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『世界改変のお知らせ』  作者: ヤツフサ
9/11


(どうすれば……どうすれば……!)


 荒い息を吐きながら、握ったままだった包丁を懐中電灯で照らしてみる。

そうしてみると、折れた理由はすぐにわかった。

包丁自体が、折れた断面から、さらさらと砂糖のような粒に変わっていっているのだ。


(……なんだ、これ……!)


 この包丁は、先日まで普通に使用していたものだ。

問題なく、固いものも切れていた。

それが、どうして……。

そこで、ようやく思い出した。


(……チラシに書いてあった、今ある武器は全部使えなくなるってやつか……!)


 そうだ。そう書いてあったのだ。今あるものは、全て無効化されると。

本当だったのだ。全部、本当。化物も、武器の無効化も、全て本当。

全て、本当だった。本当に、起きてしまった……!


「……チラシッ……チラシ!」


 確認せねば。もう一度、確認せねば。

必死で部屋の中を照らして、机を見つけ出し、その中をもう一度探る。


(あった、チラシだ……!)


 折り曲げてしまいこんでいたチラシを引っ張り出し、懐中電灯を当てて項目を確認する。

あったはずだ、大事な項目が。今、いちばん大事なもの、武器を手に入れる方法が……!


「……あった……!」


 項目の中ほどに、武器の入手方法という項目があった。


「”武器を手に入れるためには、まず、ステータス画面を開きます”……?その、ステータス画面はどうやって開くんだよ!!」


 落ち着け。一度見たはずだ。全部目を通したのだ。

そして、そのステータス画面とやらが一番馬鹿らしいと思ったのだ。

人それぞれにステータス画面を用意します、などと馬鹿らしいにも程がある。

だが、今はそれが何よりも必要な情報だった。


「あった……ステータス、オープン!」

 

 項目の『ステータス画面を開くには、ステータスオープンと唱えてください』という一文に沿い唱える。

間抜けだ、などと考えている暇もない。

祈るような気持ちで待つと……一瞬の間の後、目の前に透明なステータス画面が表示された。


「……ほんとに出た……これが夢なら、いい加減覚めてくれよ……」


 ゲームのような形式で表示された自分のステータス画面を見つめながら、半泣きで呟く。

だが、夢だろうがなんだろうが今はそれに縋るしかない。

まずは、パラメーター。

筋力、頑強、敏捷、耐久、反応。

幾つかの項目があり、それぞれに5だとか3だとかの数字がついているが、今はそこではない。


(所持品……これでもない。特殊スキル……これでもない。ショップ……これか!)


 一番下についていた項目にショップの文字を見つけ、指で押す動作をする。

たしか、武器もポイントとやらで買えると書いてあったから、おそらくはこれだ。

やがて画面は無事切り替わってくれ、ずらずらと武器のリストが現れた。


「……ナイフ?刀……!?違う、そういうのじゃない!もっと、近代的なのはないのかよ……!マシンガンとか!」


 最初に表示されたのは、近接武器の項目だった。

冗談じゃない、あんな化物にもう一度近づくなんてゴメンだ。

できることならば、安全な距離から仕留めたい!

やがて上のタブに遠距離武器の項目を見つけ、押し、並んだ弓やクロスボウの項目を引き下げていき、そこに


「あった……!」


 ピストルを見つけた。

いや、正確にはピストルと呼ぶのかは知らない。それは警官が持っていそうな、恐らくオートマチックだとか言う形の銃だった。

画像の横には、なにか型番のようなものが書いてあるが、銃に詳しくない俺には分からない。

わからないが、撃ち方ぐらいは知っている。これなら……と、勢い込んで購入ボタンを押す。

だが。


『エラー。購入できません』

「なっ……!?」


 押した瞬間、ブーッと小さいエラー音とともにそんな文字がポップアップされた。

何故だ。慌てて何度も購入ボタンを押すが、毎回エラーが出るだけだ。

ドッと嫌な汗が吹き出してくる。なぜだ。なぜだ。

必死で理由を考える。何か情報が足りないのかと画面中を確認すると、右上に『所持ポイント』の項目があるのを見つけた。


「……所持ポイント……1000……?」


 1000。そうだ、チラシにも書いてあったではないか。

最初は皆様に1000ポイントをプレゼントいたしますと。

まさか、と思いピストルの下にあった表示を見てみると……そこには『必要ポイント:5000』と記載されていた。


「……5000!!」


 足りない。全然足りない。

今あるポイントの五倍だと?そんなバカな。

慌てて確認するが、それより下にある火器の類は、全てそれより上のポイントを要求していた。

1万、1万5000、とんで10万、100万……とてもじゃないが、手が出ない。

……と、なれば。


「……ナイフだとか、弓だとかの原始的な武器で戦えってのかよ……!」


 目の前が真っ暗になった。

ふざけている。この時代に、原始人のように武器を担いで化物と戦えというのか。

こんな、馬鹿な……こんな……。


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