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第7話 代紅雲の修業

相島に向かった代紅雲は、徐如の修業により力をつけていた。

そんなある日、徐如から卒業試験の話があり…


代紅雲は螺羅愛と共に相島にある闘技場に来ていた。


闘技場には島に在住しているものほとんどが、観戦に訪れていた。


代紅雲の闘者控え場にて、徐如が卒業試験について、説明していた。


曰く…


相島の6人の戦士と代紅雲、螺羅愛の6対2で戦い、勝利すること。


相島の6人は、渡連(どれん♂)、緋鼻(あかはな♂)、裸流(らる♂)、破卍(はまん♀)、奈々衣(なない♀)、久恵州(くえす♀)


戦闘不能と判断されたものは白鳥により撤去される。


全滅したチームの負けとなる。


武器の使用は認めるが、予め用意した殺傷能力の小さなものを使用する。


時間は無制限とする。


「理解したかな?使用武器を選択し、闘技場内で待機せよ。10分後に開始する」


「承知した」


徐如は、白鳥を従え観客席に向かった。


「螺羅愛よ、相手の出方にもよるが、大まかには私が男を、螺羅愛が女を相手することとしよう。片付き次第、加勢するということで」


「はい、わかりました。なかなか手強そうな相手ですので、油断なきように」


「うむ、お互いにな」


ふたりは軽く打合せを済ませ、武器を選ぶ。


代紅雲は太刀、螺羅愛は小太刀の二刀流。

今回のルールに合わせ木刀となっている。


闘技場に入り、回りを見渡す。


渡連は、槍(穂先をクッション材で包んでいる)を持ち瞑想している。


緋鼻は、小太刀(木刀)を脇に指し腕を組んでいる。手にはオープンフィンガーグローブをしているので徒手空拳(空手もしくは合気道)か。


裸琉は、長剣(木剣)を持ち軽く身体を動かしている。(鞭ではなかった)


破卍は、小太刀(木刀)を2本左右の脇に指して瞑想している。


奈々衣は、短弓を片手に脇には数本の矢(矢じりは尖っていないだけでクッションはない)を脇に巻いてある矢筒にいれている。


久恵州は、短槍を腰回りに数本指し、背中に普通の剣よりやや短めの剣(木剣)を背負って軽くジャンプをしている。


どうやら、連携をとって攻めてくることはなさそうだな。囲まれないように注意しつつ、各個撃破が理想か。

螺羅愛を見ると、視線に気が付いき、頷いてくる。螺羅愛は可愛いな。



ジャ~ン、ジャ~ン、ジャ~ン!!

「始めよ!」


さて、行くか。


代紅雲は左回り、螺羅愛は右回りに走りだす。


最初はお前か!


代紅雲は、木刀を中段に構えながら裸琉との間合いを詰めていく。


裸琉は諸手左上段で、待ち構えている。


裸琉は代紅雲が間合いに入るのを見ると、右足を踏み出すと同時に諸手左上段から、代紅雲の正面を打つ。


代紅雲は、左足からひくと同時に左鎬で裸琉の剣をすり上げ、右足を踏み出して正面を打ち、右足をひきながら諸手左上段に振りかぶって残心を示す。


裸琉はその場に崩れ落ちる。(そして、白鳥に撤去される)


右に気配を感じてそちらを向くと緋鼻が短刀を構え迫ってくる。


代紅雲は、下段に構え迎え撃つ。


緋鼻が、間合いに入る直前で下段から中段に構えを変化させる。


すると、緋鼻は代紅雲の刀を制して入身になろうとする。


代紅雲は、右足を後ろにひいて脇構えにひらき、緋鼻はすかさず、再び中段で入身になって攻め込む。


さらに代紅雲は、脇構えから変化して諸手左上段にかぶり、右足から踏み出すと同時に渾身の力を込めて緋鼻の正面を打つ。


緋鼻は、左足を左斜め前に、右足をその後ろに進めて、体を左にひらくと同時に、右手を頭上に上げ、刃先を後ろにし、右鎬で受け流がそうとするが、押しきられてしまう。


緋鼻は白鳥に…。


ブン…


頭上から襲ってくる槍をかわし距離をとる。

危機一髪だった…。


槍を中段に構える渡連。


代紅雲も木刀を中段に構え、遠山の目付けで様子を伺う。


渡連は、穂先を少し代紅雲の左に向け、右足から一歩踏み込みながら、諸手で代紅雲の水月を突く。


代紅雲は、左足から一歩大きく体をひきながら、物打で軽く入れ突きに萎やすと同時に渡連の胸部へ突き返す。


渡連はこのとき右足を後ろにひくと同時に槍を短く持ち、代紅雲の刃の下から返して、諸手をやや曲げ、左自然体の構えとなり、代紅雲の刃を槍で押さえる。


代紅雲は、さらに突きの気勢で左足を踏み出し、位詰に進むので、渡連は左足をひくと同時に、槍を代紅雲の刃の下からまわして返し右自然体の構えになり押さえるが、代紅雲の気位に押されて剣先を下げながら左足から後ろにひく。


代紅雲は、すかさず右足から二、三歩小足にやや早く位詰に進み、剣先は胸部から次第に上げていって顔の中心につける。


参りました。の声とともに白鳥に…。



さて、男達は片付いたな。

螺羅愛はどうなったか…


闘技場を見渡すと…


ん?


螺羅愛が体育座りでこっちを見ていた。


「らっ、螺羅愛?」


「代紅雲様、お疲れさまでした」


「はやかったな」


螺羅愛はにっこりと微笑む。


「勝負あり…だな」


「長老…」


「さて、見事な戦いぶりだったな。もはや、この島ではふたりにかなうものはおるまいよ、まあ、私と白鳥は除くがな」


「次は貴方達が相手ということですか?」


「いや、試験は無事合格だよ」


徐如は敗れた6人と観客に向かっていう。


「このものは力を示した。今後このものの力となり着いていきたいと思うものは闘技場に入り頭を下げ、忠誠を誓うがよい」


徐如の言葉に、先ほどの6人を先頭に観客席にいたほぼ全てが闘技場に入り片膝をつき頭を下げる。


そして、先程戦った6名の戦士達がそれぞれ…


「改めて、名乗らせて頂きます。私は渡連と申します。槍を得意としています。渡連隊100名と共に代紅雲様にお仕えさせて頂きます。よろしくお願いいたします」


「私は緋鼻と申します。合気道を得意としています。緋鼻隊100名と共に代紅雲様にお仕えさせて頂きます。よろしくお願いいたします」


「私は裸琉と申します。長剣を使います。裸琉隊100名と共にお仕えさせて頂きます。よろしくお願いいたします」


「私は破卍と申します。短刀を使います。破卍隊50名と共にお仕えさせて頂きます。よろしくお願いします」


「私は奈々衣です。短弓を使います。どちらかというと頭を使う方が得意です。よろしくお願いします。部下10名と共にお仕えさせて頂きます。よろしくお願いいたします」


「私は久恵州。諜報活動をこなします。部下50名と共にお仕えさせていただく。よろしくお願いします」


4つの部隊に参謀、諜報部隊か…。

これは良いな、色々動きやすくなる。


「みな、よろしく頼む!」


「「「「「はっ!」」」」」


-----


その夜、長老宅


「さて、長老…いや、徐如殿。貴方の目的を聞かせて頂きたい。奴国に、私に何をさせたいのです?」


「私の行為に裏があると?」


「一介の流れ者に修業をつけて、さらに部隊までも手配する。いくら悠希からの頼みとは言え…何故です?」


「悠希との繋がりまで推察したか。悠希はかつての教え子だよ。でもな、悠希の頼みだけではここまではしないよ。実際悠希からの依頼は帥合、いや代紅雲に語学を教え、大陸からの難民としての偽装するところまでだ」


「では何故?」


「実際に代紅雲と夢馬…螺羅愛か、ふたりを見て、このふたりならば我が宿敵に届くやもしれないと思ったのだ」


「悠希ではダメなのですか?」


「あの者の荒魂に何か不穏なものを感じる。何者かに干渉されている可能性が捨てきれない」


徐如から語られたのは奴国の存亡にも関わる重大な秘密であった。

荒魂は、人を構成する一霊四魂の魂のひとつであり、活動(勇)を担うとされている。


---

一霊四魂

荒魂あらみたま和魂にぎみたま・幸魂(さきみたま、さちみたま)・奇魂くしみたまの四つの魂があり、それら四魂を直霊なおひという一つの霊がコントロールしているというものである。

和魂は調和、荒魂は活動、奇魂は霊感、幸魂は幸福を担うとされる。

---


「荒魂、勇猛果敢な魂であり、ひとつ間違えれば破滅の道へと導く魂…、ですか。もし何者かの干渉があるとすれば奴国は滅亡に向かっている?いったい誰が?」


「推測でしかないが、そんなことが出来るのは邪馬台国の巫女のみであろうよ」


「邪馬台国…。何か手はないのですか?」


「鍵は智恵が握っている。智恵が悠希を抑えられるか…。それ以外に私には思いつかないな」


「智恵か…。信じるしかないか」


「代紅雲様、もし悠希に何があろうと抑え込む力を得ることが一番の近道となりましょう。まずは出来ることをやりましょう」


「螺羅愛…、螺羅愛はかしこいな」


「そういう言い方、嫌いです。大人っぽくて」


「そうだな。気をつけよう。徐如殿、話がそれて申し訳ない。宿敵とは?」


「仕方あるまい、国の行く末に関わることだしな。私の宿敵は伊都国にいる泥凰(でぃお♂)という者。奴とは先祖代々の因縁があり、さらに我が家族の仇なのだ。我が手で仇をとりたいと思ってはいるが、奴は伊都国の将軍の地位があり、私には手出しがしにくい状況となってしまった。暗殺も考えたが奴の力を考えるに失敗に終わる可能性が高い。奴を倒すには誰にも邪魔されない状況での真っ向勝負しかないのだ。代紅雲よ、なんとか手を貸してもらえないだろうか?」


復讐か…。

私の目的も我が一族の復讐…。

我が一族の仇も伊都国にいる。邪馬台国の犬となり祖国を裏切り、滅亡寸前まで追い込んだあいつをこのまま放置することなんて出来るわけがない。

仇を打つことの出来る力をくれたのは徐如であることは間違いない。仇を取りたいという気持ちも痛いほどわかる。

それに同じ伊都国にいるのならなんの躊躇いもないし、それで恩が返せるのなら否はない。


ただ…


「是非協力させて頂きたいのですが、その前にひとつお願いがあります。徐如殿の仇に届くか否か、徐如殿には先程は可能性があるとおっしゃって頂きましたが、現在地を確認したい。本気でお手合わせ頂きたい」


「…うむ」


代紅雲の武器は刀であり、徐如はそれに合わせて同じく刀で勝負する。

本気でとは言え、殺傷能力を抑えるため木刀を使用する。


木刀同士の戦いであるため、長老宅の一角の少し広い部屋が戦いの場となる。

あまり回りに知られないようにするためだ。


両者とも中段に構えて対峙する。


隙がない。

完全な自然体であり、余計な力が一切入っていない。

怖いな…。


徐如が一歩間合いを詰める。

代紅雲は、木刀を往なしながら右斜め後ろに後退する。


このままだとせっかく相手をして貰っているのに意味がない。

思い切って打ち込むのみ。


代紅雲はさらに集中し…


「ヤァーッ!」


代紅雲が思い切って徐如の正面に打ち込む。


カッ…バシッ…


徐如の木刀が代紅雲の頭をとらえた。


「一刀流の奥義である『切り落とし』だ。精進するがよい」



翌朝目を覚ますと、そこには螺羅愛の心配そうな顔があった。


「代紅雲様、大丈夫ですか?」


額が痛い。

手で触れてみると縫い合わせた後があるようだ。


「なっ、なんじゃこりゃあ~」


「目が覚めたようだな」


徐如が白鳥と共に部屋に入ってくる。


そうか、昨日の手合わせで…。


「代紅雲…いや、代紅雲様、昨日は見事期待以上の成果を見せて頂いた。やはり、代紅雲様となら泥凰に復讐可能だと改めて確信しました。是非とも配下として仕えさせて下さい」


「しかし…」


「代紅雲様。昨日の徐如殿の切り落としにより敗れはしたものの、徐如殿の木刀に代紅雲様の打ち込みにより亀裂が入り、代紅雲様が気を失った後に折れてしまったのです」


「あんなことは、切り落としを極めてから初めての事だったのですよ。勝敗は紙一重だったという事です」


「そうか…。では徐如よ、我が配下となり力を貸してくれ。また、お前には私の武術指南役も申し付ける。よろしく頼んだぞ」


「はっ、只今より私徐如は貴方の配下となりましょう。さらにここにいる白鳥 および 後日紹介しますが、住吉三姉妹も合わせてお仕えさせて頂きます」


徐如は片膝を付き、頭を下げて忠誠を誓う。

その後ろには、白鳥が控えていた。


後日、住吉三姉妹こと、上筒(うはつつ♀)、中筒(なかつつ♀)、底筒(そこつつ♀)の3人と顔合わせを行い、正式に配下に加わった。


皆物凄く美人だったなぁ。


-----


ふむ、この額の傷はどうしたものか。


「螺羅愛、どうしたものかな?」


「仮面でも着けてみますか?これなんかどうですか?」


兜とアイマスク、サングラスが一体になった感じか…。


どれ、着けてみるか…


うわぁ~、なんだこれ。

最高だな~、よっシャア~!っていう感じ。


「いい!これいい! 螺羅愛、赤い服を用意してくれ。なんだかとっても赤が好きになった感じだ」


「はいはい…」


「あっ、そうだ。今から志韋矢しゃあと名乗るよ、よろしくね」


「…」


ちなみに、徐如は仮面という言葉に物凄く反応していた。

ちょっと怖かったが、なんとか説得出来た。


-----


本国の悠希から連絡があり、今後の方針について話し合いを行う。


参加者は、私(代紅雲)、螺羅愛、徐如、白鳥、住吉三姉妹、渡連、緋鼻、裸琉、破卍、奈々衣、久恵州。


「螺羅愛よ、悠希はなんと?」


「半年後、不弥国に進攻を開始するとのことです。それに合わせて代紅雲様…志韋矢少佐にも協力願いたいと」


「少佐?」


「部隊を持ったので、表向きに階級があった方が良いだろうとのことです」


「なるほど。で、半年後か。当初の予定では大島経由で不弥国に入る予定だったが、この計画はもはや不要だろうな。で、何をしろと?」


「これだけの戦力がありますしね。不弥国進攻時に、狼煙で合図するので、宗像、北九州を同時に落として欲しいとのことです」


「同時にか。徐如よ、可能かな?」


「奴国が攻めるとなると、不弥国側の四大将軍で海道、香椎、久山の防衛に回るでしょう。残る一人は犬鳴山あたりで草に備えるかな。王太子の羽矢火は傑物ではありますが、コヤツ次第かと」


「発言よろしいでしょうか?」


「奈々衣か、意見があるなら遠慮するな。他のものも意見があればことわる必要はない。どんどん発言せよ」


「ありがとうございます。では、羽矢火についてですが、才能は天下逸品ですが、久久能智のみならず王であり父親でもある多模にも嫌われています。多模は久久能智にぞっこんですので、羽矢火の意見は通らないことが多いようですね。そこで、久久能智が立案する策に対して、羽矢火がダメ出しをする状況を作り、羽矢火を孤立させることが出来れば、羽矢火は戦力外となりましょう」


「ほう。それは面白そうだ。具体的な策はあるか?」


「久久能智は、人を信じることをしません。ただし、自分が鍛え上げた木霊という諜報部隊のみ過剰に信じる傾向にあるようです。そこでこの木霊をこちらに取り込んでしまい、不弥国北部で少し騒動を起こした後、鎮圧したとの虚偽の報告をさせます。すると、久久能智は鎮圧を信じ、羽矢火は独自の情報網から鎮圧を疑う状況が生まれます」


「螺羅愛、白鳥、久恵州よ。木霊とやらの取り込みは可能か?」


「あいつらなら知ってるよ。チョロいね」


「白鳥さんがそういうなら可能かと」


「では、その工作は3人に任せる。あと、ついでに、宗像、北九州を簡単に落とせるような工作もよろしく」


「「「はい」」」


「実際問題としてどうやって軍勢を送り込む?」


「それは影船で行きましょう。前夜の内に影船を使用して海岸で待機、合図と共に各地区を落とせば良いかと」


「徐如よ、影船とは?」


「闇夜に紛れて進む影船。ぶっちゃけると黒く塗った船ですよ」


あ~、なるほどね。


「よし、渡連、緋鼻、裸流は、宗像、北九州への進攻準備、徐如、住吉三姉妹、破卍は大島に渡り、門司、小倉、豊前への進攻の下準備をせよ」


「ほう、宗像、北九州以外も取りにいきますか?」


「不弥国との戦いにて存在感を示し、伊都国での戦い時にはある程度の発言権が欲しいからな」


「そこまで読みますか?」


「戦いとは常に二手三手先を読んで行うものだ」


「…確かに。では、大島に向かいます」


「奈々衣は私のサポートを頼む」


「はい、よろしくお願いいたします」


さて、半年後か…。


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