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第12話 奴国の再編成と伊都国

不弥国が滅亡して1週間が経過した。


海道は既に智恵を中心に奴国統治が浸透している。


その他の地区は随時国勢調査から実施予定だ。


ちなみに現在は、各将を以下のように配置している。


宗像→緋鼻、北九州→上筒、小倉→中筒、門司→破卍、豊前→底筒、朝倉→磐土、久山→水虬、香椎→神威


※犬鳴山、足立山、貫山は陣を破棄している。


直方 指令室 ~


「志韋矢、各地区の様子はどうだ?」


「特に大きな混乱もなく、日常に戻っています。ただ今後の統治に対してやや不安がある…と言った感じですね」


まあ、そうだろうね。

あまり長い時間をかけた戦いではなかったし、戦闘行為は結果的には最小限で済んだしね。


そろそろ、頃合いかな。


「野椎よ、ここは貴女に任せても良いか?」


「はっ、問題ありません」


「よし、1度王都に戻るぞ。凱旋だ!」


「「「「「はっ!」」」」」



奴国王都 円卓会議室 ~


王帥升、丞相智恵、軍師長悠希に加え、香椎を希鈴に任せて戻って来ている元帥神威が集まっていた。


「悠希よ、良くやってくれた。まずは不弥国を制圧することが出来て何よりだ。取り急ぎ、戦後処理を含めた直近の動きはどうするのだ?」


帥升が悠希を労いつつ、今後の動きを確認する。


「ありがとうございます。これも皆が頑張ってくれたおかげです。まずは論功行賞ですね。そして、内政面では、旧不弥国の統治体制を奴国の体制に組み込むところから、かと。軍事面では、所帯も増えるので大規模な再編成が必要かな」


悠希の言葉に智恵と神威が頷く。


「で、この場に呼びたい人物がいるのですが、よろしいでしょうか?」


「うん?まあ、この場は円卓会議の席だ。必要に応じて呼ぶがよい」


悠希は立ち上がり、会議室を出ると二人の人物を伴って現れた。


「ひとりは元不弥国丞相の塩椎。もうひとりは志韋矢大佐」


ふたりが膝を付こうとすると…。


「よい、この場でそのような形式的なものは不要だ。まずは席に着くがよい」


帥升はそれを止め着席を促す。


円卓会議室で行われる会議は自由発言の精神から極力儀式めいたものを略している。

言葉使いすらざっくばらんが許される。


「「はっ!」」


ふたりが席に着くのを見届け、悠希が切り出す。


「まずは内政面のことなんだけど、旧不弥国の丞相だった塩椎にも手伝って貰おうと思っている。能力的なところは問題なし。後はこちらの考え方に賛同できるか、なんだけど、興味深い話を聞いてね」


悠希は塩椎に目配せをすると、塩椎が語りだす。


「私は不弥国で丞相をしていた塩椎(しおつち♂)と申すもの。以後お見知り置きを。さて、奴国に降服した時の尋問の際に話したことが悠希様に関心を持って頂いたみたいです」


塩椎が語ったことは、開戦直前に久久能智に聞かせた管理体制についてだった。


その内容が、奴国の統治体制を見直す際に智恵が語ったこととほぼ同じであった。


「うん、良いわね。是非協力して欲しいわ」


「智恵がそのように申すなら私には異論はない」


帥升の後押しまであるとなればほぼ決まりだ。


そこで智恵がさらに話を発展させる。


「丞相府の体制として、丞相を左丞相、右丞相に分ける。また、丞相府の総取締として相国を新設する。相国に私、左丞相に理恵、右丞相に塩椎をあてる。いかがでしょうか?」


「国土が広がるし、その体制の方が統治しやすいか。良いのではないか。正式には後日ちゃんと任命するとしよう」


智恵の案に帥升が賛成の意を示す。


「わっ、私などがそのような高い地位についてもよろしいのですか?」


塩椎が驚いた表情で問う。


「智恵が、その地位なら思い存分力を発揮出来ると見込んだんだ。自信ない?」


悠希がニヤリとしながら、塩椎を挑発する。


「いや、なんの。期待以上の働きをして見せましょう」


塩椎は、満面の笑顔で答えた。


「内政面での体制はこれで行けるな。問題は軍事面の体制か。それで志韋矢を呼んだのだな?」


帥升は悠希に問う。


「そうですね。あっ、この場では帥合様で良いかと。帥合様、どこまでが貴方の正体を知っていますか?」


悠希の問いに対して、志韋矢こと帥合はマスクを外し答える。


「なんだか神威がすごい顔をしているのが気になるが。先程までは父上、悠希、智恵、鴉魔、螺羅愛こと夢馬、後は徐如だな。白鳥あたりも知っていると思われる。そして、今、神威と塩椎が追加されたな」


「では、いましばらく表向きは志韋矢で行きましょう。『今回の手柄により独立機動隊を任せる』ということで」


「既存メンバーが不満を持たないか?」


「大丈夫ですよ。何だかんだで一番戦功上げてますし、北部を制圧した部隊にチーム名を付けるみたいなものですから。そして、体制案、編制案がこんな感じです」


元帥:神威

少将:希鈴、沙羅、乃愛

大佐:美鳥、白斗、朱音、霧也、

博見、志韋矢、磐土、水虬

少佐:鴉魔、徐如

大尉:渡連、緋鼻、裸流、破卍

少尉:上筒、中筒、底筒、螺羅愛、久恵州


軍師長:悠希

軍師:野椎、奈々衣、白鳥


元帥直属部隊 100 … 隊長:神威元帥

特別遊撃隊 100 … 隊長:希鈴少将

特別機動隊 100 … 隊長:乃愛少将


治安維持部隊 … 隊長:沙羅少将

王都警備隊 100 隊長:沙羅少将

磐土隊 50 隊長:磐土大佐

水虬隊 50 隊長:水虬大佐

破卍隊 50 隊長:破卍大尉

上筒隊 50 隊長:上筒少尉

中筒隊 50 隊長:中筒少尉

底筒隊 50 隊長:底筒少尉


独立機動隊 … 隊長:志韋矢大佐

直属部隊 50 … 隊長:志韋矢大佐

徐如小隊 30 … 隊長:徐如少佐

渡連小隊 50 … 隊長:渡連大尉

緋鼻小隊 50 … 隊長:緋鼻大尉

裸流小隊 50 … 隊長:裸流大尉


徴兵部隊

青龍隊 500 … 隊長:青龍大佐(美鳥)

白虎隊 500 … 隊長:白虎大佐(白斗)

朱雀隊 500 … 隊長:朱雀大佐(朱音)

玄武隊 500 … 隊長:玄武大佐(霧也)


博見は希鈴の副官。

螺羅愛は志韋矢の副官に、奈々衣、白鳥は軍師として、独立機動隊付きの参謀役を担う。

久恵州は、独立機動隊付き諜報部隊→兎軍(とぐん:通称ビット)の隊長。

不弥国徴兵については統治体制が落ち着き次第編制予定



「神威さん、いかがですか?」


「特に問題はないかな。智恵、旧不弥国の徴兵はいつ頃から可能になるかな?」


「1年…ですかね。そこから随時ですね」


「伊都国攻略時期は?」


「不弥国攻略とは違い、徐々に進攻する感じです。伊都国は不弥国とは違い、国がしっかりしているので、攻略は簡単には行きません。戦いの規模も桁が変わります。当面は統治体制の浸透と同時並行ですね」


智恵、帥升、悠希の順で発言。


「しっかり足元を固めてじっくり確実に…だな」


「あっ、そうだ。神威さん、香椎の南東に森江山と言う山があります。ここが伊都国攻略の最初の拠点になりますので築陣をお願いします。智恵、香椎と久山が補給線の要になりそうだ、そこらへんよろしく」


「承知した」


「はい、わかったわ」


戦後処理のその後のトピックス


・論功行賞および新体制の公布が行われた。


・海道以外の地区でも、国勢調査、検地が実施され、地区ごとに隣保制度が導入されていった。


・砦があったところを地区と呼称(海道地区、宗像地区 など)を変更している。


なお、戦争により富裕層や地元有力者が亡くなっているか力を削がれていたため、新制度への移行はスムーズに進んだことを記しておく。


-----


邪馬台国 王の間


トントン…


「天照(あまてらす♀)様、よろしいでしょうか?」


「蛭女(ひるめ♀)か…、入れ」


「不弥国が奴国により滅亡いたしました」


「予想より早いようだな」


「不弥国側が想像以上にダメだったのと、奴国側の帥合が予想より成長しているためかと」


「後ろにいる徐如の存在…か」


「はい、斬りますか?」


「いや、徐如は手強い。暗殺はほぼ無理だろうな。伊都国にいる奴との戦いまでは泳がして構わんだろう。それより、草は順調なのか?」


「順調ですね。親子でそれなりの役割を任されているものもおりますしね」


「まあ、長年に渡る活動の成果だな。住吉三姉妹はどうか?」


「こちらは帥合、徐如あたりには怪しまれているようですね。確信までは持たれてはいないようですが」


「餌さとしては調度よいか…」


「その通りかと」


「神威とか申すものはどんな感じか?」


「やはり、悠希への影響は大きいですね。遠征が増えて智恵との接触が少なくなりますが、神威が側にいることにより和魂の力が戻り、荒魂が本来の力を取り戻す恐れがあります」


「早めに始末しろ。伊都国攻略戦の最初の犠牲者とするか」


「承知致しました」


「では、引き続き頼む」


「はっ」


-----


伊都国いとこく

所在:筑紫島北部中央から東部

国主:爾支(にし♂)

人口:60,000


総司令:友里亜(ゆりあ♀)

参謀長:沙織(さおり♀)

四天王(四大軍団軍団長)

├ 大和(やまと♂)

├ 侍龍(しりゅう♂)

├ 螺翁(らおう♂)

└ 泥凰(でぃお♂)


内政府

├ 咲良(さくら♀)

├ 陽菜(ひな♀)

└ 華燐(かりん♀)


伊都国 首都 多久 ~


軍議の間にて


「友里亜よ、不弥国の滅亡、呆気ないものだな。不弥国が不甲斐ないのか、奴国が強いのか」


「どちらもあったのでしょう。不弥国の人口から兵は2,000以上は集められたはず。その兵力を海道に集中させれば良かった。それだけで、奴国の連中を閉じ込めておけたのです」


「奴国の連中は北部より船による進攻もあったそうだが?」


「基本通り海岸の警戒を行っていれば良かっただけの話。唯一驚いたのは不弥国の諜報部隊が完全に無効化されていたことですね、この辺りは油断できないところです」


「不弥国の対応の不味さ、奴国の諜報部隊の優秀さ。この辺りが短期での不弥国滅亡に繋がったか。では、我が国としては?」


「不弥国の敗因の根本は人材不足もしくは使える人材を十分に活用出来なかったことにあります。我が国ではその辺りは問題ないでしょう。また、奴国は不弥国を吸収したことにより、今後はじっくり確実に勢力拡大を図ると思われます。従って我が国としては、その都度撃破し相手戦力を削ぎ落として行きましょう」


「守りが主体か」


「西に末盧国があり、現在は同盟関係にあるものの油断できない邪馬台国が南に控えている以上、積極的な攻めの姿勢は致命的な隙を生みかねません。今はけんに徹する時かと」


「なかなか難しい舵取りが必要だな、頼んだぞ」


「お任せを。さて、まずは大和。貴方の出番ですよ?」


友里亜は、四天王の一角である大和を指名する。


大和は、奴国(旧不弥国)との国境付近である糟屋、福岡を拠点としている第1軍団の軍団長を務める武将である。


第1軍団の装備は、槍と青銅の剣であり、最もオーソドックスな装備と言える。

攻撃力に重点が置かれており、特にスピード重視であるため、突破力は半端ない。


防衛戦となる今回の戦いにどのような影響が出るか。


「友里亜様、お任せを。敵は恐らく森江山辺りから進攻してくると予想します。我が軍としては、まずは、乙犬山と糟屋から牽制といったところでしょう」


大和は自分の予想を口にして大まかな方針を示して見せる。


「恐らくそんなところでしょう。油断無きよう努めなさい」


「はっ」


「ところで友里亜よ、朝倉から久留米への進攻の可能性は?」


王多模が疑問を呈す。


「投馬国の牽制も考慮に入れなければならないのと、将の不足により恐らくないでしょう。侍龍よ、念のため警戒だけは怠るな!」


友里亜は可能性は低いと判断。しかし、念のた第2軍団長の侍龍に警戒を命じた。


この辺りは慎重な友里亜らしい采配である。


かくして、倭国大乱期最大の戦い、奴国伊都国戦争が、幕を開ける。


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