2 夜のパーティーが始まります。
病院についた。もちろん僕は調子悪くないし、家族や親戚が入院しているわけでもない。
何故来たかというと先生のお願いを実行するためだ。
先生は、「これから会議がある」と言われ病院の場所とA4サイズの茶色い封筒を渡され丸投げされた。
病院はこの町では比較的大きな方だと思う。自転車で信号に引っかかることもなく、すんなりとついた。
入口で看護婦さんに事情を説明すると病室は二階の一番奥で面会は七時までと説明を受けた。
エレベーターで三階へ。通りすがる看護師さんに会釈をしているうちに病室までたどり着いた。
ドアを開けると部屋は一般的な相部屋でベッドが4つある。だが一つしか使われていない。
部屋の左奥の大きな窓辺のベッドから少女が窓から外を眺めていた。
少し寂し気な雰囲気を纏っており、すらっと流れる黒髪にまっすぐな瞳、真っ白な肌は少女が病人であることを示しているようであった。
かなりの美少女だ。如月も美しさでは負けないが、彼女には特有の雰囲気と麗らかさがある。
「あなたが霧雨さんですか?」
声が緊張で震えてしまう。
「そうだけど、あなたは誰?」
不思議そうに少女が疑問を投げかけてくる。
「同じクラスの神沢シオンです。先生のお見舞いを届けに来ました」
僕が渡したのはA4サイズの先生に渡されたプリントだった。
「 ありがとね、てっきり先生が持ってくるかと思ったよ。
あっ、もしかしてじゃんけんに負けていやいや押し付けられた? 」
彼女の疑問が確信をついてきた。じゃんけんはしてないけれど先生に頼まれた時厄介ごとを押し付けられたなと思っていた。
「自分が来たいと思ったから来ました」
いやいやもって来たと思われるのはよくない。それとは裏腹に彼女は嘘を見透かして苦笑いしてるようだ。
「嘘がへたくそだね」
あっさり見破られてしまって動揺してしまった。嘘をつくことには多少なりとも自信があったからだ。
それなのに見破られてしまった。
「どうして、分かったんですか!?」
「ふふっ。君の反応を見て確信しただけだよ」
なるほど。罠をかけたらまんまと引っ掛かり見抜いた。見た目どうり頭がきれるようだ。
「ところで霧雨先輩、先生から勉強を教えてほしいと頼まれました」
話題を変えたくて依頼の話をした。
「う~ん、先輩は堅苦しいね。同じクラスメイトなんだから先輩はいらないよ」
「ならなんと呼べばいいですか?」
「それもダメ!」
それとはなんだろうか、首を傾げていると
「シオンはずっと敬語になってるよ。それと私のことは霧雨と呼んでくれたらいいよ」
確かに敬語だと堅苦しく、コミュニケーションがとりにくいかもしれない。
「分かったよ、霧雨…先輩」
タメ語と敬称がかぶり違和感だらけだ。だが初対面の女性を呼び捨てにするのは気が引けてしまった。
「剛柔だね。まぁ、敬語は治ったしいいか」
案外割り切りがいいらしい。
「 シオンは何で学年一位の私が勉強を教えて欲しいのか疑問なんだね。
それはね…… 」
※
「霧雨は出席日数が足りず去年留年生となった。そして私が去年担任を持っていた生徒だ」
次の日の放課後、報告のために職員室に来た。
霧雨先輩は去年の六月に倒れ入院となり、今年一月に復帰したが出席日数が足りず留年になってしまったと言っていた。そしてまた三月に倒れ現在に至る。
今回の中間テストはすでに去年やっていたから一位を取れた。
先生が勉強を教えろと言ったのは中間テストから三学期に入る一月までの範囲を先輩が習っていないから。
「いくら僕が暇だからって二年生で習う科目すべての範囲を教えれませんよ」
「霧雨は一か月後に退院予定だ。だからその一か月間習う所だけ教えてやってほしい」
「 ……分かりました。ただし黙認の件は守って下さい」
「たがえる気はない。出席日数は夏休みに補習したことにすればいい」
さらっと職務乱用する気だが……。
「何故そこまでして霧雨先輩に手を差し伸べるんですか?」
疑問と欲望には勝てなかった、聞かない方がよいと直感では分かっていた。
「 ………。 教師が生徒を助けることが不思議か? ましては担任を持っている生徒を 」
「それ自体に問題はありません。 ただ、先生は彼女と距離を取りながらも助けようとしている。
そこには矛盾が生じます」
職務乱用までして霧雨先輩を助ける。だが彼女との距離を開けたまま手を差し伸べる。
そこまでのリスクを背負って助けるメリットが先生にはあるらしい。
「君の言ったことが事実だとしてどうする? 理由を知ってどうする? 矛盾の矛先を見てどうする?」
得策。ここで得策なるものがあればそれはきっと気づかなかった振りをすることだ。
きっと僕は地雷を踏んでしまった。
「愚問でした」
「それでいい。よき働きを期待している」
ねぎらいの言葉とともに行動開始を決めるのであった。
なんとか更新することが出来ました。
今後とも頑張って更新していきたいと思います。




