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第23話 佐賀の攻略と不穏な空気

「是非に及ばず」


報告を受け取った悠希は一言のみ発したという。


その後、独立機動隊、親衛隊にはそのまま待機を命じ、悠希は自ら鴉軍を率いて脊振山の陣に入った。


「…そうか、美鳥も逝ったか」


陣に着くと、美鳥も怪我の影響で亡くなったとの報告を受ける。


佐賀の敵は、将が5名、兵が700か。

兵の強さは想像以上ではあるものの奴国側の常備兵の中で奴国自衛隊より若干上回る程度か。


兵については、鴉軍の500と自衛隊第2大隊第1組で十分だろうな。


問題は七つ星か。

乃愛、鴉魔、霧也…、僕も出るとしよう。

かなりイラッと来てるんだよね。


「軍議を開く、隊長クラスを集合させろ」


「はっ!」


軍議の場には、悠希を始め乃愛、磐土、水虬、矢矧、鴉魔、霧也が参加していた。


「霧也、身体の具合はどうだ?」


「特に問題ありません。此度の戦い、大変申し訳ございませんでした」


霧也は特に問題ないとは言っているものの、満身創痍であり、軍議に参加しているのも相当無理しているのがわかる。


…霧也は無理だな。

磐土、水虬には荷が重いだろうな。

私と乃愛、それに鴉魔なら大丈夫か。


幻夢よ。


はっ!


七つ星、強さはどの程度だ?


文曲、廉貞あたりまでなら、徴兵部隊の隊長とほぼ互角。貪狼、巨門、破軍であれば大将以上の力が欲しいところかと。


兵士たちは?


自衛隊をやや下回る程度かと。


「まずは、鴉軍は淡麗に指揮をとらせる。それと乃愛大将、我威也に第2大隊第1組を指揮させろ。この2隊で佐賀の兵達を殲滅する」


「「はっ!」」


鴉魔と乃愛が了解する。


「それから、私と乃愛大将、鴉魔大佐で七つ星の残りを相手にする…」


「少々お待ちを…」


悠希の発言を遮り、幕舎の中へ3人の人物が現れる。


「軍議中の入場及び話への横入り大変申し訳ありません。万死に値致しますこと承知の上ですが、敢えて参上させて頂きました」


「それはよい。で、何しにここへ?沙羅大将」


悠希は乱入者のひとり沙羅に来訪の目的を問う。


「この度、美鳥、朱音、白斗が討死したとの話を聞き、是非とも私にも参戦させて頂きたく参上した次第です」


沙羅は奴国中興に初期から参加していた美鳥、朱音、白斗を大変可愛がっており、討たれたと知り、いてもたってもいられなくなっり、打ち首覚悟で直訴に来たのだ。


悠希もそれを察したのか、それ以上は何も言わず、次の人物に問いかける。


「大和殿…大和はどうして?」


そう、大和が霞を連れて沙羅と共に来ていた。


「少し恩返しさせて頂こうと思いましてね。七つ星のひとりは私にお任せ願いたい」


悠希は霞に目を向ける。


「傷も完治とは言いませぬが、大和様ならば相手が七つ星程度ならば問題ないかと。それに少々お困りの様子。こういう時こそ恩を返す絶好の機会かと」


霞が答える。


「よし、乃愛と沙羅は文曲、廉貞を片付けろ。私と鴉魔、大和で残りを片付ける」


「「「「「はっ!」」」」」


「霧也よ、まずは傷を癒すために本国に戻したいところであるが、お主もこの戦いを見届けたかろう。磐土隊を帯道しやや後方にて見届けるがよい」


「はっ!」


こうして、ふたたび佐賀攻略に臨むのであった。


その頃、邪馬台国。


「蛭女よ、悠希の状態はどうなのだ?」


「一時期は荒魂が覚醒したのですが、今は和魂も覚醒し均衡を保っています。ほぼ完全な形で安定してしまっているようです」


「では悠希を使った計画は難しいか?」


「はい、計画はバックアップのプランに変更すべきかと」


「よし、善きに計らえ」


「はっ!」


…現在の倭国大乱のきっかけである我らの父母の暴走。父には妻である伊耶那美の死を幻想させ、母には夫である伊耶那岐の不誠実さを見せることにより大喧嘩に至らしめる。神代七代たる二人の争いは未曾有の変化をもたらした。


私は私を見捨てた二人が作ったこの国が安定することを許さない。


我が妹と共に。



福岡、執務室。


「…そうか。美鳥も逝ったか」


志韋矢は執務室で久恵州からの報告を聞いていた。


前日の報告で佐賀の激闘の経過、結果は聞いていたが、今朝になって美鳥も亡くなったことを聞いた。


「して、悠希はどう動く?奈々衣」


志韋矢はこの後の悠希の動きを奈々衣に尋ねる。


「恐らく我らと元帥府側は待機。参謀府側で対処するかと」


「理由は?」


「まだ第3軍団の入り口であり、ここで上位戦力は使うわけには行かないとの判断かと。特に第3軍団の長たる螺翁は弱き者には姿すら見せないとの話もありますので」


「なるほど。七つ星程度でさえ全ての戦力を晒さねば倒せないようなら我と戦う資格はない…ということか。まったく、戦闘狂が」


「しかし、実際のところ七つ星を倒せる戦力は揃うのでしょうか?乃愛大将、沙羅大将、鴉魔ちゃん、悠希様。ひとり足りない。悠希様が二人分相手するのでしょうか?」


螺羅愛は現実問題として将が足りないことを指摘した。


「どうやら大和が動くみたいじゃぞ」


「「「「うぉっ!」」」」


志韋矢、螺羅愛、奈々衣、久恵州の4人で話をしていたところにいつの間にか現れた徐如が口を挟む。


「徐如、大和が動くとは?」


志韋矢が平静を装い、徐如に問う。


「大和が静養先を離れ脊振山に向かったとの報告が来ています。その目的は恐らく恩返しに七つ星のひとりを倒すことかと」


志韋矢の問いに入り口のドアを開けて入ってきた白鳥が答える。


王太子府付きの諜報部隊は兎軍(通称ビット)であり、その長は久恵州が勤めている。が、実際のところもうひとつの諜報部隊が存在する。それが白鳥が率いている諜報部隊だ。

大和の監視は白鳥の管轄なのである。


「なるほどな。では佐賀攻略は何とかなりそうか。他に何かあるか?」


「三姉妹の様子が少しおかしいかと。具体的な行動はまだないようですが…」


久恵州が告げる。


「このタイミングでか。何かあったのかな。徐如どう思う?」


三姉妹が誰か(ほぼほぼ邪馬台国)の意思で動いていることは予測済みではあるがタイミング的にはもう少し先を想定していた。


「私の見たところ悠希の魂は安定したように思えます。恐らく悠希を使っての計画実施は難しいと判断し、予備の計画に切り替えたのかも知れませぬな」


確かに悠希からは一時期感じていた不安定さは無くなっているな。

何がきっかけとなったのか…。

まあ、結果的に現在安定しているなら原因は重要ではないか。


まさかきっかけが自分にあるとは思いもしない志韋矢だった。


「久恵州、三姉妹の監視を強化せよ。一部の者は監視していることがバレても構わん」


「はっ!」


久留米 親衛隊。


「思兼、我々は待機との事だが問題ないのか?」


「恐らく問題ないかと。八咫烏の報告では大和も動いたとのこと、乃愛大将、沙羅大将、鴉魔大佐、大和、悠希軍師長で対応するでしょう。我々はその後の戦いに備えるべきかと」


八咫烏やたがらすは、思兼が参謀就任の際に父である悠希から与えられた諜報部隊である。鴉軍の中から選抜され思兼直属の部隊となった。


「具体的に何を準備するべきかな?」


「隊長クラスの強化。闇淤加美、闇御津羽はともかく、石拆、根拆は、明らかに力不足。今後の戦いに不安が残ります」


石拆、根拆は、糟屋の戦いで第1軍団第1組の副官相手に重傷を負わされていた。

相手も強者であったことは間違いないが、七つ星の3武将…貪狼、巨門、破軍よりやや下回るレベルと想定される。


徴兵部隊の隊長よりは力があるが、元帥直属の部隊である親衛隊の隊長としては物足りない。


「特訓か?」


「入れ替え戦は如何でしょう?」


「入れ替え戦?」


「はい、石拆、根拆、闇淤加美、闇御津羽の4人に私の推薦する2名を加えた6名でバトルロイヤルで上位4名を決めます。破れた2名は第2組、第3組の副官となる。また、この入れ替え戦は定期的に行うとすればモチベーションが下がる心配もないでしょう」


強きものが隊長となる。

実にシンプルな発想であるが一抹の不安がある。


悠希も懸念していたが力が正義となってしまうことが大きなリスクとなる。


「尾羽張様が懸念されていることはわかります。力が正義となり悪しき心に囚われたものが台頭する懸念。しかし、力無き者が台頭するのも兵達を守れず危険にさらすことになります。問題は『強さ』の定義かと。心技体全てにおいてバランスよく優れているものは人々の心を掴みます。また、技、体に優れても心がないものは忌み嫌われます。入れ替え戦においては心技体の総合力で真の強さを持ったものは誰かを判断致しましょう」


「そうだな、誰もが納得する強さを示せばよいのだな。して、思兼が推薦する2名とは?」


「手力男と宇受女の2名です」


手力男(たぢからお♂)

腕力に長けた武将でありながら、様々な武器を使いこなす器用さも持ち合わせる。


宇受女(うづめ♀)

普段はお茶目な女の子であるが、戦闘になると狂戦士となり相手を叩きのめす。但し、相手が戦闘意欲がないと判断すると必要以上の攻撃は行わない。


「まだ若い二人ですが試してみる価値はあるかと思います」


「よし、切磋琢磨も必要であろう。直ちに実行に移せ。軍師長の佐賀攻略が終わるまでには体制を固めるぞ!」


「はい」


こうして、元帥府も力を付けていくのであった。



脊振山の陣に悠希率いる鴉軍の姿があった。


鴉軍を中心に左右には自衛隊第1大隊第1組沙羅隊、第2大隊第1組乃愛隊が配置されている。


本陣である脊振山には、青龍隊・玄武隊(両隊は生き残りを霧也が率いている)、第1大隊 第5組磐土隊、第6組水虬隊、第7組矢矧隊が控える。


対して伊都国側は、悠希の予測通り生き残った七つ星全てが砦外にて戦闘態勢に入っていた。


中央に貪狼、巨門、破軍が配置され、左右に文曲、廉貞が控える。

これも予定通り。


兵数は中央に300、左右に200ずつと分配したようだ。


奴国側は、中央に鴉軍の500、左右の沙羅隊乃愛隊はそれぞれ250ずつ。


さあ、第2ラウンドを始めよう。


「全軍突撃~っ!」


オオオオオオッッッッ~!!!


悠希の号令により、一斉に突撃を開始する。


「返り討ちにせよ!」


オオオオオオッッッッ~!!!


こちらは破軍の一声だ。


前回同様、将は将同士、兵は兵同士で激突する。


まずは中央。


悠希 vs 貪狼


悠希の長剣が一閃。貪狼の首が翔ぶ。


「ふん。こんなものか、あっけない」


まさに圧倒的。実は悠希は強いのだ。


鴉魔 vs 巨門


両者とも素早い体術が武器である。

はた目から見ていると見失いそうになる。


どうやら一進一退の戦いを演じているようだ。


大和 vs 破軍


「大和様…いや、大和よ。裏切り者とは言わぬよ。1度是非戦ってみたかった。冥土の土産に螺翁様より七つ星を預けられた我が力をみるがよい!」


「Out of Gantyu」


大和の拳が唸りをあげ、破軍の頭を吹き飛ばす。


破軍は螺翁に特別認められた訳でなかったことを記しておく。


左翼に目を向ける。


沙羅 vs 文曲


沙羅は太刀を構え、文曲はトンファーを構える。


「トンファーか。そなたは文曲とやらだな。朱音の仇とらせて頂く」


「そうだ、私が文曲だ。仇打ちか、戦いに無駄な感情を持ち込むものには死あるのみ。ただ戦うのみだ」


沙羅の激しい攻撃を文曲が躱している展開だ。


右翼では。


乃愛 vs 廉貞


互いに太刀による攻防。


廉貞が早くも仕掛けてくる。


一気に激しさを増す攻撃に若干戸惑いながらも冷静に対処する乃愛。


激しい攻防の中、一瞬の隙を見つけて乃愛の突きが廉貞の胸に突き刺さる。


しかし、まだ浅い。


廉貞は何とかこらえて、さらに激しく攻撃を加える。


既に見切っていた乃愛は廉貞の太刀を弾き、袈裟斬り一閃。


廉貞はその場に崩れ落ちる。



兵同士の戦いを見てみよう。


こちらはなんと一方的な展開だった。


中央は500 vs 300で数の上では奴国有利であるが、先般徴兵部隊を圧倒した七つ星配下の兵士たち。


しかし、個々の能力も鴉軍の敵ではなかったようだ。数、能力ともに上をいく奴国鴉軍の圧勝で伊都国中央軍を殲滅した。


左右の両隊も個々の能力でほぼ互角。


士気の差で奴国側が圧倒し、こちらも伊都国側が全滅という結果に終わった。



さて、残る戦いはふたつ。


一方の沙羅と文曲の戦い。


沙羅は激しい攻撃に緩急をつけ始めた。

文曲は必死で躱すものの、態勢を崩してしまう。


沙羅は一気に決めようと間合いを詰める。


すると、文曲はニヤリと笑い、懐から短刀を取り出し、沙羅に突きつける。


「ふん、下らん手だ」


沙羅は左手で小太刀を抜き取ると同時に、短刀を文曲の手首ごと切り落とす。


さらに追撃、一刀両断。


文曲の身体はふたつに別れて崩れ落ちる。


残るは鴉魔と巨門。


互いに譲らぬ攻防を繰り広げていたが、巨門が突然態勢を崩してしまう。


それを見逃さず鴉魔は小太刀を横に一閃。


巨門は首のない身体を眺めながら眠りについた。


こうして、佐賀の攻略は完了した。


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