あらすじ
ーポタッ…ポタッ…。
水滴が弾ける音が埃臭い鉄筋コンクリートの部屋に響く。その音の正体がただの水滴であればよかったのだろうけれど、それは僕の血液だ。殴られた際に口の中を切ってしまったようだ。酷く痛む体中のどこかの骨が、折れていないといいなあ、と僕は考えていた。
「新聞記者くん、お前さぁ、いい加減吐かないと死ぬよ?」
言葉を発した彼は多分20代半ば。金髪に黒いジャージ上下、チャックは大胆に開けていてVネックのインナー。首には金ピカに光るネックレスをしている。まくった袖からは、いわゆる”彫り物”が顔を覗かせていた。
ー彼のいう通り、いい加減吐かないとおそらく殺される。こいつに。
「・・・。」
そんな彼は僕を拉致して監禁している。おそらく4畳程度の広さしかない窓もないコンクリートむき出しの部屋。多分地下だ。おまけに暴行まで加えているときた。最悪だ。
「なんでさあ、ウチの”若いの”のケータイ、持ってたわけ?」
彼が”ケータイ”の画面を、縄で縛られて自由の効かない僕の視界のど真ん中に入れた。これ見よがしに、彼も顔を覗き込む。
「・・・。」
Vシネなどで聞いたことある言い回し。”若いの”。本当にこの業界の方は使うんだ、と感心する気持ちと、お前も十分若いだろうが!とツッコミたくなる気持ちのせめぎ合いだった。
「・・・うし。お前にツレいたよな。そいつに電話して話した方が早いか?」
…多分、出ない。いや、絶対に電話に”ツレ”とやらは出ない。
「・・・。」
何故なら、あいつは…。
あいつは、人間なんかじゃない。
なぜ僕がこんなチンピラに監禁されているか。事の経緯を説明しよう。
ーーーーーー”微動”。