表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
『世界改変のお知らせ』  作者: ヤツフサ
3/11


「ねえ、聞いた?あの話」

「うん、聞いた聞いた。……今夜の12時に、世界が滅びるってやつでしょ?」


 12月10日の朝。席についた直後に、クラスメイトの女子たちがそんな話をしているのが聞こえた。


「え、私が聞いたのは、今日で世界が変わっちゃうって話だけど」

「私もそう聞いた。例のイタズラのチラシのことでしょ?どうして滅びるとかになってるの?」


 違う誰かがそう言い、聞かれた女子は神妙な面持ちで


「それが、なんだかある一定の読み方をすると、違う予言の文章が出てきて、それによると、大洪水で日本は全部海に沈んじゃうんだって……!」


 と、答えた。


「やだ、やめてよ!」


 別の女子が嫌そうな顔をしてぺちりとその肩を叩く。

話している内容は酷いものだが、しかしその表情はそこまで深刻ではなかった。本気で言ってるわけではないのだろう。

別の方では、男子のグループがヘラヘラと笑いながら同じことについて話してあっている。


「いやー、マジで今夜、何があるんだろうな?オレ、楽しみ!」

「ばーか、なにかあるわけ無いだろ。なに本気にしてんだよ」


 そう、もはや『世界改編のお知らせ』は公然の事実と化していた。

噂を聞きつけ、誰もが家でそれを見つけだし、不安がったり面白がったりしているのだ。

ネットでは物凄い勢いで拡散して、神からの掲示だとか世界一の金持ちのイタズラだとかまことしやかに語られ、もはや一つのお祭りのようにすらなっているらしい。

その上、これだけの規模の話なのにテレビやラジオと言った公共の電波がそれらを一切報道しないことときているから、それがますます怪しさを演出している。

面白がって、これが事実だから政府が隠蔽してるだとか、マスコミはすでに宇宙人に操られていて黒幕はそいつらだとかここぞとばかりに言いたい放題であり、だがただ一つ共通していることは、皆それを大して信じてはいないということだ。


(まあ、あんなチラシじゃ信じろという方が無理だけどな……)


 中にはそれを真実だと信じて疑わず、都市部は危険だから大量の食料を持って山に避難するだとか、有り金叩いて食料と水を確保しただとかそういう人間もいるようだが、大体は笑いものになっている。

昔、ノストラダムスだとかいう人間の残したものが人類滅亡を示す預言書だとか言って随分と大騒ぎになったらしいが、それと同じだ。

皆、内容が大事なんじゃない。話の種として便利だから使っているだけだ。

それこそ、今夜には何も起きず皆がやっぱりなと笑い合い、来年にはもう忘れられている。そういう類のことでしかないのだ。

まあ、中にはそれが本当であってくれと願う人間も沢山いるのだろうが……この、自分のように。


「でもよ、たしかにおかしいんだよな、あのチラシ」

「おかしい?おかしいって何がだよ」

「だからさ、範囲が広すぎるだろ?配られる範囲が、さ。日本だけで考えてもあれだけ配ろうと思ったら大きな会社を使わなきゃダメだ。でもよ、聞いたらどこの会社もそんなことやってねえって答えるらしいんだよ」

「……守秘義務かなんかで黙ってるだけじゃねえのか?」

「それなら、答えられませんって言うだろ?でもさ、なんでか、どこも必ず『うちは請け負ってない』って答えるんだってさ──」



評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ