第四話 地震
2016/11/22 若干修正。
しかし、今の地震は…
この世界の地震ってどの程度の頻度なんだろうか?
「リサ、こっちじゃこんな大きな地震がよくあるのか?」
うちのパーティーの中では一番の物知りと思われるリサに聞く。
「有るわけ無いでしょ。それよりユーイチ、今の現象が何だか知ってるのね?」
「む…」
この返し方だと、この世界の地震は数十年に一度とかそう言うレベル、いや、もっと頻度は低いか。
「答えなさい」
「ああ、知ってはいるが、うーん、詳しくではないよ」
「いったい、何がどうなったニャ。凄く怖かったニャー…」
座り込んだままのリムは半ば放心状態。
「地震か。なるほど、確かに大地が揺れていた感じだったな。しかし、あれほどの魔術となると、うーむ」
レーネも知らなかったようで、剣を抜き、周囲を警戒したままで唸る。
「いや、魔術じゃ無いよ。自然現象だ」
あんな大魔法、魔力がいくらあっても出来ないと思うし。
「バカな。あんなのが自然に起きるものか。この周囲には山も崖も無いんだぞ?」
「ううん…」
地震のメカニズムを知らない人に、プレートテクトニクスがどうのこうのと説明しても、難しいだろう。
どう説明したものか。
「ユーイチ、ひとまず、あれはもう収まったのね?」
リサが周囲を確認しつつ、確認してくる。
「ああ、断定は出来ないが、そうそう起きないよ。ただ、小さい揺れはしばらく続くかもしれない。余震だな」
「むう。まあいいわ。とにかく、塔を確認しましょう。使える物は引っ張り出しておかないと」
「あっ! そうか。魔術書!」
慌てて塔に駆け寄る。
そこではすでに、ミオとミネアが瓦礫の山の中に入って、使える物が無いか、探している。すぐ側で剣を抜いたティーナが周囲のモンスターを警戒。
「ダメやね。ポーションの類いは、全部やられてる」
「ん、なら、リュックを…」
ミオがその場に立って、手を前に差し出し、目を閉じた。探知の呪文を使ったのだろう。
俺も、と思ったが、魔力切れだった。とほほ。
仕方なく、目視で歩いて探し回る。しかし、このブロック、歩きにくいな…。
「ユーイチ! 気を付けて、何かいる!」
「えっ?」
「右!」
「うお?」
右を見ると、ブロックの下から伸びた枝が生き物のように暴れていた。
なんじゃありゃ。
前に見た、森の木のモンスターみたいな奴だろうか。
「む、まずい、薬品が混ざって、何かできたっぽい」
ミオが言うが。
「ええ? いたっ! んん?」
何か、ほっぺたにチクッとする物が。
うえ、ステータスが紫になってるし、毒だ!
「毒攻撃を受けた! 気を付けろ」
そう言って、その場から離れ、毒消し草を懐から出して食べる。ほっぺたにも塗る。
よし、消えた。猛毒では無いようだ。
「ふう、仕方ない。成長すると取り返しが付かなくなりそうだし、えい」
ミオが手を前にかざすと、さっきの枝のモンスターの辺りから巨大な火柱が上がった。
「うお、スゲえ」
「もっと離れて。全体を焼き尽くす」
「分かった。後でその魔法、教えてくれよな」
そう言って、離れる。
変異体の枝モンスターは、保管していた魔石に数種類のポーションと金属が混じり、それで草が急成長したのだろうと言うことだった。
それなら確かに、焼いておかないとマズいよね。毒も持ってたし、何よりあんなに激しく動く植物、見たくない。
影響を及ぼしたと考えられる薬品は、極上ポーション、ハイマジックポーション、ハイスタミナポーション、キラースネークの血、ミスリルの粉末、金や銀など。
ハイマジックポーションは見てみたかったが、やはり超貴重品だそうで、値段もいくらになるか不明とのこと。錬金術で作成したのでは無く、師匠がダンジョンから取ってきたお宝だそうだ。
「しくしく。ポーションと、魔術書が…」
「ほら、ユーイチ、いつまでも、めそめそしない。ミオが魔法、教えてくれるんでしょ」
ティーナが言う。
確かに、そんなありがたい約束もしてもらっているが、ハイマジックポーション、マジックポーションの上位版だぜ? まあ、魔法はミオがほとんど覚えているそうだから、それで我慢するか。
ちなみにハイマジックポーションは、ワインレッドの色だそうだ。せめて一目拝んでおきたかった。
上級のファイアストームの呪文を使えるミオでも、さすがに一人でこの森は突破できないそうで、最寄りの街に装備を調えに行きたいと言った。あと、塔に保管してあった金貨や銀貨も変異体の材料になってしまったようで失われ、無一文になっており、食料も無いので、俺に呪文を教える授業料という名目で、当面の生活費が欲しいそうだ。
まあ、気の毒だね。
冒険者カードを見せてもらってちょっと驚いたが、彼女は十七歳。俺と同い年だった。
すっかり忘れていたが、俺の誕生日は六月六日、もう過ぎてるし。
…帰れるかなあ?
その日は塔のすぐ側で野宿し、翌日。
「フハハハハハ! 唸れ風よ、炎の魔神イフリートの名をもって灰燼と化せ、ファイアストーム!」
んん~、素晴らしい。
これが上級魔法の威力。
ダメージは240前後でしかも範囲攻撃と来た。
MP消費は16とちょっと多いけど。今の俺のMPは146まで増えているが、それでも8回が限度だろう。ステータスや他の呪文も使うし。
「ユーイチ、試し撃ちはそこまでにしなさい。まだフィールドなのよ」
リサがそう言うが、どの程度まで呪文を調整できるのか、知っておくことは大事だ。
「んー、でも」
「雑魚相手に使ってると、カルマも増えるし、街に戻ってからでも良いでしょ」
「ハッ! しまった、そう言う数値もあったんだよなあ。くそう」
慌てて冒険者カードを見てみるが、
[冒険者カード]
【 氏名 】 ユーイチ
【 種族 】 人
【 年齢 】 17
【クラス】魔術士
【 Lv 】 32
【 属性 】 ライト B
ニュートラル
【カルマ】 19
【特記事項】デーモンスレイヤー(非表示)
ふう、増えてなーい。
それにしても、ちらりと下に見える特記事項がぐふふ。
奴隷では無いのだよ!
それに、デーモンスレイヤーという称号まで増えている。オズワード侯爵領の悪魔を退治したからね。
リサが非表示設定にしておけと言ったので、うちのパーティーは全員、そうしている。
非表示にすると、他の人間には「非表示」とだけ見えるそうだ。ザックも下の方は非表示になってたな。
ただし、奴隷などのペナルティ系は非表示には出来ないそうだ。
ミオが他に知っている上級呪文は、風属性のトルネード、氷属性のブリザード、アイスジャベリン、地属性のアースクエイク、雷属性のサンダーボルト、そして体を一時的に鋼鉄にするアイアンメイデン。
他にも有ると思うが、これらの呪文は街に到着してから条件付きで教えてくれるという交渉になっている。
体を鋼鉄にして防御力を激増させるアイアンメイデンという魔法だが、これが鋼の賢者の由来らしい。
ダグラス=エイフォード先生のオリジナル魔法だそうだ。でも、名前は聞いたことあるよね。詳しく聞くと、ダンジョンより持ち帰った魔術書を研究して再現したそうで、他に使っている人間は先生の弟子以外には知らないそうだが、まあ、魔法に著作権とか言い出してもね。
そこは気にしないでおこう。
バリアの多重化はミオも知らないと言う。ちょっと当てが外れた。まあ、道理で難しいと思ったんだよ。
アイディアは良いと褒めてくれたが、この世界に実在しない魔法に意味は無い。
マッパーの呪文はミオも知っていて、スペルも全て同じだった。
ステータスの呪文は、ミオも知らなかったが、ほぼ同様の効果を持つアナライズという魔法が有り、それも教えてもらえた。味方のステータスを表示するのは常時表示可能な俺の魔法の方が圧倒的に優れていたけれど、敵のステータスを覗くのは、アナライズの方が優れている。熟練度が低かろうが最初から弱点を見抜けるからだ。
ま、これからアナライズも鍛えて行くとするか。
お風呂魔法やドライヤー魔法については、ミオも知らないと言うが、彼女もアイディアを出してくれ、実現に近づいた気がする。何の事は無い。一度にちょうど良い温度のお湯を出そうとせずに、順番に水を炎の呪文で熱湯に変え、さらに水と混ぜ合わせて温度を下げるという感じだ。手間は掛かるが、多分出来ると思う。
それから錬金術。
あの塔には大きな釜があったが、エイフォード先生は、肉体強化の研究を熱心に行っていたという。HP増強、つまり、最大HPを一時的に増やす薬も開発済みだそうだ。ただ、これも釜や材料が必要となるので、今すぐは教えられないし、そのつもりも無いと言う。
他に何か無いか聞いてみたが、ミオは魔法陣の研究に興味を持っているようで、逆に質問されてしまった。残念ながら俺が魔法陣について知っている事は無いので、そこは正直に答えておいた。ミオは別段、落胆した様子も無く、淡々としていた。ポーカーフェイスというか、怒ったり笑ったりするのは今のところまだ見ていない。
野宿しつつ、森を抜け、再び炭鉱町ラジールに戻って来た。
それなりに地震の被害は出ていたが、塔が崩れるほど激しかったフルーレの森より、こちら側は揺れが少なかったようだ。
それでも、街ではあの地震がなんなのか、騒然としていた。
地震情報の収集と、新しい魔法の習得のため、この街の宿にまたしばらく滞在しようということになった。
[冒険者カード]
【 氏名 】 ミオ
【 種族 】 人
【 年齢 】 17
【クラス】魔術士
【 Lv 】 33
【 属性 】 ノーマル
ニュートラル
【カルマ】 44
【特記事項】無し




