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異世界の闇軍師  作者: まさな
第六章 錬金術師になりたいな

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第十七話 オアシス・ホルンの鑑定士

2016/11/22 若干修正。


 無事、生き残った俺たちは、ホルンの街へやってきている。

 最後のボス、エリカには一発電撃を放たれてしまったものの、それで魔力切れで俺の勝ち。

 リーダーのティーナから、パーティーアタック禁止の注意を受けて終わった。


「思ったより、小さな街ね」


 ティーナが街を見回して感想を述べる。塀も一メートルほどの高さしか無く、これで街の防衛は大丈夫なのかと言う気がするが、ここの人達が無事な以上、それで充分なのだろう。


 白い建物は屋根がドーム状になっており、これはエスターンの街と同じだ。この辺りでは木材はまず採れないので、砂や土を使っているのだろう。

 街の中心には大きなオアシスが有り、このオアシスを中心に発展したようだ。


 宿を取り、宝の分配と反省会をやった。


 お宝の内訳は……


 金貨は4251枚、4251万ゴールド、日本円でおよそ80億円と、凄いことになっている。


 さらに、宝石が18個。リサとミネアの見立てでは全て本物で、一つ百万ゴールドは固いと言うから、最低で1800万ゴールド、36億円。


 続いて魔道具が三つ。


 水がいくらでも飲める不渇の杯、燭台、天秤の三つ。これも売れば一つ百万ゴールド以上になるだろうとリサとミネアが予想。

 まだ分析していなかった残りの二つをアナライズしてみたが、



【名称】 王の燭台 

【種別】 道具

【材質】 黄金

【耐久】 1998 / 2000

【重量】 3 

【総合評価】 AAA

【解説】 

 この燭台を灯したテーブルでは、

 毒物や腐敗が容易に発見できる。

 ロウソクが尽きることも無い。

 どんなに大きなテーブルでもこれ一つで明るく出来る。

 さらに、皿の並べ替えも(ホスト)の意のままに行う。

 料理がこぼれたり、皿が割れることも絶対に無い。

 使用者に地位や魔力は不要。



 毒味(ポイズンセンス)の呪文がある俺にとっては、そこまでありがたみは無いが、呪文をいちいち使わなくても危険物が分かるというのは便利だ。次から俺たちのテーブルにはこれが立つ事になるかな。ただ、一目で高値の芸術品と分かってしまうので、盗難の恐れも出てくる。

 試しに椅子の上に置いて火を灯し、毒ヘビの血が入った瓶を近くに置いてみたが、警告するように赤くオーラが明滅した。コップと皿も置いて念じてみたが、すすーっと滑るように並べ替えが出来た。大きなテーブルを持ち、命が狙われそうなVIPには特に高く売れそうな品である。



【名称】 求めの天秤 

【種別】 道具

【材質】 黄金

【耐久】 1998 / 2000

【重量】 2 

【総合評価】 AAA

【解説】 

 左側に品を置くと、

 右側にそれに等価で釣り合う物品が吸い寄せられる。

 ただし、何も無いところでは吸い寄せも発生しない。

 釣り合う物が無い場合も同様。

 また、左側には魔力による想像でも良い。

 ゾウより大きな物は不可。

 右側に求められる品が入る広さが無い場所でも不可。



 これは少し分かりにくい。

 試しに、手元に銀貨を十数枚置いて、左側に金貨一枚を乗せてみたが、ふわっと銀貨が浮いて、天秤の右の皿に綺麗に積み上げられた。数えてみるときっちり十枚。

 等価で釣り合った。


 ここまでなら商人御用達で終わりそうな魔道具だが、ここからが違う。


 左側に防御ポーションを乗せてみると、右側の皿に山蜜柑の皮とハイポーションが吸い寄せられた。


 つまり、調合の素材の解答が分かるのである。

 これは大きい。

 薬師見習いの俺には、錬金術入門の書や植物図鑑よりも遥かに役立つ。

 

 さらに、トリプルAの魔道器は、そこに無い想像上の物でも釣り合わせて解答を教えてくれる。

 左側に賢者の石を想像してみると、左側が傾いてセット。

 ま、右側に釣り合う材料が無いから、そこで終わっちゃうんだけども。

 左側に色々と物質を想像していけば、どれかが当たりで引き寄せられるかもしれない。 



 そして、魔道具では無いのだが、小麦が小袋一つ。アナライズしてもただの小麦としか出ないのだが、多分、良い品種だろうと思う。ミオも残念ながら品種までは分析できないそうで、これは専門家に見てもらうべきだろう。



 魔道具は基本的にじゃんけんで割り振り、魔道具を一つもらった人は、宝石を一つ減らすという分け方にした。

 俺は調合に使えることを主張し、他のメンバーにも使わせるという条件で天秤の所有権を得た。

 やったね! ティーナ様最高。

 リサが甘やかしすぎだとほざいていたが、いつか最高の薬を作って「素敵です! ユーイチ様!」と言わせてやる。

 ……ちょっと無理そうだけどね。


 宝石は全員に行き渡る数があるため、どの色と形が良いかで、女性陣の大半が盛り上がった。リムとレーネは余り物でいいと言っていたが。

 俺もミオも錬金術に使えると言うことで真剣になった。ただ、宝石を使う錬金術はかなり高度で難しいため、どの宝石で何が出来るかを知らない。一応、最も硬度が高いであろうダイヤモンドを狙ったが、ティーナも欲しいと言ったのでそこは譲ってやった。

 俺が手に入れたのは紫のアメジスト。魔石に似ているが、魔石の方は中心が光るか、全体が暗いかで、アメジストの方が均一に透明な感じで、どちらかと言えば綺麗だ。


 金貨は8人で頭割りし、500枚ずつとした。余りはリーダーのティーナに。本人は受け取れないと言っていたが、これからの諸費用もあるんだからと説得した。俺が借りていた錬金術の書や装備のお金も返せたし、それでも金貨500枚近く手元に残る。日本円で10億円…計算、間違ってないよね?

 遊んで暮らせそうだなー。うひゃひゃ。



 翌日、さっそく噂の鑑定士を探し当て、クロを見てもらうことにした。その手の人って、すぐに会ってくれないのではと思ったが、普通に道具屋を営んでいて、カウンターに座っていた。

 初老のターバンを巻いた頑固そうな商人。店には客も大勢いて、順番待ちと、あとはただの野次馬のようだ。

 俺たちも最後尾に並ぶ。


「次の方、どうぞ」


 鑑定士が言うと、一人の貴族らしい老人と執事が立派な額に入った絵をカウンターに置いた。


「かの有名なセルキーの絵じゃ。画商から購入したが、来客の一人が偽物だと言いおってな。ホルンのオルセーに鑑定してもらったと言えば、あやつも黙るであろう」


「拝見致します。ふーむ、これは偽物ですな」


「な、なんだと…」


「まず、セルキーの絵ですが、彼の絵は明るく華やかさが有ります。大胆な色使い、迫力の有る構図、これらが特徴です。しかし、この絵はそれが全くない。それにサインも字がこぢんまりしている。それなりに描けている絵なので、無名の画家が描いた物を誰かがサインを書き換えたのでしょう」


「そうか。いや、勉強になった。では、受け取れ」


「いえ、鑑定料は大銅貨一枚で結構です」


 気落ちした老人は渋い顔で帰って行った。


「次の方、どうぞ。ほう、これは?」


「は、はい、我が家の蔵から出てきた壺なんですが、祖父が長年仕えていた子爵様がお亡くなりになった際に形見分けとして褒美にもらったと。蔵を整理している時に見つけまして、そう言えばそんな話を祖父から聞いたなあと…一応、見てもらおうかと。お願いします」


「うむ、拝見致します」


「どうせ偽物よ」


 こら、エリカ、デカい声で言うんじゃありません。鑑定してもらってる客の人がビクッとしてるし。


「全然高そうに見え無いニャー。その辺に有る壺と一緒ニャ」


 リムも言うが、まあ、そんな感じだな。デザインはちょっと変わっているが、色は目立たない。

 野次馬の客も、偽物だと口にして笑っている。とうとう縮こまった所有者だが。


「これは、クリスタニアはランベール伯爵領の鬼才、ゴーセンが作に間違いございません。ゴーセンの作は、ぼくとつながら、味わいの有る作風が特徴で、特にこの菱形の配置が素晴らしい。そうですな、私なら金貨五十枚の値を付けさせて頂きますが」


「五十枚!」


 オオッ! と、客や野次馬がどよめく。


「あ、ありがとうございます。値は付けて頂きましたが、我が家の家宝にさせて頂きたく思います」


「それがよろしいでしょう。大事になさって下さい」


「この道具屋、ホントに見る目があるの? 人族のくせ…もごもご」


 ナイス、リサ。そいつはもう黙らせとけ。


「ニャー。ニャ、あたしも、ちょっと違うなと思ってたニャ」


 お前ももう黙ってていいぞ、リム。恥ずかしい。


 オルセーは次々と持ち込まれる道具の来歴や作者の名を明らかにし、さすがは他国にまで名の知られた鑑定士だけのことはある。


「脱帽やなあ。うちもまだまだ勉強が足らんわ」


 ミネアが感心するが、張り合おうとしているところが凄いよ。


 そしていよいよ、俺たちの番になってしまった。ちょっと場違いな気がしてきたが、苦労して国境を越えてここまで来たのだ。俺はクロを抱きかかえ、説明する。


「あのぅ、この猫を見て頂きたいのですが…」


 怒って追い出されなきゃ良いけど。ドキドキ。


「ほう。よろしいですよ。そちらに座らせて下さい」


 ほっ。クロをカウンターの上に座らせる。他に高価な美術品なんかも置くので、汚してはと思い、下に風呂敷を敷いておく。


「ニー」


「お気遣いありがとうございます。ふうむ、ざっと見たところ、普通のクリスタニアンの子猫ですが、むっ! これは!」


 おお?


「なんと言う呪い。極めて強い呪いに掛けられておりますな。この猫はどちらから?」


「ええ、それが、スレイダーンのとある男爵領で拾った以外は、何も」


 エイトの名前まで出すと、俺が特定されかねないのでぼかしておく。


「そうですか。残念ながら、呪いを解くのは私の専門ではございません。この呪い、何やら見る者を惑わす様子。鑑定は困難ですな。この猫は賢く品が有るように見えますが、どこかの貴族に飼われていたものか。申し訳ないが、これ以上は私にも」


 凄腕の鑑定士でもダメか。まあ、美術品が専門っぽいしなあ。頼む人を間違えたか。


「そうですか。いえ、ありがとうございました。料金の方ですが」


「鑑定できなかった以上、受け取るわけには参りません。それと、トリスタンには高名な大司祭がおられます。そちらを頼られてはいかがかと。この辺りの司祭ではおそらく手に負えますまい」


「ええ。そうします。ありがとうございました」


 クロを俺のローブのフードに入れ、風呂敷を持って店を出る。


「ダメだったね」


 ティーナも残念そうだ。


「そうだなあ」


「じゃ、トリスタンまで行くわよね?」


 リサが言うが、他に手は無さそう。

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