、連絡先交換しよ」


「うん」と霧雨が頷くと如月がスマホでやり取りを一瞬にして終える。


現代人ってすごいなと感心してしまう。僕にもあれぐらい出来るようになるのだろうか。


「シオンのことだからミホと連絡先交換してないんでしょ? 交換しなよ」


「何で交換してないこと知ってるんだよ」


「シオンが美人先輩キャラに弱いことに知ってるからね」


何でこいつが俺の好みを知ってるんだ……。


しかもそれを聞いて先輩が、おもちゃを買って貰った小学生みたいな満面な笑顔でニヤついてるし。


「いやスマホをカバンから取り出すのめんどくさいし……」


「なら私から連絡先送っておくよ」


慣れた手つきで交換を一瞬ですまし霧雨と微笑んでいる。


「それじゃあまたいつ来れるか分からないけど必ず来るね。 バイバイ、ミホ」


「うん、バイバイ、チヨ。あとついでにシオンも」


「ついでかよ!」


そう別れの挨拶を告げ病室を後にする如月を追いながら振り返ると霧雨が笑みを浮かべ小さく手を振っている。


その笑顔を見るかぎり友達ができ上機嫌のようだ。


僕一人ではここまでうまくできなかっただろう。


如月には助けられ、貸しを作ってしまってばっかりだ。


きっとこの借りは早いうちに返そうと心に誓った。



やっと物語のスタートに立ちました。

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