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異世界の闇軍師  作者: まさな
第七章 保護者ですから

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第二話 名前はクローディア

2016/11/22 若干修正。

 銀髪の美少女はクロだった。

 黒猫と思っていたクロは、実は人間だった。


 ……………。


 や、前から怪しいとは思ってたし?

 

 大丈夫、クロの前ではそんなに変な事は言ってないし、していない。

 セーフだ。色々と。

 クロが時々ティーナの部屋で寝ていなかったら危なかった。

 ふう。


「それで、名前なんやけど、クロちゃんのままでええん?」


 ミネアが聞く。


「はい、私は、その方が」


 クロはこの名前が良いらしい。とは言え、猫用の名前なんだよなあ。

 とは言え、クロで慣れちゃってるから、エステルと呼ぶのもしっくりこない。

 どうしてシャルロットとか、詩織とか、女性名にしなかった。

 俺のバカ!


「本名を名乗らせるのは危険だし、クロならクローディアで良いでしょ」


 リサが言うが、クリスタニアから刺客でも送られてくると心配してるんだろうか。

 刺客が本当にあり得そうなのが嫌だなあ…。


「あ、クローディア、良いわね。それなら愛称はルディの方が自然かもしれないけど」


「いえ、ティーナ様、呼ばれ慣れているので、クロが良いです」


 はっきり主張したクロ。


「そ。じゃ、クロね」


「はい」


「でも、私達に様付けは要らないって言ったでしょ?」


「はあ、ですが、呼び捨ては…ちょっと」


 クロは育ちが良すぎるせいか、気弱なせいか、これは慣れるまで時間が掛かりそうだ。


「あまり高貴っぽくやられても私達に迷惑が掛かることになるから、そこは気を付けなさいよ、クロ」


 リサが言うが。


「は、はい」


「何もそんな言い方しなくても。でも、姿はこのままで大丈夫かしら?」


 ティーナが心配する。


「髪も伸びていますし、装飾具を付けなければ目立たないかと。王宮ではいつもティアラをしていたので」


 クロがそう言うが、凄い美少女だから、一目で分かりそう。 


「ダメダメ、銀髪で目立つし、服はローブを着るとして、髪型も少し変えた方が良いわね」


 リサが言う。


「あ、元の髪型が、結い上げでしたので…」


「そ。じゃ、まずは服をどうにかしましょう。ローブの下だから、シルクでもいいけど、派手なのはダメよ、ティーナ」


「分かってるわよ。じゃ、赤色のローブにしましょうね、クロちゃん」


「分かってねえじゃねえか!」


 そこは物言いを付けておく。


「ええ? でも、黒色もダメよ」


「別にそれはいいが…」


 パーティー全員が黒いローブで統一してたら、アサシン軍団に見えちゃうかもしれないし。


「は、はあ…ダメですか」


 クロはちょっと残念そう。

 魔術士チームのローブの色だが、今は全員バラバラで、俺は黒色、エリカは紺色、ミオは青だ。

 ま、自分の好きな色がいいじゃんね?

 赤は止めるけど。


 全員で連れだって服屋に行き、女性陣があーだこーだとかなり長く揉めつつ、クロの服や各自の服を選んだ。

 結局、クロは、白色と赤色とピンク色の普段着を一式ずつ購入し、ローブは空色にした。

 色が薄いので派手では無いし、本人も気に入ったようなのでそれでいいだろう。


 続いて冒険者ギルドでクローディアの名前で登録。

 クロはもらったカードをニコニコしながら眺めていた。


「じゃ、神殿に行こう」


 クレアが待っている約束だ。もう呪いは解けちゃったけど。


「そうね。お礼は言っておかないと」


 神殿に行って事情を説明すると、クレアもクロの呪いが解けたことを喜んでくれた。


「本当に良かったです。今まで大変でしたね、クローディアさん」


 クロをそっと抱きしめるクレアは優しい人だ。


「は、はい…! うう」


 クロもまた泣きだしちゃってるし。落ち着いたところで、お礼についてティーナが切り出す。


「それで、お礼の代金ですけど」


「ああ、いえ、要りません。これもファルバスのお導きですから」


 聖職者の(かがみ)だなあ。立派です!


「でも、高価なアイテムを使って、無償ってのも胡散臭いわね」


 リサが凄くひねくれた見方をする。しかも聞こえてるし、失礼だろ!


「クレアさん、これは寄付と言うことで」


 金貨を一枚、差し出してみる。実費としても足りないだろうが、あまり多くだとこの人も受け取らないだろう。


「ああ、それは良い心がけですね、ユーイチさん。きっと神様もご覧になっておられますよ」


 そう言われると、ちょっと心苦しいよね。クレアにいい顔を見せようという(よこしま)な動機だし。 


「い、いえ…」


「どうでもいいけど、早く受け取って、その手を離して下さい」


 ティーナが俺の手を握ったままのクレアの手をどける。


「失礼だろ、ティーナ。何か、神聖なパワーをくれてたのかもしれないし」


「ええ? パワーって」


「ふふ、ごめんなさい。ただ単に、ユーイチさんの手を握りたいと思っただけで、宗教的な意味はないですから。うふふ」


 おおう、なんか体温が上がる。

 俺の手で良ければいくらでも握って下さい!


「ちょっ、ええ? ユーイチも、そこで手を差し出さない」


 ティーナに邪魔されてしまった。


「じゃ、もう用事は済んだでしょ。帰るわよ」


 リサが言う。


 えー? もう?


「あの、みなさん、せっかくですから、お茶でもいかがですか」


 金髪の聖女クレアがありがたいお誘いをしてくれた。


「是非!」

「お断りします」

「要らないわ」


 ぬう…。


「あら、それは残念ですね…」


「いえ、クレアさん、僕はご馳走になりますから。お前ら、先に帰ってていいぞ」


「ちょっと。リーダー権限、発動するわよ」


「いや、ティーナ、なんでそんな断ろう、断ろうと、するんだよ」


「む。と言うより、クレアさん、なんでユーイチにつきまとおうとするんですか?」


「魅力的だから、でしょうか、うふっ」


「は?」


 俺のモテ期が来たかもしんない。だが、みんなは怪訝な顔になってるし、そこは分からないでもないけどね。


「いや、ティーナ、そこまで俺の魅力を全否定するような聞き返しはさあ…」


「良いところもあるけれど、初対面でこれは怪しすぎよ」


「そうね」


「そうニャ、そうニャ」


 ほぼ全員が頷いてるし、むう。


「と言うわけで、全員、戦闘用意。そして、ユーイチ、例の鏡を出して」


 ティーナが信じられないことを言い出す。


「ばっ! お前、失礼だろうが」


「呪いを解いたという鏡ですね。私も一度、見てみたいので、見せて頂けませんか?」


「はあ、それは構いませんが…」


 クレアが見たいと言うので、釈然としないが、宿の俺の部屋まで案内。


「お前、悪魔じゃ無かったら、きちっと謝れよ?」

 

 途中、小声でティーナに言う。


「ええ、悪魔じゃ無かったらね」


「ふん」


 部屋にクレアを招き入れ、リュックから真実の鏡を出して、渡す。


「なるほど、これが。とても強い破邪の気を感じますね」


 そう言って覗き込んでにこっと笑うクレアは、正真正銘、人間だ。

 ふう、ほっとしたぁ…。


「む。疑ったようで、すみませんでした」


 ティーナがまだ納得行かなそうな顔だが、軽く頭を下げて謝る。


「いいえ。お気になさらず。では、ユーイチさん、お返ししますね」


「はい」


「皆さんはこれからどちらに?」


 クレアが聞く。


「今のところ、決めていません」


 ティーナが答える。


「しばらくこの街に滞在を?」


「いえ、そのつもりは無いですから」


 滞在しても良いだろうに、ティーナはきっぱり言った。


「そうですか。では、冒険者と見込んで皆さんに依頼(クエスト)を出したいのですが、お話を聞いてもらえます?」


「ええ?」


「良いだろ、ティーナ、話を聞くくらいは」


「そうね、話を聞くくらいは良いでしょう」


 リサが決定気味に言う。


「ありがとうございます。私は巡礼の旅の途中なのですが、女の一人旅というのもなかなか。そこで、次の街まで皆さんのパーティーに同行させて頂きたいのです。もちろん、報酬は支払いますし、回復魔法も使えるから、足手まといにはならないと思いますよ?」


「いくらかしら?」


 リサがドライに聞く。渋い顔だが黙り込んでいるティーナは、反対するつもりは無いようだ。その辺がお人好しというか、ティーナの良いところだよね。


「金貨一枚でいかがでしょうか」


 一万ゴールドとは。ピラミッドで大金を得た俺たちにとってはどうと言うことは無いお金だが、次の街までの護衛料金としてはちょっと高すぎる気がする。相場は知らんけど。


「ええ? あなた、誰かに狙われてたりするの?」


「いいえ。妬まれることは多いですが、命までは」


「どうかしらね。厄介事を持ち込むなら断りたいところだけど…どうする?」


 リサは気が進まないようだが、みんなの意見を聞いてみるようだ。


「俺は賛成だ。これだけ優秀な司祭様が困っておられるのに見捨てるとか、だいたい、クロの恩人だぞ?」


 クレアの解呪の効果か、真実の鏡が効いたか、曖昧なところだが、クレアのヒントが無ければクロはまだ猫をやっていたはずで、恩人には違いない。

 そこをしっかりアピール。


「私は構わんぞ。旅は道連れ世は情け、とも言うしな。多い方が道中は楽だろう」


 レーネが言う。彼女も途中参加組なので、あるいは追い出されないように、いや、彼女はそこまで些細に考えるタイプじゃあないな。


「ううん、反対も無いみたいね。仕方ない、そういうことなら…」


 ティーナがまとめようとすると、エリカが止めた。


「待って。私は知らない奴がどんどん増えるのは反対」


「むう、エリカ、せめて次の街まではいいじゃないか」


 確かにパーティーがどんどん増えてるんだよね。レーネとミネアなんて、俺たちとどうしてピラミッドまで付いてきたのかよく分からんし。ミオも金は手に入れたので、これ以上、付いてくる必要はあまりないと思うが。


「フン。じゃ、次の街までね」


「いいけどエリカ、アンタ、私達がクレアに付いていくとなったら、このパーティーを抜けるつもりなの?」


 リサが確認するが、それは無いだろう。


「なっ! ええ?」


 さすがにちょっと驚くエリカ。ふむ、良かった。しばらくは俺たちのパーティーで行くつもりだったようだ。時々、面倒な事をしてくれるし、鍛錬で俺をターゲットに怖い呪文を唱えたりもするが、美人だし、最近は少し丸くなった気もするのよね。人見知りのタイプだから、もう少し、一緒にいれば良い関係になれるかも…という予感はある。


「俺はエリカにはずっと一緒にいて欲しいけどな」


 つまらない意地を張って引っ込みが付かなくなる奴なので、先手を打って言っておく。


「!」


 顔を赤らめるエリカ。あれ? 怒ったわけでは無いだろうが…?


「む…」


 んん? なんかみんなの表情も変だな。そんなにおかしな事、言ったか?


「そうですね。私も、エリカ様と一緒にいたいです」


 クロが無邪気に明るく言う。天使だ。


「まあ、そう言う意味なら良いけど…」


 ティーナが含む言い方をする。


「他にどう言う意味があるんだ?」


「それは…」


「うふふ、結婚のプロポーズで良くある決まり文句ですよね」


 クレアがそう言って、俺もようやく気づいた。


「あ、ああ、そうじゃないぞ?」


「フン、いちいち言わなくても分かってるっての。バカ。死ね」


 またエリカの機嫌が悪くなるし…とほほ。


「じゃ、話がプレイボーイの誰かさんのせいでそれたけど、次の目的地を決めましょうか」


 リサが意地悪く言う。

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