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異世界の闇軍師  作者: まさな
第六章 錬金術師になりたいな

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第十八話 聖職者クレア

2016/11/22 若干修正。

「ん? あっ、クロ」


 急に飛び出したかと思うと、街中を歩いていた白いローブの女性の前に立ちふさがっている。


「ニー、ニー、ニー」


「あらあら」


 避けて通ろうとした女性だが、回り込むクロ。


「おい、クロ、迷惑だろ。どうもすみません、うちの猫が」


「いいえ。可愛い子猫ちゃんですわね。よしよし。えっ? これは…呪い?」


 頭を撫でて、すぐに気づくこの人も、ただ者では無い感じ。見た目は聖職者だろう。白い柄の先に金のリングが二つ付いた錫杖を持っている。

 …凄い美人。おっとりした優しそうな瞳が正直、俺の好みだ。髪はふわっとした淡い金髪。 


 俺より少し年上だろう。

 それと、巨乳。ローブを着ていてすら分かるこの膨らみは、なんだか凄く気になる。

 今まで自分、貧乳しか興味ありませんでしたが、今日から巨乳派に宗旨替え致します。


「ええ、呪われてて、別に、誰かに危害を加えたりと言うことは無いのですが…」


 (おび)えられては困るので、大丈夫だとアピール。


「そうですか。可哀想に…では、お祓いの儀式をしてみましょうか」


「おお」


「せっかくですけど、有名な鑑定士の見立てではトリスタンの大司祭にしか呪いは解けないようですから」


 ティーナが丁寧な物言いながら、断ろうとする。


「いや、せっかくだから、やってもらった方が」


「む。どうせ無駄に終わるし、お金は払わないわよ?」


「ああ、それは俺が払うよ、ティーナ。金も有るし」


「む」


 ティーナがなんか不機嫌だが。


「いいえ、お金は頂かなくても結構ですから。クロちゃんと言うのかしら?」


 クロを抱き上げていて、クロも懐いている様子。


「ええ、そうです。タダなら文句は無いな?」


 俺は頷いた後、振り返って言う。


「むぅ…」


「別に良いでしょ。どこかの馬鹿が鼻の下伸ばしてるけど、相手にされる感じじゃ無いし」


「おいリサ、それはどう言う意味だ?」


「それもそうね」


「いや、ティーナ、くそ…」


 この人の前でそんな事を言うなんて。慌てて鼻を隠す。


「うふふっ。面白い方。あ、申し遅れました。私、クレアと申します。フランジェの司祭ですわ」


 クレリックでは無くプリーストか。地位は上なんだろうけど、ゲームのクラス的にはどうなのかな。使える呪文が増えたりするんだろうか。

 おっと、俺の自己紹介を返さねば。


「あ、私はユーイチと申します。失礼ですが、貴族の方ですか?」


「ええ、家はそうなのですが、私は出家した身ですので、お気遣いは不要ですよ」


「あの、じゃあ、私達急いでいるので、今すぐお願いできますか」


 ティーナが急かすが、別に急いでるわけじゃ無いだろ? 早めの方が良いけどさ。


「ええ。では、聖水と魔法陣も必要ですし、場も、この街の神殿をお借りしましょうか。付いて来て下さい」


 そう言って、クロを抱いたまま向かうクレア。親切で良い人じゃないか。美人だし。


「はいっ!」


 火の中、水の中、地獄の果てでも付いて参りますよ!


「む」


「あらら、これは、波乱含みやなあ…」


「そうね。色々と」


「ん、手強い相手…」


 後ろで女性陣の意味不明なつぶやきが聞こえるが、今はクレアさんとクロが第一だ。


「おい、遅れるなよ」


 振り向いて言う。


「死ね」


 エリカが機嫌悪そう。ま、いつものことだけど。



 ホルンの街の神殿は、柱は他と似ているが、屋根がドーム状だ。地域性なんだろうが、ちょっと気になったので屋根を分析(アナライズ)してみる。



【名称】 ドーム 

【種別】 屋根

【材質】 干しレンガ

【耐久】 388 / 500

【重量】 400 

【総合評価】 E

【解説】 

 半球状に組まれたレンガの屋根。

 支柱が不要。

 またレンガの重みだけで固定できるので、

 接着が弱くても良い。



 なるほどね。文化と言うよりは建築材の制約からこういう感じに組まれてるのか。

 地震には弱そうだなあ…。



「お待たせしました。場所は貸して頂けるそうです」


 クレアがここの司祭と話を付けてくれたようだ。同じ宗派なんだろうな。


「それは良かった。何か手伝いましょうか?」


「ええ、それではユーイチさんには魔法陣の作成を手伝って頂きましょうか」


「分かりました。でも、素人ですよ」


「ええ、構いませんよ。私が手取り足取り、教えますから」


 クレアが微笑む。


「お、おお、フヒッ、それは是非、ぬほほ」


 手取り足取りだって。ぐへへ。


「そこのドスケベ、地が出てるわよ」


 リサが後ろからとんでもないことを言いやがるし。


「黙らっしゃい! 神聖なる神殿の中でなんと言うことを。嘆かわしい」


「ふう、神殿を重んじるなら、大きな声を出したり、鼻の下を伸ばしたりしない方が良いと思うけど」


 ティーナが厳しい指摘。


「ぬ、ぬう…」


「ふふ、ファルバスの神々は慈悲深く寛容な方々、大きな声は他の信者のお祈りの邪魔になりますので気を付けないといけませんけど、後は、男の子ですし」


 クレアが微笑んでフォローしてくれる。ああ、この人こそ、聖女だ。


「………」


 ふっ、反論も出ないか。さて、クロの為でもあるし、ここは、真面目にお手伝いをば。


「ユーイチ」


 ティーナが呼ぶ。


「ん? 何だ?」


「セザンヌ」


 不吉な名。あんなに美人だったのに、悪魔だったなんて、俺のトラウマだ。


「ぬっ!!!」


「…の時もこんな感じじゃ無かったかしら?」


 ホワッツ!? い、いや、そんなはずは…でも、セザンヌも凄い美人で、いつの間にか招待を受けて…あうあう。


「なななな、何を言うんだ。ここは神殿だぞ。悪魔が入れるはず、無いんだ」


「…だといいけどね」


 くそう、手に変な汗が出てきちゃったじゃないか。


 クレアが待っているので、神殿の広間の奥へ急ぐ。


「では、ユーイチさん、まず、魔法陣を描く白墨(チョーク)の材料から説明致しますね」


「おお、是非とも」


「一般的なのは、石灰と聖水なのですが、この白墨は効力を強めるために聖銀(ミスリル)とユニコーンの角の粉末を混ぜています」


 えっ、ユニコーン?


「な、なんと!」


 横で聞いていたここの司祭が驚きの声を上げる。


「それは、とても高価な物では?」


「ええ、ミスリルはともかく、ユニコーンの角はなかなか手に入りませんね」


「ああ、でも、ここで使ってもらうのも…」


「いえ、お気になさらず。これも神の思し召し。ここで使うために、私がユニコーンの角を手に入れられたのだと考えています」


 ありがたや、ありがたや。


「ふふ、私に拝まれても何も出ませんよ。さて、祈りを捧げて作り上げたこの白墨で、床に線を引いていきます」


 クレアが屈んでこちらにお尻を向けて大きく円を描く。

 クッ、お尻も大きい…。

 二メートルくらいだろうか、魔法陣の円の方だけど。

 さらにその内側にも線を引き、これはなんだかミオに教わったのと似ている。


「では、ユーイチさん、ここと、ここを直線で結んで頂けますか?」


「分かりました」


 全身全霊を込めて、慎重に引く。


「こんな感じで?」


「素晴らしいです。ここまで綺麗に引いた線は初めて見ました。色々とお上手なんですね」


「い、いやいや、ハッハッハッ」


「お世辞が上手いニャ」


「アレで乗せられるのもどうかと思うけどねー」


「このままおだてると、柱の上にでも登り出すか?」


 後ろの外野がうるさい。しかも、聞こえてるじゃないか。

 振り向いて、じろっと睨みを利かせて、クレアに続きを教わる。


「あとは、ここに魔法文字(ルーン)を書いていきます」


 ここはさすがに、ミオの魔法陣と違うようだ。


「勉強になります」


「興味を持って頂いて嬉しいですわ。うふっ。では、最後の一つ文字、これは重要なのですが、呪われた者と関係が深い者の手により書くことで効力が増します」


「おお。どう書けば?」


「口で説明は難しいので、私が手を添えます」


「なっ!」


「ええと、お嫌ですか?」


「とととと、とんでもない、どんどん握って下さいよ、ははは」


「最低」


 後ろからキツイ野次が飛んでくるが、気にしたら負けだ。


「では、失礼しますね」


「は、はい」


 うおっ、む、胸が、当たって。


「集中して下さい。雑念は良くありませんよ?」


「ええ? わ、分かりました。集中ですね」


 クロの為だしな。いやしかし、無理だろ。そんなにむにゅっと押しつけられたら、ああん…。

 しかも良い香りが。


「これでいいです。ユーイチさん?」


「あ、ああ。終わりましたか」


「ええ」


「じゃ、その手をとっとと離したらどうかしらね」


 いつの間にかすぐ後ろに立っていたティーナが、今まで聞いたことが無いような怖い声を出してくるし。ドキッとした。


「ああ、ふふ、そうですわね。つい」


「いや、だから、さっさと離れなさいっての」


「あん。失礼しました。では、続いて祈りを捧げます。皆さんも是非、ご一緒に。その方が成功率が高くなります」


 よし、頑張ろう。どうも後ろの連中がクレアさんに対して失礼な態度だが、俺だけでも熱心に。


「…分かったわ」


 ティーナも表面上は返事をして、祈りだした様子。


「慈愛の女神、ミルスよ、この者に祝福と慈しみを与え(たま)え」


 ここはなんとしても成功してもらわねば。

 成功しろー。

 呪いよ解けよー。

 解除、は止めておいた方が無難だな。この儀式の方が解除されても困る。

 

 慈愛の女神、ミルス様、何でもしますから、力をお貸し下さいませませ。


「その願い、確かに聞きましたよ」


「んっ?」


 あれっ? 今の声、クレアさんが言ったのかな?


「はい、結構です。願いは届きました。それでは、聖水を」


 クレアとここの司祭がクロに小瓶の聖水を振りかける。

 クロは大人しくじっとしている。


「それでは最後に」


 クレアがクロの頭の上に手をかざす。その手から白い光が、内側からにじみ出るように広がっておく。


「おお、なんと言う法力」


 横で驚いた顔の司祭が同じように手をかざしているが、こっちは白く光ってないね。

 クレアが凄いんだろう。


 だがしかし。

 バチッと黒い光がクロの周りを電撃のように光り、クレアの光が止まった。


「む、おかしいですね…確かに成功したと思ったのですが」


「残念だけど、失敗は失敗でしょ。でも、お礼は言っておくわ、司祭様」


 リサがつっけんどんに礼を言う。


「もう一工夫、必要でしたか。御札か玉、鏡…」


「御札も試したけどダメだったわ。大司祭様のね」


 リサが言うが。


「皆さんはすでにこのどれかをお持ちのはずでは?」


 クレアがそんな事を言い出す。


「ええ?」


「あっ! 鏡! ほら、破邪の鏡があったわ」


 ティーナが言う。


「おお」


 すっかり忘れてた。


「すぐ持ってきます!」


 そう言って走り出すティーナ。


「あ、申し訳ありませんが、私の魔力が尽きています。また日を改めて、明日と言うことで」


 クレアは力を使い果たしていたようだ。


「ああ、分かりました」


「じゃ、また出直しね。帰るわよ」


 リサが言い、皆で宿に戻った。



 ◇ ◆ ◇ ◆ ◇



「ああ、話には聞いとったけど、これがその悪魔の姿を見破ったちゅう鏡か」


「ええ。ユーイチが見つけたの」


「ほう」


 鏡について知らないメンバーもいるので、セザンヌと破邪の鏡について説明した。


 アナライズすると…。



【名称】 真実の鏡 

【種別】 道具

【材質】 ミスリル

【耐久】 -

【重量】 1 

【総合評価】 S

【解説】 

 真実を映し出す鏡。

 邪を打ち払う力も持つ。

 決して割れること無く、壊れない。

 属性がダークの者が触れるとダメージを受ける。



 出たよSランク!

 耐久表示が棒線なのは無効って意味なんだろうな。壊れないんだから。

 いや、それにしても凄い物を見つけちゃったねぇ。

 何であんなところにあったのやら…。



「じゃ、ユーイチが見つけたんだから、はい、返すわね」


 ティーナが渡してくる。


「いや、これはパーティーの所有物だぞ。分析の魔法でも、Sランク、一番価値があるものだし…」


「うん、そう言ってくれるとありがたいけど、やっぱりユーイチが預かってて」


「分かった」


 ひとまず、明日、また神殿に持って行こう。


 俺の部屋に戻り、早めに寝ることにする。


「クロ、明日、ちゃんとしてもらうから、お前も早く寝ろ」


「ニー」


 鏡の前でかなり興味を示している様子。

 これで呪いが解けてくれりゃいいんだが。

 ダメなら、トリスタンの大司祭だな。


「ふあ…お休み…」


 ……………。


「ユーイチ様、ユーイチ様、起きて下さい」


「んん?」


 誰だろ。聞いたことが無い女の子の声だ。

 てか、俺を様付けってなんか変だな。


「って、誰だ?」


 起きたが、暗い。


「私です。あ、そうか、明かり、点けますね」


 女の子がそう言うと、ライトの呪文で部屋が明るくなった。


 そこには腰まである長い銀髪の、空色の瞳の少女が立っていた。


 全裸で。

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